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新連載始めました!どうぞよろしくお願いします!
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“いい加減はっきりしろよー”
“岳は凪のこと好きなんでしょ?”
“そうだ、俺たちのことは気にしなくていいから気持ち伝えろよな”
“俺は別に……”
“明日、岳が用があるからってここに凪のこと呼び出しといたから”
“凪も......きっと岳のこと好きだから大丈夫だよ......頑張ってね!”
“行かないってのはなしだからな!”
“わーたよ!行けばいいんだろ!行けば!”
…………
“ねえ、がっくん?隼人くんに話があるって言われたんだけど、どうかしたの?”
“いや凪、それは......”
“あっ!あのね!隼人くんと伶奈ちゃんが話してたんだけどがっくんは私のこと好き!......なのかな?もしかしてそれと関係あったりー?”
“お、お前のことなんて好きじゃねーよ!あいつらが勝手に言ってるだけだから!それに俺は......お前みたいなブスじゃなくて可愛い子がす、好きなんだよ!”
“そっか......そうだよね!がっくんかっこいいからみんなからモテるもんねっ......もーなんで2人ともあんなこと......だけど私はがっくんのこと......ううん、なんでもない!
ご、ごめんがっくん、私用事できたから帰るね!”
“あっ、おい、ちょっと待てよ凪”
そしてそのまま凪は走り去っていった。
本当は俺は凪のことが好きなのに......
だけど、自分の気持ちを前日に隼人、伶奈、そして今、凪に悟られた気がして凪に対してきつい言葉、そして思ってもない嘘をついてしまった。
そして、俺凪の悲しげな表情を見た瞬間、本音でもない俺の言葉に心を痛めた彼女にかける言葉も思い浮かばず、凪を追いかけることも謝ることもできなかった。
明日謝ればいい。また自分の気持ちに確信が持てた時、その時に凪に気持ちを伝えればいい。
これからの長い人生で好きな人はたくさんできる。その中で一番いい人を見つければいいのだと親戚の姉ちゃんにも教えてもらった。
姉ちゃん曰く、
「好きな人ができたからって自分に合ってるとは限らないし!だから振られたって全然私は気にしてないんだからね!」
あれ?思い返して見ればただの負け惜しみ?
まあ、いずれにせよ周りが言う思春期真っ只中の俺がそのことを考えれば心に棘が刺さるような感覚を覚え、凪への恋心を深く思うことはなかった。
そしてその思春期やらが終わればいずれは何かが分かるような気がしていた。
だけど......
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あれから5年の歳月が過ぎた。
凪は俺と別れたあの後、横断歩道を渡っている最中に走行中の車と接触し、意識不明の重体となった。
そして凪が、再び目を開けることはなかった......
当時、母さんから聞いた時何を言ってるかも分からなかったし、凪がもうこの世にいないということを理解することもできなかった。
また、目を覚ませばいつものようにおはようと笑いかけてくれる凪がいると思っていた。
その思いは当然叶うことはなく、凪との最後の会話は俺が凪についた嘘となってしまった。
もしあの時、俺が嘘をつかず好きだと言っていたら凪は死なずに済んだかもしれない。
今も変わらず凪はあの頃と同じように笑っていたのかもしれない。
凪を轢いた車に乗っていた人、それは未だに分かっていない。
けれども原因を作ったのは間違いなく俺だ......
凪が死んだのは......
全部俺のせいなんだ......
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