パパは異世界傭兵
診断メーカーで出た『ほーらパパだよ』というセリフから連想いたしましたヽ(=´▽`=)ノ
ほーらパパだぞ〜と筋肉質な腕が私を抱きかかえた。
えーと、どういうことなんだろうと自称『パパ』のもう片腕に捕まったお母さんを見るとなんか慌ててる。
本当にパパかい〜。
お母さんは極々普通の守護戦士だと本人は言ってる。
特級守護戦士で五十嵐家の当主だけどね。
昔は異世界でも仕事をしてたけど、貴女ができたし、日本食も恋しかったから帰ってきちゃったのと綺麗に笑う。
私の自慢のお母さんなんだ。
そんなある日の平日の朝にあられたのがパパ? だ。
文月、こいつがお前にどうしても会いたいとうるさくてなと雄介おじいちゃんが案内してきたわかい赤毛の長身の男性は足早に近づいてお母さんと私を両脇に抱き上げた。
パパだよって……本当にお父さんなんだよね。
明正和次元の五十嵐道場で暮らしてて、寂しい言うことは全然ないんだけど、赤い髪のパパと主張してる美丈夫さんと私は顔も似てるからほんもんかもしれないとちょっと嬉しくなった。
彫りの深い外国人らしい美丈夫な『パパ』は赤毛を伸ばし一本三つ編みにしていて紺のチェスターコートに灰色のタートルネックのセーター細身のデニムパンツの普通の格好をしているつもりらしいけど異世界人臭さまんさいだよ『パパ』?
「ケインティウスさん、なんでここにいるんですか」
「文月、俺はいつ、君と別れた? いつ、誰に、どう吹き込まれたのかな? 」
ケインティウスと呼ばれた赤毛のパパ? が肉食系の笑みを浮かべた。
えーと、何がどうなってるのかだけ教えてもらえると心置きなく小学校に通えるのですが?
「お母さん、この人、パパ? どうして別れたの? 」
「……身分、違いかなぁ……あと見解の相違」
別に、愛してなかったわけじゃないんだけど……私、日本食好きだし、それに私、五十嵐家の当主だし……一番好みの身体付きだったの。
「兄上がいるんだから、いくらでも婿入りするぞ」
「……卯月、パパはたぶん、絶対に逃げないから、学校行きなさい」
雄介おじいちゃんがパパ? の腕の中から私を引っこ抜いてくれました。
「うづき? うづきと言うのか? 」
パパは頑張るぞ〜と筋肉質の腕が拳を突き上げた。
いってらっしゃーいとフミフミワンコちゃんに足を踏まれて悶絶しながらいつも通り送り出された。
私はまだまだ小学三年だし、いても役立たないけど、パパ? とお母さんの馴れ初めとか聞きたかったよ。
楽しい授業をして楽しい給食の時間になりました。
「うーちゃんのお家そんなことがあったんだぁ」
うさぎ獣人のミドリちゃんが黄金煮の人参を嬉しそうにつまんだ。
「うん、お父さんのお仕事って何なんだろう? 」
憧れてるんだぁ、お父さんのお仕事を作文に書くの。
あと一緒に鍛錬とかできるかなぁとつぶやいたらかまいたちのエドモンド君にうーちゃん、可愛いんだから一緒に買い物とかにしなよと引きつった笑いを浮かべられた。
え~私、未来の五十嵐家当主だもん。
強いお父さんのほうがいいなぁ。
そんなことを思いながら黄金煮にスプーンを突っ込んだ。
「うーちゃん〜早く食べてブランコ乗ろう〜、僕の背中でもいいよ〜」
「学校で竜体は訓練時以外禁止って先生が言ってましたわ」
水竜の喜助君がニコニコ言って縦ロールの外国の人形みたいなバケだぬきの初子ちゃんが両手を腰に当てて怒ってる。
あらあら、残さず食べてからねと優しそうな顔をしてじつは厳しい炎の魔神の光兼 あつほ先生がパインコッペパンをちぎった。
私は五十嵐 卯月、明正和学園の小学部に通う、一応人族の目指せ未来の特級守護戦士なごくごく普通の女の子だ。
お父さんがいなくても、宇水の妖怪おじいちゃんとか雄介おじいちゃんとかいるし……道場にいろんな人がいるから寂しくはないんだよね。
でも、やっぱりお父さんは別格。
お母さんは前に『お父さん』は別に貴女を愛してないわけじゃなのよと、とうちゃがほちいのーうづきのこときらいにゃの、とちび幼児時代にごねたときに困ったように抱きしめてくれたのは灰色歴史です。
だってお父さんがいにゃいにゃんて、愛されてないんにゃろーと猫耳クソ幼児に保育園でからかわれて泣いたなんて……今なら闇討ちだよ、クソ猫勉君……
帰ったらお父さんと何話そうとわくわくしながらブランコこいだら一周して空飛ぶ人参な菜人、用務員さん?にだめだよ、そんなことしちゃと怒られた。
うん、やりすぎたよ。
いつもの通学路を走り抜けてうちに帰った。
「ただいま〜お父さんは? 」
「おかえりなさい……ちょっと増えてるけど座敷にいるよ」
住み込みの若い門下生の和泉さんが出迎えてくれた。
増えてる? 増えてるってどういうこと?
とりあえずランドセルを部屋に放り込んだ。
足早に廊下を通って座敷を開けようとするとふすまが開いた。
「卯月ちゃん〜お祖母ちゃんですよ〜、可愛い〜」
黒い髪に緑の目の中年の美女が抱きついてきた。
その後ろの座敷で『パパ』がお母さんと無言の攻防をしてるのが印象的だった。
えーと増えた人たちはいったい……
座敷の部屋の壁際にたつ一本三つ編みに詰め襟に長袖の長いコート? ファンタジーみたいなぶどうっぽい色の上着と細い同色のズボンを着た腰に武器をさしてる護衛みたいな人たちが二人立ってる。
けっこう身長が高いんはお父さんも護衛の人もおばあちゃん? も一緒だよ。
綺麗なおばあちゃん? は薄紫の長いビロードのドレスガウンみたいなのに足首丈のアンダースカートみたいのはいててエレガントな感じなジュエリーとかつけてる。
えーと、ものすごく異世界感まんさい、セレブ感まんさいなのですが? お父さんはいったい?
無言の攻防の末お母さんがお父さんの膝に乗せられた。
「おかえり、卯月」
「子供の教育に悪いって言ってるでしょうが〜」
お母さんの拳が顎に炸裂しそうになりお父さんがガードした。
何言ってるんだ、子供には若いときから愛するものへの接し方を見せておくのが正しい教育だぞとお父さんがお母さんの頬をなでてお腹に肘鉄入れられてる。
「えーと? おばあちゃん? 」
「はい、ああ、可愛い〜、ずぅぅぅーと、愛黎ちゃんとこの娘さんとか羨ましかったんです〜息子その一もふがないし、息子その二は恋人の文月さんに逃げられるし……」
女の子可愛い〜おばあちゃんと今度お買い物とか遊びにいきましょうね〜とおばあちゃんに頬ずりされた。
困った顔でいると雄介おじいちゃんがロールケーキをもって入ってきた。
「メリリノア国王陛下、卯月が戸惑っている、とりあえず話をしてやってくれ」
雄介おじいちゃんがモカハニーロールケーキをコーヒーと一緒に座卓においた。
おばあちゃん? が私の肩を抱いたまま座布団に座らせた。
そういえばおばあちゃん? 国王陛下って?
「おばあちゃん? 国王陛下? 」
「まだ、説明してないのですか? 」
おばあちゃん? がお父さんをにらんだ。
「……卯月、俺は……パーウェーナ世界というところにあるグーレラーシャ傭兵国の……第二王子と言うことになる」
「王子……様? 」
お父さんは妙にすっきりした顔をしてた。
「そうなの、だからバリバリ身分違いでしょう? 私は五十嵐家の当主だし、お嫁さんはおしとやかなお姫様でいいと思う」
お母さんが逃げようとお父さんの腕を解こうとした。
「身分違い? それがどうした? 文月がいなくなってどれだけ荒れたと思ってる? 守護戦士協会に問い合わせても教えてくれないし、うっとうしい公務もあるし……先週、守護戦士ネットの五十嵐道場のホームページのインタビュー記事をみてやーっと見つけたときは……」
ふ、ふふふどうしてくれようかと思ったぞとお父さんが暗く笑った。
あ~あの取材受けなければ良かったとお母さんが顔に手をやった。
ちなみに荒れたときは兼業傭兵でもあるんで傭兵業務をして憂さ晴らしもしていたそうです。
「あの狂おしい気持ち……文月がいなくなってこの世は闇だと思ってたのにな……娘がいたなんて……」
「ケ、ケインティウスさん、別に責任とか感じなくていい……」
お父さんの迫力にお母さんがたじろいだ。
「責任? むしろ俺は全力で文月にこの何年の狂おしい愛を思い知らせてやりたい……その後はもちろん卯月と力いっぱい触れ合うぞ〜」
娘がいて嬉しいのは嬉しいんだぁ〜とお父さんが叫んだ。
えーととってもヤバそうな感じがします。
「とりあえず、おばあちゃんと退避しましょう」
「ほどほどにしておけよ」
おばあちゃんが私の手を引いて立たせて食べ損ねたモカハニーロールケーキを雄介おじいちゃんがもって護衛さん二人を連れて部屋の外に逃げ出した。
「まあ、文月もこれで中途半端なことの後始末をつけられるだろう」
東屋で食べるか? と雄介おじいちゃんがツルツルピカピカの頭を日光にきらめかせた。
「そうですね、卯月ちゃんと交流したいです」
おばあちゃんが微笑んでる向こうで、フミフミワンコに護衛さん二人が良いところ踏まれて悶絶してるんが見えた。
うん、二人とも強いんだね……叫ばないとこすごいと思うけど、そこですみません、すみません、すみません〜と叫んでるワンコ、強い人探知機だから、強ければ強いだけ踏まれるんだよね。
「あれに踏まれる前に移動しましょう」
「はい? 」
おばあちゃんが良くわかってない顔をしたけど早々に東屋に退避した。
お隣のある意味最強の宇水の妖怪おじいちゃんもフミフミワンコの攻撃? から逃れられず悶絶してたの見たことあるもんね。
「それで、国王陛下は今後どのようにお考えか? 」
「ケインティウスは、五十嵐家に婿入りです」
おばあちゃんが優雅にコーヒーに砂糖を入れてる。
一杯、二杯、三杯、四杯……あれ何杯砂糖入れるんだろう?
「甘すぎちゃうよ、おばあちゃん」
「卯月ちゃん〜可愛い〜おばあちゃんは、グーレラーシャ人は甘党だからいいのです」
可愛い〜可愛い〜とおばあちゃんは連発して私の頭をなでた。
「可愛いはわかったが……大丈夫なのか? 」
「ここ数年のケインティウスの荒れた様子はわかってるのです」
だからグーレラーシャ人はだれも何も言わないのです。
愛するものを失ったグーレラーシャ人は死んでるようなものと言う格言もありますからねと超甘いと思われるコーヒーをおばあちゃんは飲み干した。
「そうか、まあ卯月がいなくならなくてよかった」
「ああ、嫁入りしてくれれば卯月ちゃんが王宮に来てくれたのです〜、おばあちゃんと一緒に暮らしましょう」
おばあちゃんが抱きついた。
おばあちゃん、モカハニーロールケーキが食べられないから離れてと言うと卯月ちゃん、おばあちゃんと王宮に行けば美味しいスイーツ食べ放題ですとモカハニーロールケーキをあーんされた。
「おばあちゃん、王宮には遊びに行くのじゃだめ? 」
私は小首をかしげた。
確かに王宮に行ってお姫様みたいな生活に憧れるけど……ここで鍛錬して最高の守護戦士になるのは譲れないんだ。
それにみんなと別れたくないもん。
「おばあちゃんは……息子その一に速攻で王位を譲って来るのです」
そして卯月ちゃんと一緒にここで暮らすのですとおばあちゃんが拳を突き上げた。
「まあ、ここでウェットみたいに修行したけりゃすればいいさ、卯月を甘やかしすぎるなよ」
諦めたように雄介おじいちゃんが笑った。
いろんな次元の人たちが弟子入りしてるもんね。
五十嵐村にはそういう人たちが下宿したり賃貸借りたりする物件もたくさんあるもんね。
そんな事を言っていたおばあちゃんの退位はそれから何年もかかった。
そうこうやってるうちに私がグーレラーシャの傭兵学校に入学して寮に入って長期休みは王宮に行ってお姫様扱いされてるうちにグーレラーシャの高位貴族の男に求愛されたり殴ったり、くっついたりするんだけど、それはまあ、別の機会に話そうと思います。
今回はおばあちゃんが日本滞在中に一緒に遊びに行く約束した。
次の日、つやつやのお父さんの腕にお姫様だっこされたお母さんがぐったりと朝食の席に出てきた。
「文月さんに婿入りすることになりました、ケインティウス•グーレラーシャです、よろしくお願いします」
お父さんがお母さんをおろしてかっこよく膝をついた。
お母さんを見ると、そういうことになっちゃったのと笑った。
そうか頑張れよと雄介おじいちゃんをはじめ祝福ムードになった。
その後、お父さんに力いっぱいかまわれたり、パパって呼んでくれないのかとうるうるされたり。
お母さんとお父さんが正式に結婚式をあげて……お父さんって初めて呼んだとき力いっぱい抱きしめられて少し死にそうになったけど……
五十嵐 卯月、小学校3年生、念願のパパ……お父さんができました。
素敵なおばあちゃんとかっこいいけどヘタレの王子様なおじさんをはじめ素敵な親戚がいっぱい異世界にできました。
こんどクソ猫耳 勉君にからかわれたらイッパツかませたいと思ってます。
……来年にはお姉ちゃんになるみたいです。
ケインティウスすごすぎって、宇水の妖怪おじいちゃんが言ってたけどどういうことなんだろう?
そんなことを思いながらいつもと同じですこし違う通学路を歩く日々なのです。
読んでいただきありがとうございますm(_ _)m
ちなみに息子その一はメルディウスです。