たまには問屋も来ます~なんでも屋 マイク~
今日もルーデル共和国とルニ民主主義国の国境の小さな湖にある寂れた土産物屋でジョージはいつもの所でいつものように眠っていたが、湖には珍しいトラックが止まると、すっかりハゲ上がった頭とでっぷりとした典型的な中年太りの男がドタバタと無遠慮な音を立てて入ってきて起こされた。
「おう。ジョージ。最近、どうだ?儲かってるか?」
「儲かってるように見えるか?昼寝の邪魔をしやがって。」
ジョージは男を見るからに煙たげに扱ったが男は気にすることなく、カウンターの上にドサッとジュラルミンのケースを置いてケースと自らの手首を結ぶ手錠を外した。
「頼まれてた補充品は、外を掃除してたウォルトに渡して倉庫に運ばせた。」
「また、掃除してたのか。あいつの掃除好きは病気だからな。」
男は思わず、吹き出しそうになるのをこらえきれず口元を押さえて笑った。
「そういうな。ウォルトもなかなか鋭くなってる。トラックが近づいたら気配を消されたんで、俺でも見つけるのは苦労したぜ。」
「そうか。それはお前も焼きが回ったな。」
とジョージは言ったが、顔は満更でも無さそうに笑っていた。
「うるせえ。土産物屋で毎日昼寝ばかりしてるお前よりはマシだろうぜ。」
「で、なんだ?新しい製品が入ったか。」
「ああ、これだ。今回は3人だな。」
男はケースの中からジョージに資料を渡した。ジョージはそれをパラパラとめくると、レジスターの下の隠し金庫に資料をしまった。
「しっかり頼むぜ。ジョージ。」
「お互いな。マイク。気をつけろよ。」
ジョージとマイクはガッチリとした握手を交わして別れた。
トラックの音がすっかり遠ざかった頃、ウォルトが倉庫の方から戻ってきた。
「店長。品物は倉庫に入れ終わりました。あれ、マイクさんはもうおかえりですか。」
「ああ、奴なら帰ったぜ。新しい製品が入ったそうだから、後でカタログを見ておけ。」
「そうですか。お茶でもお出ししようかと思ってたんですが。」
ウォルトは手にあったポットと来客用の茶碗を残念そうにカウンターに置いた。
「奴に茶なんて高級なもんはいらないさ。そういえば、お前のことを褒めてた。鋭くなったってな。茶碗を置いてこいよ。」
「本当ですか?」
ウォルトは額の汗をぬぐいながら嬉しそうに笑って、茶碗を仕舞いにいった。
「ああ。俺の戦友の目は確かだからな。」
ジョージはそう微かに口だけを動かし、少し目を細めて、ウォルトの背中を見ながら、タバコに火をつけた。