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中川瑠璃は帰って来てから部屋に籠り、ベットに腰掛けたまままったく動かなくなった。


『たった5日で変わり過ぎだろ…』


俺は元気な時の中川瑠璃を知らない…だがあの日、横山悟とのシーンで見た中川瑠璃の面影はこの時にはもう無かった。

目の下には隈ができ、眼球は赤く染まり、数日で頬は少し痩せていた…




学校から帰ってきた娘をいつものように出迎えた母親は、娘の異変に困惑していた

「何があったの!?」「瑠璃!?」と娘同様母親まで顔色が悪かった。

だが「大丈夫だから…今は一人にして」と娘の言葉を聞いて母親は心配そうにするものの、階段を上がる娘を追いかける事はしなかった。「瑠璃?もうすぐご飯だからね」何度か部屋の前まで来たが一度だけ声をかけるのみに止まっている。


部屋には鍵が付いていない、母親が入って来ない事を思うと、この母親は過保護では無いようだ。まあ、心配そうに声を掛ける様子を見れば放任主義でもないようだが…グイグイ我が子のプライベートゾーンに入って来るわけでもなく、突き放す訳でもない、一人になりたいなら邪魔はしない…けど、お母さんはいつでも貴方を受け入れるわよ…って感じかな?

俺の母親とは大違いだな…。


なんて自分の過去を振り返ってると、視界が暗転した…


『だーれーだ♪』


眼を冷たい手で覆われた後、背後から聞き覚えのある声がする、たしか名前は…


『悪夢…』


『ギャー!酷ーい(°Д°)

悪夢じゃないもん!黒夢(くろゆめ)だもーん!!』


あぁ…そんな名前だったか

男の癖に頬を膨らめながら怒ってるんですアピールする黒夢は、相変わらず…生きてるのか、死んでるのか分からない程に、白い肌で…それに合わせて作ったような燃えるような紅い瞳だった。


『いやーん(//∇//)そんなに見つめられちゃ恥ずかしいわ///え?ちょっと!?』


わざとらしく手で顔を覆い、腰をクネクネさせる黒夢を無視して勾玉で飛ぶ。


視界に光が入ったと同時に、俺の目の前には満面の笑みを浮かべる黒夢が居た。


『お前…なんたら協会ってはもういいのか?』


溜め息を吐きながらふと思った事を聞いてみる、幽霊協会だったかな?


『うーんとね(._.)良いような…良くないような…(;´_ゝ`)』


何やらスッキリしない答えが返って来たが…俺的には、会話が無かったから何となく質問しただけだ…夢の中の変人のことなんて別に興味ない。


『へぇー…』


適当に返事を返した俺は、自分の居る場所に少し驚いた、俺が希望したのは始業前の中川瑠璃の様子だったはず…しかし、そこは学校でもなく中川瑠璃の部屋でもないうえに、辺りは薄暗く…まだ朝日が昇り切る前だった。


『ここは…?』


右には木々が生い茂り、左側は川だ…俺が立ってきるのは遊歩道だろうか?キョロキョロしながら中川瑠璃を探すが道の先に人影は無かった。不振に思った俺に、目配せしながら黒夢がある一点を指差した。


ニヤニヤする黒夢の顔は無視しその指の向く先に視線を向ける『……っ!?』俺の視界に飛び込んで来たのは…中川瑠璃……の首吊り死体だった。


『ど…どうして……』


夢の中だと分かっていても動揺が隠せない…そんな俺の気持ちなどお構い無しに黒夢は中川瑠璃の元へ歩みより俺の疑問に答えてみせた


『どうして?そりゃ苦しかったからさ』


『…だけど』俺が反論する暇もなく黒夢は続けた


『『だけど、死ぬ程のことじゃない』?それは君…の考えでしょ?三つ編みちゃんはね…君が思ってるより何倍も苦しかったんだよ…横山悟に脅されたあげくに騙されて、親友だった加賀橋明美には信じて貰えず…学校に居場所は無くなった。そして…母親は自分の異変に気づいておきながら…手を差し伸べてくれなかった』


『それは違う!彼女の母親は!心配してた、だけど娘が打ち明けるまで待つつもりで居たんだ!』


俺は彼女の母親があの時見せた、あの表情を思いだし思わず声が大きくなる

だが、黒夢は人差し指を自分の唇に当てながら、俺の間違いを指摘した


『だ*か*ら~、それは…「君」の考えでしょ?君が見た物語の君が感じた事であって、それは中川瑠璃…三つ編みちゃんが感じた事じゃないんだよ…。三つ編みちゃんは誰かに助けて欲しかった訳でも…見守って欲しかった訳でもない、ただ自分が間違ってない事を知って欲しかったんだよ…でも、それを打ち明ける事が出来なかった…誰も聞いてくれなかったからね』


『そんなの…勝手すぎる…』


『そりゃ自殺するくらいだからね、自分勝手な人間だから…残された人の気持ちなんて考えないで死んじゃうんだよ…でも自分の部屋で死ななかっただけ、三つ編みちゃんの場合はまだマシかな?あそこで死んだら第一発見者は確実にお母さんだもんね』


そう言うといつの間にか俺の目の前まで来ていた黒夢は少し悲しそうに微笑んだ。





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