ぼくと白いドラゴン
ぼくは、独りぼっちだ。
父上と母上は、馬車の事故で亡くなった。
ぼくは助かった。父上と母上が庇ってくれたから。
ぼくは、叔父さんの家に引き取られた。
だけど、寂しい。
親切にしてくれたのは感謝してるけど、叔父さんには娘さんがいるし、その子につきっきりだ。
血が繋がっているとはいえ、やっぱり、本当の父上と母上じゃなければ、落ち着かない。
友達?…他の子達と違う、ぼくの髪の色の、銀髪のせいで、仲間にいれてくれなかった。
だから、ぼくはよく一人で、家族でよく行った野原へ向かう。
そこで、時間をよく過ごすんだ。
綺麗な花が咲き、心地よい風が吹く、この場所で。
今日も、ぼくは一人で野原に向かったんだ。
「…?何だろう。あれ」
野原の真ん中に、白いものがうずくまっていた。
『ギュウー…』
微かなに鳴き声が聞こえた。そして、白いものがぼくの方を振り返った。
―わ。ドラゴンだ。
大きな白い羽をパタパタと動かして、とても透き通る様に綺麗な、真っ黒な目で、ぼくを見てくる。
「もしかして、白竜?」
ぼくは驚く。ドラゴンなんて、王族や、お金持ちの人と一緒に居る所しか見たことが無かったから。
中でも、白竜は、ドラコンの中で、とても珍しい種類なんだよって、父上が言っていた。
「…怪我、してるの?」
白い翼が、少し赤くなっている。
「…!ちょっと待ってて!」
ぼくはあることを思い出して、ある野原の場所に走っていった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「―はい。これでしばらくは大丈夫だよ。」
ぼくは、ドラゴンに野原のある場所にある、薬草を巻き付けてあげた。
「これ、応急処置だけど、傷が消えて治る薬草だから、これでもう大丈…夫。」
ふと、顔を上げると、向こうの丘に、ある家族が顔を見合わせて、笑いあっていた。
その家族が、まるで、父上と母上とぼくが、野原に来て笑いあっているように見えた。
『ギュゥウ?』
ドラゴンがぼくを心配そうに除きこんでいる。
…泣いちゃ、だめなんだ。
泣いても、父上と母上は戻って来ないのだから。
『――おいで…レオ。私たちの可愛い息子』
父上と母上が笑っている顔を、思い出した。
ぼくは、唇を噛み締めた。
目から、静かに涙が溢れてくる。あんなに泣いたのに、泣いて、泣いて、泣き続けたのに。まだ泣き足りない。
家族が居なくなった悲しみは、泣いて表せないぐらい、つらい。
一滴の涙が落ちたとき、温かい何かが、ぼくの頬の涙をなめとった。
「…!」
ドラゴンが、ぼくの涙を舌でなめとったのだ。
「…君、も。ひとり、ぼっち、なの?」
ぼくの問いかけに、ドラゴンは静かにうなずいた。
ぼくより背の高いドラゴンは、ぼくを上から見下ろしている。
その優しい目は、父上のようで。
とても、たくましく見えた。
「…ここ、綺麗だよね。町を、ぜーんぶ、見渡せるから。」
ぼくたちは、野原の向こうの方を見る。
太陽の光に照らされて、町全体が、キラキラ光って見えた。
――ここの景色を見たら、ほんの少し、ぼくの心が、落ち着いた気がした。
そして、ぼくはあることを思い付いた。
「そうだ。君、名前、ある?」
ドラゴンは、細長い首を横にふる。
「じゃあ、ぼくが名前をつけていい?えっと…」
「…ゼラ」
「ゼラ。…意味はね、ぼく、緋色…ゼラニウム‐コーラルピンクが好きで。その頭文字の二文字を取ったんだ。緋色のイメージはね、楽しそうで、アクティブで、健康的な。…どうかな?」
『ギュルギュウゥゥ!!』
彼―ゼラは、ぼくが付けた名前が気に入ったみたいで、嬉しそうに目を細め、羽をパタパタと動かしている。
名前でこんなに喜んでくれるなんて…ぼくも嬉しくなってくるな。
ぼくたちは、かおを見合わせて笑いあった。
すると、突然眩い白い光が、ぼくたちを包み込んだ。
「!?」
あまりに一瞬の出来事で、ぼくは呆然としてしまった。光にではなく、目の前の光景に。
…ぼくの腕が、光ってる。
黄緑色に輝いてた光が、だんだんと、ある形に変化していく。
――それは、ドラゴンのシルエットだった。
ぼくの腕に刻まれた、白いドラゴンのシルエット。
ぼくには、一体何がおこったのか、意味が分からなかった。
『―ふむ。俺とお前が契約を結んだみたいだな。』
頭の中に響き渡る声。
ぼくは、一体だれがしゃべっているんだろうと、辺りをキョロキョロと見渡した。
『何を見渡している?ちゃんと俺は目の前に居るだろう?』
目の前に目を向けるけど、ぼくとゼラ以外だれもいない。
『…いい加減に気づけ』
「いった!?」
ぼくはゼラにあたまを叩かれた。
軽くだから、あんまり痛くはなかった。
「…え?もしかして、ゼラがしゃべってるの?」
『あぁ。そうだ。お前と契約を結んだからな。そのお前に刻まれたドラゴンが証拠だ。』
ぼくはぼくの腕をみた。
「『けいやく』って?どうやってなったの?」
『―まず、契約したいドラゴンに、自分の血。もしくは涙をなめさせ、そして、ドラゴンに名前をつけ、お互いに深く信頼しあった時、契約は結ばれるんだ。
だから、たまたまの偶然で結ばれたんだ。』
「え!?『けいやく』、ぼくがしちゃっていいの?」
『聞いても遅い。もうしているだろう。…分かったらオドオドするな。男なら、もっとシャキッとしろ。』
「は、はいっ!…ってゼラ。まるで父上みたいだよ…。」
『―あぁ、そうだったな。怪我の手当てをしてもらった礼をしていなかった。よし。今日からお前をビシバシと鍛えてやろう。それが俺からのお礼だ。』
「え?いや、いいよ『良かったな?お前を俺がどんどん強くしてやるんだ』…おねがい、はなし聞いてゼラ!」
『話なら聞いてるぞ?ちゃんとな。』
「むむぅ…!ゼラのいじわる!」
ぼくはゼラをポカポカと叩いた。
けど、ゼラには全然効いてないみたいだった。
だからぼくは一回思いっきり叩いた。
『いたっ!んー、あ、そうだ。お前の名前を聞いてなかったな。お前の名前は?』
ぼくは少し顔を上げて言った。
「……レオ。レオ・タルトートだよ。」
『レオ…ね。ふん。良い名前じゃないか。んじゃ、レオ。…これから宜しくな。』
「あ、う、うん!よろしく、ゼラ!」
ぼくは、この時初めての友達ができた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「―…」
『おい?何を考えている?』
「あ、いや。ちょっとな。…お前と、最初に出会った時の事を思い出してたんだよ。」
彼…銀髪の青年、レオは、フッと微笑む。
『…あぁ。そう言えば、この野原だったな。』
ドラゴンは景色を眺めた。
そこには、前と変わらない、美しい町並みが広がっている。
「父上と母上以外に、自分の事、誉められたこと無かったから…。嬉しかった。」
『―そうか。お前も強くなったな、レオ。もう立派な?冒険者になったのだからな。』
「立派なで、?(はてな)つけるなよ。地味に傷つくだろ?」
僕は、後ろを向いて、子供の様に口を尖らせる。
すると、すぐに後ろから、声が響いた。
『いや―お前は』
白いドラゴン―ゼラはにやりと笑った。
『俺と冒険することで、もっと強くなる。』
「!―そう、か。そうだよな。僕たちはもっと強くなるんだ。」
僕が冒険者となり、色々なダンジョンをゼラと供にクリアして、強くなっていくのは、まだ別の話。
僕とゼラは、青い青い空を見上げ、これからも、ずっと続いていく冒険に胸を弾ませた。
「これからも、宜しくな。ゼラ。」
『こちらこそ。これからも世話になるな、レオ。』
あの時の出合いを思い出す様に、僕たちは顔を見合わせて笑った。
ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます。ヾ(*T▽T*)
この物語を作ろうと思ったのは、友情と、ドラゴンの話を書きたかったからです。
もっと話を追加しようかな―と、思ったのですが、私の力では、この話で限界でした。(笑)
近々、お話をもしかしたら追加するかもしれません。φ(..)
まぁ、その事は置いといて…(。-∀-)
読んでくださった方々、本当にありがとうございましたm(__)m
レオとゼラの物語が、少しでも心温まる物語になっていれば幸いです。
ではでは!(。・ω・。)ゞ☆誤字脱字等ありましたら、感想に書いてお知らせ頂けると嬉しいです。