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【2】prologue2

【2】prologue2





 ザザーン。





 ザザーン。





 波の音が聞こえる。


 眼下には果てしなく広がる真っ青な海。

 上にはこれまた深青色の透いた大空。

 横には何時もの悪友。



 そう、夏真っ盛りの今日。


 俺たちはこの碧く輝く広大な海、




 …………を見渡せる崖の上にやって来ていた。







 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□







「す、スゲー高いな……」



 フッ、どうやら奴はビビったらしい。

 あまいな。

 こいつぁ、とんだ甘ちゃんだぜ。



 因みだが、今全身が物凄い勢いで震えているのはただの武者震いか何かだ。



「な、なんだおめー。ビビったのか?

 ふ、フッ。そんなに嫌なら辞めとくか?おお?」


「……おい、ソーマ。お前震えてんぞ」




 いや、あれだよ。…………。




「シバリングだよ‼︎」


「お、おう。そうだな……」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」



 妙な沈黙が辺りを支配した。

 ヒュルリと、冷たい一陣の風が間を駆け抜ける。



 悪友がゆっくりと口を開いた。



「なあ、ソーマよ。

 あんま言いたくは無いけどさぁ……。

 やっぱり辞めとかないか?」


「な、なんでよ? なんでなんよ?」



 意地になり思わず変な口調となる。



「い、いやさぁ。

 分かってるだろ?」


「…………」



 ……ああ、分かってるさ。



「幾ら何でも高過ぎるよな」



 そう、何を隠そうこの崖。

 少なくとも20mはありそうです。はい。



「飛び込みスポットっても、もっとあっただろ⁉︎ え? なんでここ? 馬鹿なの? 死ぬの?」


「ええ〜、だってぇ〜、こんな高いって知らんかったんやもん〜」



 事実、こんな高いとは知らなかった。

 いや、マジで。

 流石の俺でもちょっとぶるっちまったぜ。


 あ、やべ。ちょっと漏れた。



「だからさ? な?

 今日はもう良くね?」



 ――俺たちさ、頑張ったじゃん?

 悪友は諦めたかのようにそう告げた。



「……そうだな」


「っ‼︎ ならさ、もう帰ろうぜ?」




 ……でもさ。

 俺たちにそんな選択肢はもう残ってねぇんだ。




 俺は悪友にそっとある方向を指で示した。

 向こうの茂みの辺りだ。


 奴は訝しげな表情でチラリとそこを見る。

 そして、驚きで奴は眼をいっぱいに見開けた。


 そう、

 悪友は気付いた。気付いてしまった。


 茂みから此方を覗く複数の影。

 複数の地元の小学生の姿を。



 彼らは一様に、まるで物語の英雄を見ている様に、キラキラと輝く瞳で見つめていた。


 彼らの無垢で無邪気な視線が、無慈悲に俺たちの身に突き刺さり、貫く。




 グサッ、グサッ。




 視線が痛い。




「なん……だと……」



 悪友が愕然とした表情で、そう呟いた。



「分かったか? 俺たちはもう退却なんて許されねぇんだ……」


「……だけどッ‼︎」



 悪友を遮り、ゆっくりと告げた。



「俺は。俺はさ、飛ぶよ」


「お、お前⁉︎ くっ、馬鹿野郎‼︎

 そんな身体でとべるはずねぇよ‼︎」




 飛べるはずねぇ、

 飛べるはず、ねぇんだ……。




 そう言って悪友は懇願するかのように俺の前で両膝をつき、俺のブーメランタイプの水着に手を掛け縋り付いた。





 それでも、俺は――。





「…………もう、何を言っても行っちまうんだな?」



 ――ああ。



「…………そうか。

 なら、もう何も言わねぇ。

 行ってこい」



 そう言って悪友は静かに微笑んだ。



 俺はくるりと向き直り崖の先を見据える。



 凄い圧力だった。何だか歪んで見える。

 気の所為かバチバチと鳴っているような気もする。



 ――中々ヤバそうだ。



 だけどな、



「1番‼︎ 男‼︎ 大神おおがみ 相馬そうま‼︎ 行きます‼︎」



 飛びます‼︎ 飛びます‼︎










 俺は鳥になった。











 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□










 彼が跳んだ瞬間、

 天文学的な奇跡が起こった。


 異世界の大魔法師の老人が起こした召喚魔方陣、その座標が彼と重なり合う。


 そして、彼の位置・運動エネルギーは全て魔法エネルギーとして変換され、異世界への扉が開いた。









「俺はぁぁぁぁぁ、鳥になってるぅぅぅぅぅぅぅぅ‼︎」









 しかし。


 更に偶然に偶然が重なり、召喚先の座標がズレてしまったことにより彼は【ラフィス王国】の王都、その中にある勇者召喚陣上へと送られることとなった。






 彼の奔走が幕を上げる。

作者は5mの飛び込み台から飛んで

死に掛けました。


多分20mは死ねます。

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