新鮮組入組者
まだお天道様がのぼりきってない時間。
新鮮組は小さい依頼主からの仕事をしていた。
「たくくそ暑いなぁ……」
「まだ昼にもなってないわよ、いさみ。」
「もう探すよやめましょうよ……」
「探し始めて10分しかたってないのだけれど。
」
局長と私が弱音を吐くのおお構いなしに土方さんはどんどん進んでいく。あの人いろんな意味で局長より恐ろしい。
「それよりまず妖の仕業なのかよ……それすら疑わしいじゃねぇか」
「隠し神や狒々、カク猿といった人を攫う妖がいるのよ。と言っても人をだけどね。」
局長が愚痴を言うと土方さんが説明した。
どうやら人を攫う妖はほんとにいるらしい。人対象らしいけど。
「とにかく例がある以上無視しとくわけにはいかないわよ。真面目に探しましょう。」
「わかったよ……鬼歳三……(ボソ)」
「いさみ、今なんといいました?」
「なな、なんでもないよ!」
「ならいいです。」
すごい。一瞬殺気で土方さんの周りが歪んだ気がする。
「あら、あれは猫でしょうか。」
「?どれですか?」
「あれですよ、あ、逃げた、追いかけましょう。」
局長と私の返事を聞く前に走っていってしまった。猫なんて見えなかったと思うんだけど……
「あいつが見つけたっていうなら見つけたんだろ。」
「どういうことです?」
「目がいいってことだよ」
私も目がいいほうだと思うのだが私でも見つけられなかったのだからどれだけ土方さんの視力はいいのだろうか。
「いさみーそうごー見つけましたよー。」
100m程先に土方さんがいるのが見えた。手には白いものをもっているがあれが猫なのかはここからじゃ良く分からない。
「うお、ほんとだ。」
「さすが目はいいな。」
「目だけではないのだけれど。」
局長の言葉に土方さんがツンと返した。怒ったのだろうか。
「耳も垂れてるしこの猫だろ。」
「案外適当なんですね。」
「猫なんてみんなおんなじだろー早く帰るぞ。」
どうやら局長は早く帰りたいようだ。私も正直な所暑すぎて早く帰りたい。走ったせいで汗が止まらない。
「そうごーはやくしろよー。」
私が息を整えてる間に二人は先に行ってしまったようだ。酷い。
「ま、まってくださいぃー……」
暑すぎて必死に追いかけていてこの後よく覚えていなかった。
「ねこちゃんみつかったよー」
つぎの日の朝、女の子が新鮮組を訪れた。
しかし口から出た言葉は予想していなかった言葉だった。
「え、見つかった!?この猫は!?」
「ねこちゃんと似てるけどねこちゃんじゃないよぉ」
「わたし達は何をしていたのでしょう……」
土方さんが珍しくうなだれていた。確かにあんな暑い中探し回って違う猫だったら悔しい。
「ねこちゃん探してくれて嬉しかったけど見つかったから探さなくてもいいよ〜またねー」
女の子はそう言って出ていってしまった。
「なんのために探してたんだよ!!」
「猫が見つかったんじゃ妖とは言えませんね……」
2人は酷く気を落としているが1つ大事なこと忘れている。
「あの、この猫どうするんですか?」
「「………………」」
2人とも猫のことすっかり忘れていたみたいだ。この猫が探し猫だと思って預かっていたのだから探し猫が見つかった以上この猫はどうなるのか。
でも私ははじめこの猫見た時に思ったことがあった。
「この猫飼いませんか……?」
「「は?(え?)」
「ごめんなさい……可愛いし新鮮組のマスコットとかになるかと……」
流石にこれはまずいだろう。絶対許される訳が無い。
「お前がちゃんと世話するならいいよ。」
局長から出たセリフは意外なセリフだった。
「ええ、そうですね、いいと思います。」
土方さんもまさかの承諾がでた。
しかし良く見ると2人とも目が死んでる。ショックが大きすぎて猫どころじゃないのだろう。
「えっと……それじゃよろしくね。えーと…………」
名前をつけようか悩んでいる。どのような名前が良いか。
「ニャン(ぽと)」
猫が物を食わえて持ってきた。こんぺいとうのようだ。
「これが食べたいの?」
「ニャア」
「いいよ、はいどうぞ」
猫は嬉しそうにこんぺいとうを食べている。
「そうだ、君は今日からこんぺいとうね。よろしく、こんぺいとう」
「ニャン」
わかっているのかいないのかこんぺいとうはそう返事した。
これからこんぺいとうの世話をしなくちゃな。
「暑いよォォ…………」
「私の努力……」
その前にこの二人をどうにかしなきゃいけないみたいだけど……