新鮮組、初仕事ですよ
「……ったく、誰かさんのせいで八百屋と間違われちまったじゃねぇか」
「ごめんなさいぃぃ」
局長は椅子に座りながらお茶を飲んでいる。
しかし目は私を睨んだように見ながら見下していた。真面目にやったつもりだったのだが少し洒落っ気を入れてみようと思って行った結果がこれだった。
「まぁまぁ、過ぎたこは仕方ない。代わりの物も無いしもうこれでいくしかないわね。」
土方さんが助け舟を出してくれる。
しかしいつも温かい目で見守ってくれている目がいつもより黒く見えたのは気のせいだろうか。
そんな悩んでいるときまた来訪者が現れた。
「ごめんくださぁい」
見た目8歳くらいの小さい女の子、前髪切りそろえておりおかっぱ頭だった。
「お嬢ちゃん、ここは八百屋じゃないよ。お使いならほかをあたんな。」
局長がそう言って少女に言い聞かせたが帰る様子はない。ほかの理由があるようだった。
「ここって助けてくれますか?」
「なんだい、仕事か。妖が現れたのか? 」
少女は首を傾げた。妖が良く分からないのだろう。
「あやかし……?」
「妖っつうのは悪いことする奴らだよ。」
「ならあやかしのせい!うちのねこちゃんがいなくなったの!」
「ねこぉ!?」
局長は飲んでいたお茶をぶちまけ湯呑を握りつぶした。なんて握力なんだ…………
「ねこちゃんがいなくなったの、そのあやかしってのがつれてっちゃったのかも」
「たしかに攫う妖はいますが……猫をさらうのでしょうか……」
土方さんが首を傾げる。土方さんでも良く分からないらしい。
「あの……すこしでも妖の可能性あるなら探しませんか?」
「それもそうだな、わかったお嬢ちゃん、私達に任せといて。猫のこと教えてくれる?」
私の発言が通ったみたいだ。ちなみにこんな事は100回に1度あるかないかだろう。
「えっとね、耳がたれてて白くてしっぽが丸いの!」
「えーと……他には?」
「名前はねこちゃん!」
「ねこちゃんが名前なの?」
「うん!」
なんてこった、この女の子は猫にねこちゃんと名前をつけてるらしい。種族名なのか名前なのかさっぱりわからない。
「……とりあえずわかった。探しとくからまた明日来てくれ。」
「うん、ありがとね!」
そう言うと女の子は手を振って出ていった。
「なんて情報が少ないんだ。これじゃウォーリーを探せ(世界地図版)みたいなくらい難しいだろ。」
局長がグチグチ言っても仕方ないのでここは早く探しに行ったほうがよさそうだ。
「とりあえず約束してしまいましたし探しに行きませんか?」
「そうですね、いさみ、行きましょ。」
「あぁもうわかったよ!行くよ!」
局長は思いっきり嫌な顔しながら言った。
「早くいくぞ!」
「あっ待って。」
局長が出ようとした時、土方さんが呼び止めた。
「一応調査ですから、刀も持っていきましょう」
「わ、わかりました。」
私は愛刀は菊一文字を腰にかけ準備した。
「2人とも準備はできました?」
「大丈夫だ、問題ない。」
「よくそれ知ってますね。時代違いますよ。」
ボケているが準備はできたようだ。やっと仕事らしい仕事ができると実は密かに嬉しかった。
「それじゃいくぞ、新鮮組初仕事、成功させるぞ!」
「「おおー!」」
猫探しからあの事件が関わるとはまだ思ってもいなかった。