表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
願いが叶った女  作者: 花梨
8/56

№7

王の執務室、主たる人物が集まり先ほどの魔力について話し合いをしていた。

それでも何の手がかりもないまま今はその痕跡さえもなくなっている状況に皆、不安感を隠せないでいるが、むやみに恐怖心を煽るような行動はできないという結果になった。簡単にいえばこのまま何もしないというわけだ。幸い一瞬の出来事だった為、一部の者にしかその魔力の存在が知られてない事もある。事を荒立てて城内に不安要素があると思わせるのはNOと言う事である。その変わり城内の警備体制は今まで以上に厳しいものにし、結界も更に強固にしたのだった。


もう話し合いも終わりそろそろお開きという時、将軍が皇太子に問いかけた。


「皇太子殿下、昨日の召還者達、聞く所によれば中々の美女揃いと聞きましたが、感想は?私も参加したかったが、上に立つ身の魔力保持者が殆ど召還の為に出払っている現状では国の警備が優先されて行けなかったもので、是非皇太子自らその感想を聞かせて頂きたいと思いましたね。」 ニヤリと笑う将軍であった。


「別に…、将軍が期待しているような感情は何も沸いてきませんでしたね。」同じくニヤリと笑う皇太子。


「しかし、未来の皇太子妃候補ですよ。そうそう無碍にもできないでしょう。そのうち一人に絞らないといけませんね。」


「皇太子妃としての資質がない場合は全員が候補から外れる事だってありうると思いますよ。」


冷めた表情と声色の皇太子。


「ははっ、それは手厳しいですな。お互いよく知る事から始めなければなりませんね、まずはそれからでしょう。」


「そうですよ皇太子、会話から知る事も大切ですからね。」


「宰相から今後の予定を聞いているのではないのか?ともかく何よりも優先させなさい、王命だ。」


「何一つ、つくろう事なくありのままの姿でお相手しましょう。」


「女性には気遣いを持って接しなさい、いつも言ってるでしょう。」


「それでは、仮面のような笑顔でも貼り付けましょうか?それもある意味、私の日常ですからね。」


「初対面で嫌われても知りませんよ。」


「私は既に会ってます。今度会う時は美味しい話しを山ほど聞かされた三人の嫁候補となった者達でしょうね。」


まるで嫌な物でも見るような目。冷たい笑みを浮かべる皇太子であった。


それ以上は言わない皇太子だったが、なんとなく彼が言いたい事その場に居た者達は察していた。

枯れた老人ではない健康な年若い青年が、恋愛や結婚にここまで後ろ向きな思考になっている、本来なら砂糖菓子みたいな甘い関係を多少は望んだり、夢見てもいいはずなのだが…と口には出さないが、今まで彼に近づいてきた女性達が頭に浮かんでは、気の毒に思うのであった。


「デューク…、あなたの気持ちもわかりますが…、しかし今回は違いますよ、四人の女性達は、私共の身勝手により慣れ親しんだ国と家族から引き離され…こちらに来て頂いたのです…、彼女達の気持ちも考えてあげなさい…。美味しい話しがないとやってられないと言うものです。」


惜しいっ、実に惜しいっ、王妃よ物凄く良い事を言っているのに、最後のそれはなくてよくないか…。相手が息子だから…あのくらいズバッと言った方が良いと言えば良いんだが………。しかし…残念だ…。


王妃様…、あともう少しでしたね…。でも聡明な皇太子様にはちゃんと伝わってるはずです。


ウッハー、流石王妃様、俺やっぱこの人大好きだな。天然なのか計算しているのかわからないが、このセンスは真似できない。


私も彼女達がここに連れて来られた経緯については申し訳ないと思っています、彼女達の立場になって考えたら酷い話です。それを上回る位の、高級食材になれと私に言いたいのですね…。母上…。


皆に視線を向け大きく頷く王妃であった。




「ところで陛下、もう一人召還者が居ると聞きましたが、貴族達が四人目の召還者の後見人の座をめぐって既に暗躍していると闇部からの報告がありました。面倒な事にならなければいいのですが…。」


既に三人の召還者には後見人としてこの国の四大貴族のうちの三家が決定していた。四大貴族のうち一番力がある貴族が辞退したからである。誰がどこの家と関わるのかはまだ決定してないが、この三家である事は決定事項であった。そこにもう一人召還者が現れた事でその座を狙う者達がでできたのだ。将来国母となりうる女性の後見人、権力を欲しい者には是が非でも手に入れたい後見人という立場。



「やはりな…、ある程度の予測はついてはいたが……。将来この国の母国となるかもしれない女性の後見人の座となると、皆が手に入れたいはず…。」


「この際、将軍のとこでお二人面倒見て頂く事はできないのかしら?一人も二人も同じでしょう?」


「あははは、私はそれでも構いませんが、他の者達が許しませんでしょう。それより宰相を口説いた方が良いのでは?宰相の家がなるのが妥当でしょう。四大貴族のひとつなのですから。」


「あいにく私に決定権はありません。」


「オードノギュー公爵は四人目の存在を知っているのか?」


「私からは父に話してはいません。しかし貴族の間で噂となってる今、父の耳にも入っているはずと思われます…。」


「そうだな、それなら話は早い、私から直接頼んでみよう。至急、書状を使者に届けさせる。」


「それならば、使者ではなく私が届けましょう。」


「いいのか?」


「はい、これでも親子ですから。」


「ははは、久々の親子の会話か? お前の親父殿は昔っから怖かった、よく怒られたものだ。」


将軍の言葉に王も頷き二人で嬉しそうに笑っている。


「宰相、すぐ用意する。できしだい向かってくれ。丁度良いライナスも一緒に戻りたまには家族水入らずで食事を取ったらどうだ?」


「まあ、それは良い事ですわ。ラールもきっと喜びますわね。私も久しぶりにラールに逢いたいわ…、それに三つ子もたいそう大きくなった事でしょう…。」


「あの…、王妃様、三つ子はさほど大きくもなっていません。多少大きくはなったかもしれませんが…」


「王妃よ…、二ヶ月位ではそう変化はないと思うがな……。」


「あら、デュークは二ヶ月でぐんぐん大きくなりましたわよっ。」


「それは赤子の頃の事でしょう…、母上…、三つ子はもう十歳を過ぎたのでは?…。」


「むう…、ただ私は逢いたいだけですわ…。ラールと三つ子に…。」


「そのうち遊びにいくが良い。ただし、黙って行くのは駄目だ。」


呆れたような将軍が王妃に声をかける。


「王妃様…、今も黙って出歩かれているのですか?あなたに適う者はなかなかいませんが、もう少しご自分のお立場を考えて行動してください。他国の者もこの国には沢山居るのですよ。今度は私が是非お供します。」


「まあ、将軍自ら、それは楽しい外出になりそうですわね。ふふ…。」



そんな時、後宮からの遣いが来たと王妃へと騎士が告げた。

サラからの伝言で四人目の異世界人が目を覚まし、多少ごたごたしたが、今は食事を取っているとの事だった。本人はいまだここが異世界だと気づいてないようで彼女への今現在の状況説明をして頂きたい為、後宮まで来て欲しいと言う事であった。


その内容に皇太子以外、王と王妃を含むその場に居た者達は皆、辛そうな顔をしていた。


「それでは私、対応してきます。」


「うむ、頼んだぞ…。誠心誠意を持って対応するように…、決して手違いでこちらに召還されたなどと言ってはならん、それだけは守るように…。そのうち私とも会う事になると伝えておくように…。王妃よ…お前は適任だ、自信を持て…。」


「はい、では失礼します。」


王妃は瞬時にその場から消え後宮へと飛んだ。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ