星と暗い気持
途中で逃げ出してしまった・・・。
全力疾走してきたはいいものの、罪悪感とこれからどうすればいいのかわからないという不安がつのる。
あっという間に日は沈んでしまい、空にはきれいな三日月とところどころに白いゴマみたいな星たちが瞬いていた。
無我夢中で走ってきてしまったせいで、今いる場所は家とかなり距離があった。
もう一回あのケーキ屋に行って謝罪の一言でも言ったほうがいいのかな。いや、でもあの青年は私のこと危険人物だと思っているかもしれないし。
もう、わけわかんないよ・・・。
その時、ケ―タイ電話の着信音が鳴った。今の心境とは正反対の明るいポップな曲。小さく舌打ちしてから、バックから取り出した。
来見からだった。
出ようかどうか迷ったけど、出ることにした。この出来事について私のためにと思って計画してくれた(まあ、ホントのことを言えば計画してくれなかったほうがよかったけどね)来見に謝って置こうと思ったからだ。
「もしもし・・・」
『あ、流香?来見だけど。で、どうだったの?』
「・・・ごめん」
『あー、やっぱり?』
「なにやっぱりって」
『いやぁ、流香のことだからきっと無理だろうなあって思ってた』
なんじゃそれ!自分で立てた計画なのに無責任な!と、言おうと思ったがここはグッとこらえた。
『まあ、でも元気だしなよ。ケーキは・・・どうにかするからさ。このお詫びに』
信じられるかっ!という言葉もグッとこらえた。ダメダメ、八つ当たりしそうになってしまう。ここは、いつもどうりを保たなければ。
私ってカッとなれば変なこと言ってしまう癖があるんだよね。
『んじゃ、ばいばーい』
ガチャ。切れた。
結局のところ、今の電話って一方的だったよなぁ。
来見さっきケーキを何とかするとか言ってたけど、どうするつもりなんだろう。また何か変な作戦考えそうだな。ここは来見が新たな計画考えつくより先に、こっちが何とかしないといけないな、うん。
とはいっても、どうするかなぁ。
本屋にでも行って、珍しそうなケーキの作り方が書いてある雑誌を買って自分で作るか・・・。いや、だめだ。私には「珍しい」と「珍しくない、普通」の境目がよくわからない。っていうかそもそも私ケーキなんて作った事ないし。作った事あるものと言えばバレンタインのチョコレート(板チョコを溶かしてそのまま型に入れた冷やしただけ)とか、みそ汁句ぐらいだもんなあ。
みそ汁ケーキ・・・・想像しただけで嗚咽が・・・。
まったく、どうすりゃいいのっ。
やっぱあれしかないのかなぁ。
あれっていうのは、来見の計画のこと。そもそもその計画っていうのは、「ロール・セリタリン」に行って、私が恋をしているという青年に「珍しいケーキを知っていたら、一緒に作っていただけませんか」・・・見たいなことを言うというものだったのだ。
そして見事失敗に終わったのである。
ああ、今思い出しても恥ずかしさで顔が赤くなりそうだ。穴があったら今すぐ入りたいというのはこの事かと身にしみて思う。
空は一層暗くなってる。ような気がする。
私は空よりも暗い気持を抱えたまま、どこに向かうのかわからない足を、ただひたすら前に進めていた。
今回は早く投稿することが出来ました!
・・・誤字や脱字などあったらすみません。