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天使と悪魔

ああ、私はなんておろか者なのだろう!

どうしていつも私はこうなんだろう!まあ、そんなことボヤいても意味ないのはわかってる。十分にわかってるよ。

出来れば今すぐにでも帰りたい、でも、あんな来見の顔見ちゃったし、何より「行く」って言っちゃったのは私なんだし今更帰るわけにはいかないよねぇ・・・。

そんなこんな思いながらため息をつく私。そして、夕日がまぶしいなか「ロール・セリタリン」のドアに手をかけるのだった。(正確に言うならば、「手をかけてしまった」である)

そんなこんなで、静まり返っている店内に鈴の音が響いた。そして、その音が鳴りやむころにはもうあの青年が奥から出てきていた。

願うならもう少し後に出てきてもらっても良かったのになあと思う。

「いらっしゃいませ」

いつも通り少し低い声。やっぱり、胸にちくっと針みたいなものが刺さる。彩未の言うとおり恋なのかなあ、これ。

「こんにちは」

1ミリくらいの短い会釈を返し、ケーキに目を移した。心拍数が上がってきたかもしれない。どうしよう。顔に出ていないことを願おう。


そしてここも前みたいに沈黙が流れる。会話が浮かばない。頭の中が来見に言われたことでいっぱいになっていて他のことが考えられないのだ。

「どれにします?」

「え、えっと・・・」

視線がケースの端から端を行ったり来たりして、落ち着かない。こんな時って、どうすればいいんだろう。素直に言ったほうがいいのか、それとも少し時間を稼いで心の中で何度もシュミレーションするか。

どちらも無理だよ~と私が言う。もう一人の私が早くやれ!とせかす。まるでアニメとかでよく出てくる心の天使と悪魔の会話のようだった。

アニメではここで天使が勝つんだろうけど、現実世界に生きる私はあっさりと悪魔が勝った。

なんでかって?たぶん今すぐここから立ち去りたいっていう気持ちが強かったからだと思う。

「―――あの・・・!」

いきなり大きな声を出して相手もびっくりしたのだろう。肩をびくっとさせたのが下を向いたままでも分かった。

「私、実は今日・・・その、あの、えっと」

最後に行くにつれてどんどん声が小さくなっていく。手汗が半端ない。悪魔が何やってるんだよ!声を張り上げたが私はうつむいたまま顔を上げられなかった。

絶対これ、赤くなってるよ。ノーマルの私がつぶやいた。

「どうしました?」

「いえ、その」

私のいくじなし!さっさと言え!

「ケーキ!」

グイっと顔を勢い良く上げ、叫んだ。案の定相手は「は?」という表情を浮かべる。あたりまえだよね、ケーキ屋に来て「ケーキ!」なんて真顔で言われたら・・・ね。

恥ずかしい、と心が感情を覚える前に私は店から飛び出していた。顔全体を手で覆い隠して。

ごめん、来見。私やっぱりいくじなしの、馬鹿だよ。

もう、あのケーキ屋いけないかなぁ。


私は夕日が照らしているシャッター商店街を、トマトみたいな真っ赤な顔でひたすら全力疾走した。

最近投稿の期間がいてしまいすみません。

ちなみに今日は修学旅行の振り替え休日です。

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