ミッション?
「えっ、でも恋って・・・。なんでわかったの」
まだ頬が火照っている。心臓がバクバクなってうるさかった。
「なんでって分かるでしょ」
あたりまえじゃん、という彩未。私は頭に?を浮かべていた。
「ふつうわかるよ。そんなに動揺してさ」
彩未は私の顔を人差指でさした。それからにんまりと笑みを浮かべて、
「誰なのさ?」
といって、体をグイっと近づけてくる。
「誰って?」
「恋の相手!」
口調を強くして聞いてくる。私はとっさに彩未の腕を強く引っ張った。
「な、なにさ・・・」
「静かにしてよ!」
「何で?」
次は彩未のほうが頭に?を浮かべている。私はチッと小さく舌打ちして、あたりを見回す。よかった、誰もいない。
「どしたの?」
「い、いや別に」
肩を上下させて深呼吸。彩未は気付いていないみたいだけど、私たちのこの2分ほどの行動はたぶん他から見れば「不審」であったと思う。ケーキ屋の入り口で引っ張ったり、叫んだり・・・みたいな。
そういえば、こんなに大声出したりしてたのにあの店員さん出てこない。ドア越しに見れないかな、と背伸びをしてみるがカウンターにはだれもいなかった。きっと奥のほうで休んでいるのだろう。
「さっきから何やってんの」
はっと我に返ると、彩未が私を「不審」な人でも見るかのような目をこちらに向けていた。それと口をへの字に曲げている。
「あ、きにしないで」
右手を顔の前で軽く振って見せる。なおも「不審」な目を向けている彩未。どうしようかな・・。このままここで話しあいを続けたら、いい加減あの店員さんも気づくだろう。どうやってこの場から離れるか、それが今の私のミッションであった。
「早く入ろうよ」
「いや、あのさあ彩未」
「何?」
彩未の口調が強くなっているような気がした。いや、気のせいかな。
「ここさあ、実はショートケーキ専門のお店なんだ」
「は?」
彩未は眉を寄せる。あたりまえだよね、言った本人も今ビックリしてるよ。何言ってんだろ私・・・マジで何言ってんの自分!ショートケーキ専門の店ってなんだよ。他のやつも売ろうよ!
でも、これでいいんだ。
「・・・ごめん変な期待させちゃって」
私はわざとうつむき、声を細くして言う。よし、どうだ。
「なんでだまってたの?」
「えっ」
「もっと早く言ってくれればよかったのに!」
彩未は私を睨めつけてくる。これってもしかして作戦成功?
「もう!今までの時間無駄じゃない!」
「・・・あ、ごめん」
きがつくと彩未のペースについていけなくなっている。上手く彩未が私の仕掛けた作戦にハマってくれたのはいいんだけど。ちょっと彩未変わりすぎじゃない?と思った。でも、口には出して言わないほうがいいと悟った。うん、悟った。
「行くよっ」
彩未はいきなり私の右腕をひっぱり、大股で歩き出した。
「どこに!?」
突然のことでバランスを崩しそうになる。そんなことはお構いなしに彩未はどんどん進んでいく。
「他のところ紹介してもらうからっ」
振り向かないまま言う。これは明らかに不機嫌な時の声だ。私はやっちゃった、と顔をしかめる。彩未は機嫌を損ねたら結構めんどくさいのである。
たぶんあとからいいろいろ手直しすると思います。誤字などありましたらすみません。