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生まれて初めて

ハァ~・・・。

深いため息が漏れる。

私は青い空の下、一人でとぼとぼ商店街を歩いていた。商店街といっても、客は私しか歩いていない。どの店もシャッターを下ろしていて、活気がまるでない。昔は結構お客さんも来て、どの店も繁盛していたって前にお母さんから聞いたことあるけど・・・。今はそんなこと信じられないなぁ。


そんなことを思いながら歩いていたら不意に後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。

「流香ー!!」

走っているような足音とともに声が近くなる。あ、この声・・・。

「彩未じゃん。どうしたの」

「流香こそ、こんなとこでなにしてたのさ」

息を整えながら彩未は言った。

「いや、買い物」

「買い物?こんなとこで?」

彩未は周りを見渡す。まあどこもシャッター閉まってるから疑うのも無理はないかも。

「ちょっとケーキをねー」

ケーキの箱を持っている左手をあげて、彩未の前でゆすって見せた。

「ケーキかぁ。どこのお店!?」

案の定、彩未の目がらんらんと輝いた。

昔から彩未は大のケーキ好きなのだ。ケーキの話となると、真っ先に飛びついてくる。

「あそこだよ」

ケーキの箱を持ったまま、ひときわ目立つレンガ造りの店を指した。

「『ロール・セリタリン』?聞いたことないなぁ。おいしいの?」

「うん、おいしいよ」

私が言い終えた途端、彩未の顔が光輝くほどの笑顔となった。

「いこっ!!!」

「へ?」

彩未は私の腕を強引につかむと流石陸上部といった見事な走りでケーキ屋へ向かった。

「ちょっ、ちょっと待って!!!」

ケーキ屋について、ドアの取っ手をつかもうとする彩未の肩をつかんだ。

?の表情をする彩未。私は、三歩くらい下がって彩未を手招きした。

「何?」

「あ、あのさ」

不快、という表情を顔一面に広げる彩未を何とか自分側に引き寄せる。

「私、ちょっとあの店入りずらいんだよね・・・」

周りに人はいなかったのだが、何故だか小声になってしまう。

「何で?」

「その・・・、なんとゆーか」

私はあの感覚を言葉にしようと頭をフル回転させた。店員の人が頭に浮かぶ。

「流香顔真っ赤だよ?」

「えっ」

思わず手が顔に走る。火照ってるみたいだ。でも・・・なんで!?

「何?恋のこと?」

彩未がやらしい眼で私の顔を覗き込んだ。

「そ、そんなんじゃないよっ」

「怪しい!!」

「と、と、とにかく私はこの店入りずらいんだってば!」

何だろう。妙に顔が熱いし、落ち着かない。

「流香、それ恋」

「へ?」

思いもよらない言葉が出て、しばらく頭が真っ白になった。

「恋?これ」

何かが私の中を廻った。そして、その何かは私の心の中で弧を描く。

「ま、流香は疎いもんねぇ、これ系」

やれやれというポーズをとる。なんかいらっとくるけど今回はそうも言ってられない。


なんたってこれ、生まれて初めての「恋」だもん。









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