プロローグ!
私、弥生流香。高校2年生。今日は、これといって特に用事もないけど、昔から有る老舗が並ぶ小さな商店街へ来ているんだ。でも、私以外に人は全然歩いていないし、シャッターが閉まっているお店が多かった。
しばらく歩いていると、周りの老舗とは雰囲気が違う、ヨーロッパ風のケーキ屋が見えてきた。レンガ造りの小さなお店。でも、この辺りではとっても目立つお店だ。電気は付いてなかったが、何となく入ってみた。「リンリンリン」という、ベルの音とともに、店の奥から眼鏡をかけたいかにもバイトという雰囲気を出している青年が現れる。
「こんにちは。今やってますか?」
「ええ」
青年の胸のあたりに着けていたネームプレートを見た。「柏幸弘」3文字だ。って、気にするとこじゃないだろと、自分で突っ込む。
「どれにしましょう?」
「じゃあ、このショートケーキを」
自分で言った途端、固まった。「580円」
高すぎやろーーーーー!!!
思わず叫びたかった。
ショートケーキ一つ580円!?見たことねーよ!!!!私はなるべく顔に表れないよう頑張った。
それにしても、高いぞ。近所のケーキ屋では確か420円だ。やっぱやめますと言おうとしたが。
青年はもう箱に入れていた。
取り消せない。
私はおとなしく財布から600円出した。80円がなかったのだ。
「ありがとうございました」
青年は、おつりの20円を渡すと、ニッコリ笑った。 ドキッ! 何だろう?この気持ち。いきなり私の心を刺しゅう針みたいな感じのものが刺した。というより、貫いた。
「さようなら」
私はその変な気持のまま、店を出た。
どうしたの?私。
読んでくださった皆様ありがとうございます。