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殺人遊戯  作者: 茉紋
4/4

4.紅月

 衝動的とはいえヒト二人殺してしまった


罪悪感と嫌悪感が頭の中に浮かんでは消え、消えては浮かんでくる


「わたしは・・」


わたしという存在はヒトという生物でなおかつ女という個体である


ただの女のはずであろうわたしは、ヒトという生物を豆腐をつかむように


一瞬で破壊できるのだろうか…?できてしまってるからこの状態に陥ってるわけだが


この体は《死》という概念以外からも逸脱してしまっているのか?


答えの見つからない負のスパイラルからもう抜け出せないのか…


「わたしは、一体」


とにかく頭の中に流れる殺しの罪悪感から逃れたくて


一秒でもその場にとどまりたくなくて


気付いた時には足は走り出していた。


何かに追われてるいるわけではないが逃げた


右手に残るぬるっとした血の感覚、固まり白い腕を紅く紅く染め上げた。


いったいどれくらいの距離を走ったのだろう…


冷たいアスファルトの上を無我夢中で走っていった。


頭の中がようやく落ち着いた頃にはいつの間にか建物の中にいた


ビルのエントランスのような場所であった


建物の周りはシートで覆われて足場が組みあがっていることからおそらく建設中の建物だろうか?


吹き抜けから続く階段を上ってゆくと長い廊下と複数の扉が確認できた


そのまま階段を上がり続けていくと終わりが見えてきた


階数にすると7階、部屋数はおおよそ100部屋ほどだろうか


形状からするとビジネスホテルののような感じもする


一つ一つ扉を開けて中を確認するが窓もまだ取り付けられていない殺風景な部屋が続いた


扉を開ける作業も何かを期待して開けている。そんな感覚だった


同じような作りの部屋をいくつも開けていったが


1つだけ窓がきちんと取り付けられ、家具が整然と並べられている部屋にぶつかった


「ここから先は出来上がっているのか?」


そう思い、次の扉を開くがまた殺風景な風通しの良い部屋になった


十数個あった扉を開いたが、大体中央に位置したその部屋だけが完成していた


気になりほかの階の部屋もすべて開けてみたが完成された部屋はそこだけだった


4階の404号室そこだけが完成されていた。


だがヒトが入った形跡もそこにいる気配も全く感じられずしんとした空気が流れていた。


いろいろ考えていたが結局404号室の白いダブルサイズのベットに座っていた


「ここは一体なんだろう」


よくわからない非日常的空間があの白い部屋の記憶を呼び戻す。


もしかしたら意図的にここに来たのかもしれない。自分の意思とは関係なく


「とにかく推測はやめよう」


寝て起きれば朝が来るだろう。明るくなったらまた活動すればいい


ベットに体を預けわたしは横になった。


横になると目線の先には小さなテーブルが月明かりに照らされていた


さっきまで新月のように暗かったのに、雲で月が隠れていたのかもしれない。


「ん?」


テーブルの上に何かあるのに気付いた


箱のようなものに中に無数に注射器があった。


「なんで注射器なんか…」


そう頭で考えていると右腕は注射器を手に取り左腕にその中身を注入していた


やめろと頭から命令が右手に届いた時にはもう中の液体は空になっていた


全く分からない…ただ脳で考えるより先に肉体が行動した感じがした


不明な液体を体内に取り込んでしまったが、傷もすぐ治るこの体だから平気と言い聞かせ


ベットに体を預けた。



 「体が熱い…」


呼吸も荒くなり、心音もうるさいくらいに大きくなっていった


あのわからない液体のせいなのか…血管の中を針が通っているように全身が痛み出した


わたしは白いベットで痛みに耐えうずくまっていた


真っ白なシーツを見ていると頭が痛み出しこう繰り返す《白はイヤダ》と


その頭の中の考えと肉体が共鳴し動きだした。


『ダッタラ…ソメレバイイ…紅ニ』


頭の中で行動を命令するより先に体が動き意識が体に追いついた時にはあの公園にいた


目の前には絶命した男の死体


それを片手でつかみあげて体は走り出した


そして白いベットの上で死体を分解した。


多少血が出たが死後かなりの時間がたっているので満足に染めることができなかった


頭の中はそのことに対してのいら立ちが募っていった


白いベットがあの閉鎖的白い部屋を思い出させるのであろう


抑えきれない衝動が肉体を動かしていた。


わたしはヒトという存在を求めさまよった


がむしゃらに探したが、この時間に外で行動するものはいないようだ…


「建物の中なら…」


と頭が考える前に肉体は建物内に侵入していた。


そこには老婆が気持ちよく寝息を立てていた


断片的に見える風景、わたしの意識は半分飛んでいる気がする。


両手は老婆の首を絞める


老婆は声にならない声をだしもがき苦しんでいたがやがて動かなくなった


もうわたしの中には罪悪感というものが存在しなくなっていた


老婆の死体を引きずり運んだ。


部屋に戻ると老婆の首を飛ばしたがまた満足できる量は出なかった


「やはり生きたまま連れてこなくては…」そう感じた


ヒトがたくさんいる建物を手当たり次第侵入した


そして生きたままわたしの部屋に連れ込んだ。


足首をつかんで夜の闇を引きずりながら走り抜けた。


途中縁石や電柱などに顔面を強打して死んでしまうヒトもいたがほとんどが気絶の状態で運ばれた


アスファルトの上を引きずったせいで顔は原型をとどめずかろうじてシルエットでヒトと認識できる状態であった


わたしにとってそれはどうでもよいことなのだから…



 だんだんと部屋の中にヒトが増えていったその数は十数体いや三十弱だろうか


それくらい集まりだしたところで行動も次の段階に進んでいた


一体ずつ丁寧に両手をつぶした…骨も一緒につぶすので異様な音がした


その痛みでヒトは意識とは無関係に動き回るがすぐに頭を飛ばした


両手と首から美しいほどの鮮血が部屋を染めていった


ヒトというのは頭を飛ばされても数秒動くらしい


頭を飛ばされて首なしの状態で数歩歩いて倒れる。


そのあと胸に手を入れると心臓はまだ動いている


その心臓を抜き取り壁に向かって投げつけた


心臓は鈍い音とともに血液をまき散らした。まるで水風船が割れたかのように血を吐きだしていた。


すべてのヒトを殺すころには足元は血の海のようだった


足首まで血に浸かって温かかった


ひとつの性行動を終えたように疲れ果てベットに崩れ落ちた


その快感は何とも言えない余韻を残していた


自らの胸を穿つようにその心は痛みというものを忘れ、ただ命を奪うということで安らぎをもたらしているように感じた


散りゆく魂を糧に自身の成長を感じられた


空に浮かぶ月も真っ赤に染まっていた


「紅の月…」


「きれいだ」



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