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―IF―シリーズ

アストライア学園の学年末テスト

作者: ウラン

 さあ学生の諸君、3月といえば何だ?

 卒業式? 終業式? 春休み?

 はっはー! その前にアレがあるだろ、アレが、アレが。大事なことなので3回言った。

 学年が変わる寸前に行われる究極の地獄、


    学年末テスト、である。





 というわけで、私ことラグナの家で学年末テスト対策の勉強会が開かれた。

 理由? それはアレだ、テスト前の勉強会は学園物のお決まりみたいなものなのだ。

 学園物だから勉強会をやる、それ以外の理由などしらない。

 とにかく、勉強会である。

 メンバーは私にクラスメイトの霧川、文芸部のエレーナ、それから転校生のセルシアというおなじみメンバーだ。

 ……え? 知らないのがいる? そうかな?

 とにかく、おなじみメンバーである。





「……あのさ」

 霧川が私に話しかけてきた。マイルームインター5分後のことである。

「ラグナのお母さん、ネコミミつけてたよね?」

「……それが?」

「え、あ、いや、別に……」

 あれは母のデフォである。それに理由を求めるのは野暮というものだ。

「あ、あのー」

「ん? どうしたの、エレーナ?」

「やっぱり、皆の得意教科とかは知っていた方がいいと思うんです。教え合ったりする時とか、わかってたらやり易いですし」

 まぁ、一理あるかな。

「……霧川、前回のテストの点数は?」

「また唐突だね」

 脈絡はあったはずだ。うん、ノープレ。あ、ノープレっていうのは、ロールプレイングの仲間とかじゃなくて、ノープログレムの略ね。NO,plobrem.

「いいけどさ。確か……、

 古典88点、現代文82点、数学Ⅰ71点、数学A77点、英語Ⅰ91点、オーラル89点、化学76点、生物78点、世界史86点、現代社会83点、保健98点、家庭科94、だよ」

「平均80くらいで、文系よりですか。凄いですね」

 まぁ、それなりに優秀かな。

「……保健が一番高い」

「え、あ、うん、そうだね」

「………………」

「………………」

「………………」

「……あのさ、沈黙はやめてよ」

「え、えっと。――霧川さんのエッチ」

「そこでエレーナ!? な、何か胸を抉るものが……」

 はっ! ざまぁ。

「……まぁ、霧川の何のおもしろみもないテストはどうでもいいとして」

「そんなっ!?」

「……エレーナは?」

「わ、わたしは、

 古典92点、現代文97点、数学Ⅰ52点、数学A61点、英語Ⅰ72点、オーラル76点、化学66点、生物68点、世界史73点、現代社会78点、保健70点、家庭科96点、です」

「平均は70前後、文系で、国語がいいけどで数学は悪いね。ちょっと偏りすぎかな?」

「うぅっ、数学はニガテです」

 現代文凄いな。流石に一日の読書(BL)量が10時間というだけある。

 つーか、それはもう徹夜してね?





「次はラグナの番だね」

「あ、わたし、さっきから気になっていたんです」

「……別に、普通だけど」

「いいから、早く教えてよ」

「お願いします」

 ま、いいんだけどさ。

「……古典40点、現代文40点、数学Ⅰ100点、数学A99点、英語Ⅰ40点、オーラル40点、化学40点、生物40点、世界史13点、現代社会21点、保健40点、家庭科40点」

「……何か、ラグナが天才に見えるんだけど」

「わ、わたしも、です」

 そんなに褒めるなよ、照れるじゃんか。

「もはや、狙ってやっているようにしか見えないな」

 セルシアのアストラ学園始めてのセリフがこれ。

 つーかさ、いい加減社会に突っ込んでくれないかな? いたたまれないんだけど。主に私が。ほとんど私が。100パー私が!

「そういえば、セルシアって最近転校してきたからテストは受けてないんだっけ」

「ああ。前の学校では受けたが、なにせ問題が違うし、大して参考にはならないと思う」

「あれ、ラグナ、どうしたの? 窓の外を憂いに満ちている雰囲気を出しながら見上げたりして」

「……別に」

 そういや、突っ込みって私だけでしたね、ええ。

 どうせボケ専にはわからないでしょうよ、たまにボケてみても見向きもされない者のことなんて、どうせ、どうせ、どうせ。

「……私のことなんてどうでもいいから、セシリアの質問を続けて」

「え、あ、うん、わかった」

「ちょっと待て! なに人の名前ナチュラルに間違えて、かつそのまま見向きもせずに進めようとしてんの!」

 ボケ専に突っ込み入れられる筋合いなんかねーよ!

「……うるさい、セシリー」

「おいコラてめぇ!」

 二人称変わってるし。キャラクター登録所に設定されてるっつーのに。

「まぁまぁ、落ち着きなよ、セシー」

「霧川! 裏切ったな!」

「そう言えば、セシィさんって文系ですか? それとも理系?」

「……エレーナ、お前もか…………」

 てか、エレーナ空気読んでないし。





「ワタシはどっちかというと理系だな。数学と理系科目は得意だ。まあ、数学はラグナほどではないが」

 とは、ようやく落ち着いたセッシィの談だ。

「となると、エレーナが国語担当、ラグナが数学担当、僕が英語担当、セッシィが理科担当、ってとこが妥当かな」

「ワタシの名前は…………はぁ、いいや、もう」

 何かを諦めた『…………はぁ、いいや、もう』だった。

「いやそれが名前じゃねーから!」

 地の文にまで突っ込み入れたらキリないんですけど。





 急に章替えが早くなったな。いや、どーでもいいけど。

 というわけで(異論は認めない)、いい加減勉強会が始まったのさ。

 さ、勉強するぞ!


 ~5分後~


 あきたぁー!

 そういや、テスト勉強なんてしたの始めてだな。数学は授業を適当に聞いてればわかるし。

 …………よし、先程むっつり疑惑の出た霧川で暇つぶしでもするか。

「……霧川、ここ教えて」

「え? ああ、いいよ。具体的にどこら辺?」

「……このページ全部」

「まったく、いい、ちゃんと聞いててよ。

 まず受精についてだけど、射精一度あたりの精液が含む精子数は通常1億~4億程なんだけど、このうち、腟内に射精された場合、子宮頸部に到達する前に約99%が死滅、子宮まで到達できるのはおよそ数千~数十万、排卵期に卵子の目前まで到達できるのはおよそ数十~数百なんだ。また、膣から受精の場である卵管まではおよそ数十分~数時間で到達すると考えられているよ。ただし、数分で到達したという例も確認されているね」

「おいそこ、何の話をしている!」

「ん? 何、セイシ?」

 プチッ、と何かが切れた音がしたような気がした。

「いつか言うと思ってたよ、きぃりぃかぁわぁ~~~~~~~!!!!」





 霧川は死んだ。

 さ、私も真面目に勉強するか。

 とりあえず、前に点数の悪かった世界史から。

 何々? 

 1402年、アンゴラの戦い。1405年、南海遠征。1414年、コンスタンツ会議。1419年、フス戦争。1453年、オスマン・トルコが東ローマ帝国を滅ぼす。1455年、ばら戦争。1480年、モスクワ大公国独立。1488年、バーソロミュー=ディアスが喜望峰発見。1492年、コロンブスが新大陸発見。1498年、バスコ=ガ=ダマがインド航路を発見。1506年、イタリあぁぁぁー!

「ラグナ、教科書が破けているけど大丈夫?」

「…………うン、ダいじョうブ」

「だめみたいですね……」

「おいおい、大丈夫か?」

 セルシムは私が精神異常であるか否か問いただしてきやがった。

「それはもうワタシとは別の誰かだ。そして、ワタシが何か悪いことをしたような言い方はやめろ」

 読唇キャラにジョブチェンジしたヘルヒムだった。

「だから誰だか――」





 秘儀、章替えリセット。

 メドレーっぽくなりそうだったからとばしたぜ。

「ちょっと問題出してみるぞ」

 さぁこいや!

 若干テンションが崩壊気味の私。

 そこ、いつもだとか言わない。

「リンカーンの政治に関する名言『()の()による()のための政治』。さて、()に入る共通する単語は?」

 ふっ、そんな小学生レベルの問題など、朝飯前さ!

「……『私の私による私のための政治』」

「リンカーンはそんなに理不尽じゃねーよ!」

 怒られてしまった。

「おいおい、今のは世界史と現代社会の共通問題だぞ。それくらい覚えておけ」

 そして注意されてしまった。





 章がどんどん短くなる。そろそろネタ切れかな?

「どうしてエレーナは数学が苦手なんだ?」

「公式を覚えはしているのですが、どうしても抜けている部分が出てきてしまいまして……」

 うぅ、と唸るエレーナ。

 まぁ、有り勝ちなことだけど。

「……教科書に公式の出し方が乗っているはず。そちらなら、おおまかな流れさえ覚えておけば公式が出る」

「成程、そうやって覚えるんですね!」

 さすが理系の言うことは違いますね、とエレーナ。

「公式を使う問題を、ある程度繰り返せば簡単に覚えられるんだけど……」

 セリシールの発言は、誰にも聞こえなかったようだ。

「もう一字もあってないし。っていうか、聞こえてんじゃん」

 ……読唇少女か、厄介な。

 こうなれば、饒舌四天王に任せる他あるまい――、

「いや、バトル漫画っぽくしてどうすんのさ」

 特に何も。

「そりゃそうだが」

「あ、すいません。この問題はどうやって解けばいいのですか?」

 判別式の問題だった。どうやってって、そりゃー、

「……普通に」

 としか答えられなかった。

「いや、その、もっと具体的に」

「しかしエレーナ、その問題は公式を当てはめるだけだと思うのだが」

「どういう風にですか?」

「普通に」

「セリシールさんまで……」

 文系と理系の、超えられない壁がそこにはあった。

「エレーナも読唇スキルがっ!」





『ただいま~』

『お帰りなさい、レー君』

『ああ、ただいま、母さん』

『んもぉー、遅いじゃないですかぁ~』

『え? まだ7時――』

『あらあら、女の匂いがするわね。まさか、他の女と肌を合わせたりしてないよね?』

『そ、そんなことはないさ。強いて言うとしても、女性社員にお茶を貰った時に指が微かに触れた程度しか――』

『な、何てことなの……。クソッ、薄汚い雌豚が! 私の私の私だけのレー君の指にあまつさえ、ふ、ふ、触れる、だなんて! 後で(ピー)して(ピピー)してそのピピピーッして


   ~チャンネルをそのままにしてお待ちください~


で(ピピィー)にしてやるわ、うふふふふ。さ、レー君。私達の部屋に行きましょう』

『いやその、何で手錠がしてあるのでしょうか?』

『うふふふふふ。足にも欲しかった?』

『いやいやいや! そんなことは――って、了承を得る前にもうつけてるし!』

『行こっか★』

『心なしか、星が黒いっ!』


「………………」

「………………」

「……なあ、あれってラグナの両親だよな?」

 ええ、まぁ、一応。

「あんなこと言ってるけど」

「……それが何か?」

 別に、普段どうりだと思うけど。

「でも……いや、やめとく。何か、文系と理系以上の壮絶な認識の壁がありそうだから」

 ? 変なソリムート。

「もはや一字もあってない!?」





 試験は終わった。

 ふはは、これぞご都合主義! よくやった作者! 褒めてつかわす!

 と思っていたのがほんの10分前の話。

 今、私の眼下には返却されたテストが……。

 チッ、あのクソビッチが! こちらも纏めてとばせばいいものを……。

 え? とばしてくれる? マジで!? ラッキー! あんた、いい死に方するよ!

 縁起でもない? またまたー、照れちゃって。

 つーわけで、それもとばして数日後。

「ラグナ、テストどうだった?」

 そうくるのかっ!



10



 成績発表は後回しにします。

 だって、ねぇ? 心の準備くらいはさせてくれったっていいじゃん、ねぇ?

 そういうわけで、私はなつかしき校舎徘徊を決行中。

 すると、何やら張り出されているのが見えた。

 どうやら、今年の卒業生で有名大学に行った人の名前が貼り出されているらしい。

 ま、でも、私に3年の知り合いなんていないし、関係ないか。

 ふと、一番大きくて大々的に張っている、目立った奴が目に入る。

『ハーバード大学、合格  スキンク♂』

 ……本当に何者だ、あの人?



11



「……点数発表。いえー、パチパチ(棒読み)」

 というわけで、開始っす。

「……それじゃあ、まずヘリート」

「もう誰だかわかんないぞ、それ」

 ボケは後にして、どうぞ。

「ボケじゃないんだけど……ま、いっか、どうでも

 古典72点、現代文70点、数学Ⅰ92点、数学A89点、英語Ⅰ81点、オーラル76点、化学96点、生物82点、世界史71点、現代社会73点、保健80点、家庭科79点、だ」

「平均80くらい、理系、ですか。……霧川さん並の点数ですね、凄いです」

 普通に優秀だった。

 つーか、突っ込みがいがない。こやつ、霧川と同類だったとは……。

「次はエレーナ――」

「ワタシの番これだけ!?」

 デジャブがする。

「えぇっとですね……」

「エレーナも普通に進めるし!」

 ここは、面白くないと生き残れぬ無情の世界……。

「古典94点、現代文96点、数学Ⅰ37点、数学A41点、英語Ⅰ74点、オーラル77点、化学68点、生物72点、世界史73点、現代社会77点、保健75点、家庭科95点、です」

「数学がむしろ下がってる!? 数学Ⅰなんて赤点だし……」

「いえ、その、ラグナちゃんの言うとうりにやったのですが、公式を出すのに10分くらいかかってしまって、結局時間が足りずに……」

「……10秒くらいで出せない?」

「ム、ムリムリ! ムリですって!」

 壁は想像以上に分厚かった。



12



「次はラグナの番だな」

 セルシアがニヤニヤしながらそう言った。

「名前考えるのめんどくさくなったな?」

 ええ、そうですけど何か?

「開き直りって便利だな……」

「そんなことより、早く早く」

 エレーナがセルシアの名前問題をそんなこと呼ばわりした。彼女、たそがれてるんですけど。

 ま、どうでもいいけど。

 ……あ、マイナスオーラが増した。そういや、読唇少女だったっけ。

 それでも無視するけど。

「……古典40点、現代文40点、数学Ⅰ100点、数学A100語Ⅰ40点、オーラル40点、化学94生物40点、世界史8、現代社会9、保健40点、家庭科40点」

「満点二つもあるじゃないですか! それに化学がかなり上がっています!」

「ワタシが理系なら化学だけは取っておけと言って、丁寧に教えてやったからな」

 ぐぉぉ、何故社会に突っ込んでくれない。いっそなじられた方が気が楽なのに。

「ラグナちゃん、凄いです!」

 合計が三人の中でダントツに低いことに気付いて、頼むから!

「まぁ、ラグナは頑張ったよ」

 何この空気! いたたまれない……。

『ラグちゃーん、夕飯ができたわよー。お友達も食べて行くー?』

 な、ここでエピローグフラグだと!

「いえ、わたし達はもう帰りますので」

『遠慮しなくていいのよー、もう人数分作っちゃったしー』

「お、ではお言葉に甘えて」

 おいコラ! ちょっと待て! あ、あれ、や、ちょっと、まだ――――



13



「校長先生の、相談コーナー!」

「急に勝手に唐突に脈絡なく始まったこのコーナー、ペンネームK・Kさんからの相談です」

「それはペンネームではなくイニシャルだ。気をつけるように」

『勝手に死んだことにされて、普通にちゃんといるのに意図的に描写が省かれました。どうすればよろしいでしょうか?』

「一人称は理不尽だかならの。うーん……どうしようもないな。まぁ、ガンバッ!」

「以上、校長先生の相談コーナーでした」

「次の相談、待ってるぞ!」

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