視力1.5の筆者、眼鏡デビューしました!
視力1.5。眼鏡とは無縁の人生を送ってきた。
しかし近年、眩しさに拍車がかかり、外では常にサングラスをかけていた。店内の照明も眩しい。
そんな折、湯兎さんの「視覚の感覚過敏」について書かれたエッセイを読んで、私は調光レンズの眼鏡を作ってみようと思い立った。
眩しさを少しでも軽減できるなら、試してみる価値はある。
そうして眼鏡店を訪れ、視力検査を受けたところ、思いがけない事実が発覚した。
「ちょっとだけ遠視と乱視がありますね」
「はい?」
どうやら、私は遠視と乱視を持っていたらしい。
検査をしてくれたお姉さんに詳しく話を聞くと、遠視は、ピントを合わせるために目が常に頑張らなければならない状態。乱視は、ものの像がブレて見える状態らしい。
「レンズに度を入れます?夕方の眼精疲労が楽になると思いますよ」
「じゃあ、お願いします」
試験用の眼鏡フレームをかけてみる。
「乱視用のレンズは視界が四重に見えます」
「では、今回は遠視だけのレンズにしましょう。右が0.5、左が0.25で入れるので試しにかけてみてください」
乱視用のレンズを抜いて再装着。
「……おお、くっきりとは見えないけど、なんか見やすい」
「良さそうですね。ではこれで作りますね。今調光レンズの在庫が無いので、10日後に受け取りに来てくださいね」
「……は、はい(遠いな!?)」
こうして私は、10日後、人生初の度入り調光レンズ眼鏡を手に入れた。
店頭で早速、眼鏡をかけてみる。
その瞬間、視界が平面化した。
3D画面から2D画面になったような感覚。目の前の景色が、少し遠くに引いたようにも感じる。
例えるなら、4K映像を常に見続けていた視界が、眼鏡越しだとブラウン管テレビくらいの画質になった。
いや、画質が落ちたというより、余計な力を抜いて見られるようになった、というべきか。
高解像度の視界を常に見ていれば、それを受け取る目も、処理する脳みそも疲れる。
おお、目が楽だ。
少し視界が歪むのは気になるものの、頭が一キロ軽くなったのではないかと思うほど、軽快さを感じる。
これは、長年の首こり肩こりも良くなるのでは?
そう期待しながら、るんるん気分で帰宅した。
調光レンズの実力は、あいにくの雨天であまり確認できなかった。けれど、度入りレンズの効果は、店を出る前からしっかり実感できた。
三日後、ようやく晴れた。
我が家の三歳児を保育園バスに送り届けるため、朝日が燦々と差し込む野外へ繰り出す。
まず、レンズが反応してスゥッと暗くなる。眩しくない。ちらっと眼鏡を外してみると、結構濃いめに暗くなっていた。これは期待できそうだ。
しかし、朝日の直射日光が当たるバス停に出ると、状況は一変した。
視界は暗いのに、めちゃくちゃ眩しい。
どうやら、斜め上から入ってくる朝日の光線が、目に直撃しているようだった。瞳孔が開いているところに直射日光。
そりゃ眩しい。
次の日から、帽子と眼鏡はセットになった。
五日後。
眼鏡をかけ続けているせいか、元々あった肩こりが尋常じゃなく痛み始める。
眼鏡を外すとスッと痛みが引くので、食事中などは外すようにして、様子を見ることにした。
かけ始めて一週間。
視界の歪みはほぼ無くなり、裸眼でも眼鏡をかけていても、あまり変わらない視界を確保できるようになった。
一方で、子どもに顔面をすり寄せられて眼鏡が鼻にめり込み、着替えれば眼鏡が吹っ飛び、温かいミルクティーを飲もうとすれば湯気で視界が真っ白になる。
眼鏡のある生活、思っていたよりイベントが多い。
ちなみに、眼鏡をかけ続けても肩が痛まなくなった。ただ、期待していた長年の首こり肩こりは、そこまで変わらなかった。
そして、思わぬ変化があった。
今まで私は、目の「しょもしょも感」を、疲労を測る指標にしていた。
目がしょもしょもしてきた。そろそろ疲れているな。そんなふうに、体全体の疲れ具合を判断していたのだ。
ところが、眼鏡をかけ始めてから、その「しょもしょも感」がぱったり消えた。
もちろん嬉しい。眼鏡を作った甲斐はあった。
ただ、疲労を教えてくれていたセンサーが一つ消えたような感じもする。
目が疲れないからといって、体まで疲れていないとは限らない。
今の私は、自分の疲労具合をうまく把握できていない。この新しい「疲れの感じ方」には、もう少し慣れる必要がありそうだ。
そんなある日、職場の健康診断があった。
眼鏡をかけた状態で視力を測ったところ、結果は1.5。うむ、かなり馴染んできたらしい。
ただ、ランドルト環は、意識してピントを合わせにいかないと見えなかった。今まで私は、これを無意識のうちに、目に入るすべての景色に対してやっていたのか。
そりゃ疲れる。
そういえば、直射日光は別として、眩しさがだいぶマイルドになった。
というか、眩しさの一部は、眼精疲労から来ていた可能性もある。
眩しさを自覚したのは中学生の頃。遠視が生まれつきのものだとしたら、その頃から、目のピント調節には人知れず負担がかかっていたのかもしれない。
視力が良いからといって、目が楽に働いているとは限らない。
今、視力に困っていなくても、眼精疲労が気になる人は、一度気軽に検査を受けてみてほしい。
私の周りに遠視で眼鏡をかけている人はいない。
でも、私自身がそうだったように、視力が良いことを理由に、目の疲れを見過ごしている人は案外いるのかもしれない。
眼鏡をかけたことで、「外す」という動作を手に入れた。
ここぞという時に眼鏡をスチャッと取り、覚醒ごっこができるようになったのは、とても大きな収穫であろう。
みんなが困っている!そこへ白鐘登場!
眼鏡、スチャッ!
「私に任せておけ」
うん。超カッコいい。




