Episode 27「本日のメニューは“蒸しじゃがのぬくもりスープ”――“名前がない怪獣”と、出禁ヒロインたちの報せ」
今日のグルモスは、珍しく朝から芋を蒸している。
鍋から立ちのぼる湯気は、どこか“懐かしい実家のにおい”。
グルモス:「……今日は“名前のないやつ”が来る気がする」
【本日の定食】
蒸しじゃがのぬくもりスープ 〜皮ごととろとろ銀根とハーブ塩〜
芋の旨みと甘さをそのまま活かし、皮ごと優しく蒸し上げる
銀河ハーブ塩でシンプルに味を整え、素のままで癒すスープ
トッピングは星玉子の白身クラッシュ、舌触りまで優しい一杯
ドアが開く。
入ってきたのは、つぎはぎの甲殻、つぶれた目、震える足の無名怪獣。
そしてもう一人、
艶やかな黒髪を束ね、白と紫の和装ぴちスーツに身を包んだウルトラヒロイン――カグヤ。
カグヤ:「久しゅうございます、料理人殿。
本日は、少しばかりの“使い”としてまいりました」
まずは怪獣にスープを出すグルモス。
名前を問わず、ただ「腹は減ってるか」とだけ聞く。
怪獣、うなずく。
一口。二口。
……ぶるぶると震えながら、何度も頷く。
グルモス:「お前の名前が決まる日まで、その腹だけは忘れさせてやらねぇ」
カグヤは静かに、お弁当箱のような木箱を差し出す。
中には――
アカリ特製のプリン、シルフィーナのスパイス瓶、セレナ直筆の謝罪メモ。
カグヤ:「三人とも、あなたの出禁を真剣に受け止め、反省しております。
……けれど、まだ顔を出すには少し、勇気が足りないようで」
グルモス:「……言い訳しに来たわけじゃねえんだな」
カグヤ:「はい。
それと……彼女たちは、いまでも“今日のグルモス亭は何かな”と話しておりますのよ」
店内、怪獣たちのボソボソ声。
スビョーン:「……ヒロイン出禁って言われてんのに、ちゃんと報せ持って来るって…地味に泣ける」
ピヨヨヨ:「てかカグヤさん、和装なのにスーツって何なの…でもなんか…ありがてぇ…」
ゴローニャ:「今日のスープで“名前がないやつ”まで泣いてるし…この店なんなん…」
帰り際、カグヤが微笑んで言う。
「もしよろしければ、彼女たちが“来る日”に、
少しだけ甘めのオムライスを……ご用意いただければと」
グルモス:「……出禁解くのは俺だ。
でも、鍋を持って立てるなら、もう一回くらい“出す”ことは考えてやってもいい」
カグヤ:「それで十分ですわ」
カグヤが木箱を差し出したあと、そっと店の隅に座ろうとすると――
グルモス:「おい」
カグヤ:「……もしや、私も出禁の対象に?」
グルモス:「バカ言え。あんたは“その場にいなかった”。だから関係ねぇ。
飯、食ってけ。今日のスープは“帰る場所がない奴”にも優しい味だ」
カグヤ、静かに微笑む。
「では……ありがたく、“いただきます”」
【店内・ボソボソ】
ピヨヨヨ:「あの人だけ“出禁じゃない”って明言されたぞ……うらやま」
スビョーン:「ヒロインって言っても、一枚岩じゃないのな」
ゴローニャ:「それでも“あの圧”で食べてんの、なんかありがてぇな…」
こうして、“出禁ではないヒロイン”=カグヤが
唯一堂々とグルモスの料理を味わったヒロインとして確立される。




