表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/50

Episode 14「旅人の手紙と、鍋ひとつのスパイスチャイ」



流れ着いたのは、ほとんど誰も使わなくなった宇宙貨物路の休憩所。

古びたキッチンカウンターと、もう動かない通信端末。

壁の掲示板には、かつての旅人たちの「置き手紙」がぎっしり。


グルモスはその中の一枚に、ふと手を伸ばす。


「ごめんな、あの時あんたに“ありがとう”って言えなかった」

「この香り、あんたが好きだって言ってたろ。次に会えたら、一緒に飲もうな」

――T.ユリィ より

封筒の中には、乾いたチャイスパイスの小瓶が入っていた。

甘くて、少しだけ辛くて、ほんのり柑橘系の香り。


グルモス:「飲ませてやれなかったのか……」


彼は、ぼろぼろの台を拭き、古い鍋をひとつだけ使って湯を沸かす。


【鍋ひとつのスパイスチャイ】

ミルクは自前の乾燥粉乳を使用

スパイスは瓶の中身そのままに、順番だけ変えて温める

ほんの一滴だけ、ポケットに残っていた“甘草蜜”を最後に垂らす

香りが立った瞬間――

誰もいない休憩所の空気が、じんわりと色を変える。


まるで、“そこに誰かがいるような気配”。


誰かが、今、隣で笑っているような。

誰かが、「うまいな、これ」と言っているような。


それはたった一杯の飲み物なのに、

心のどこかを、そっと撫でてくる味だった。


飲み終えたあと、グルモスは小さく呟く。


「そっちでも、温かいの飲んでりゃいいな」


彼は掲示板に一枚、手紙を残して去っていく。


「チャイ、作ったぞ。ちょっと甘かったけど――お前の香り、悪くなかった」

――Gより

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ