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2-2

「それ、あたしの•••」


今度は希望の番だ。


「あっ、あったのね。

それと、大佐古さん。

わかってる。

なにも言わなくてもいいわ。

ちょっと、ちょっとだけ魔が差したのね。

みんなぁ、なにもなかった。

なにもなかったからね。

失くした財布は大佐古さんがひろっておいてくれました。

絶対に盗んだりとかしてないから。

忘れてあげて。

大佐古さんはお金を盗む人なんかじゃないから」


これじゃ、まるで柚葉が窃盗を行ったと言ってるようなものではないのか?

逆説的な言い方をして巧妙だ。


柚葉は無言でいる。

こういった時になにか発すると揚げ足をとられる。

それに1対多数ではあまりにも不利だ。


教室のドアが開いた。

次の授業が始まる。

柚葉にとっては良いタイミングだ。

ただ、この感情はどう表現すればよいのだろう?

怒りとか怯えとか哀しさとかいろんなものが入り混じってグチャグチャになっているかのようだ。


この日は家までどうやって帰ったのか、ぼんやりとしか覚えてない。

でも家の中に入るといつも通りに振る舞っていた。

親に心配をかけないためではあるが柚葉自身の内面ではそうとうな無理があった。


夕食を終えて自分の部屋に入った。

机の前に立った。

とにかく椅子に座った。

なにをするのでもなくただ座っているだけ。

どれだけ時間が経ったのかもわからない。

よくここまで心がもった。

親になり友人なりに相談できれば、なにか口に出して現状のおかしなことを誰かに訴えることができたなら。

せめて独りででも泣くことができたなら、そういったことができなくなるほど追い込まれてしまっているのは精神的に崩壊するカウントダウンの始まりだ。


翌日からの柚葉はクラス内でさらに孤立することになった。

昼も独りだ。

手段が変わった。

これまでよりも徹底的に無視してその存在を空気と同じ扱いにする。

これは地味ではあるがいじめの中でも最上位になるほどの大ダメージがある。

例えば暴力的で屈強な大男であっても直接的な暴力よりも百倍も千倍もこたえるはずだ。

肉体よりも心に対しての攻撃、すべての存在を認めないということのほうが人間のような思考できる生きものにはずっとこたえるはずである。

それにプラスして不特定な誹謗中傷が加わればなおさらだ。


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