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三治頼朝の取り調べで担当検事が突如はずされた。
おそらく圧力をかけている者の意に沿わないからだ。
だから若手のおとなしそうな検事に交代になっている。
裁判官に対してもそうとうなプレッシャーがあったと思われる。
それでも罪は罪、罰は罰ということにはなってしまう。
だから最低限の3年半という実刑にはしている。
控訴もせずにスピード裁判となったのは一刻も早くけりをつけたかったからだろう。
一部のマスコミが余計な報道をしたために、また財務省での事件と騒がれるのを嫌がってのことに違いない。
この財務省の現役官僚の飲酒事件でまた緑川ファイルのことを持ち出すマスコミが現れた。
緑川ファイルというのは緑川育海という財務省の職員が残したファイルのことだ。
内容は財務省内で極秘に動かされていた悪意ある数字が記されているとある。
今だに公にはされてない。
このファイルを残したとされる緑川育海はすでに亡くなっている。
2年ほど前に進行性のスキルス胃癌で51歳で亡くなっている。
胃癌の中でも早期発見が困難で増殖浸潤が早いため治療が著しく難しい。
緑川育海の死亡には事件性はない。
最近になって緑川ファイルの一部が突如としてネットで拡散されはじめた。
これを三治頼朝の事件と関連づけようとするマスコミが現れている。
三治頼朝が緑川ファイルを隠し持っているんじゃないかという推測だ。
だから財務省が圧力をかけて三治頼朝の軽減をはかったのではないかとまで報道している。
マスコミといっても大手ではない。
長政は参考にと宮前悠生から渡された資料に目を通している。
目黒の自室に戻ってからだ。
時間をかけて丁寧に読んでいった。
コーヒー片手に21ページを1時間以上かけて読み終えた。
これまでの経緯がだいたいわかった。
長政も知らなくて、報道もされてなかったことも書かれていた。
まず三治頼朝が飲酒による事故を起こした。
その三治頼朝に対して「呪い」の依頼がきた。
それに重なって総元締めからも同一人物に対しての緊急の依頼が飛び込んできた。
三治頼朝はとんでもない大事故を起こしてしまったため有罪判決は免れない。
それに対して財務省関係かもしれないなんらかの力が働いた。