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しばらくして無視も並行して始まった。
柚葉自身はいじめの対象となってしまう原因がわからなかった。
1年生の時にはいじめられてる生徒とかいじめがあるとかを耳にしたことがない。
親しい友人がいなくてクラブ活動もしていないので、ひょっとして自分だけが知らなかった?
そんなことを思うこともあった。
夏休みに入るとホッとした。
学校に行かなくていいからだ。
嫌なことは忘れて夏を楽しもうと思っていた。
柚葉のクラスでは生徒同士でラインで繋がってる者が多い。
夏休みの間中、そのラインでは柚葉に対しての誹謗中傷の文字が随時配信されていた。
夏休みが明けて新学期初日。
柚葉は自分の席に座った。
外窓側の前から2番目の席だ。
机の中にB5サイズのコピー用紙が1枚入っていた。
自分に対してあることないことを書かれた誹謗中傷の文章だ。
ひどい。
涙が出てきそうになった。
でもここで泣いてしまったら負けたことになる。
用紙は捨てずに鞄に入れて家に持ち帰った。
この日から徹底的な無視と誹謗中傷のコピー用紙がいたるところで目につくようになった。
ここからが本格的ないじめとの孤立無援の闘いになった。
親にはなにも言ってない。
表向きはいつも通りだ。
心配はかけられない。
父親は家電メーカーに勤める普通のサラリーマンだ。
私立高校なら公立にくらべて授業料を含む年間費用が高い。
四谷大木戸女子高校への進学を希望したのは柚葉自身だ。
同じ年代の男子の荒っぽいところが苦手だったのと大学進学もしたかったからだ。
お金のことで、これから先も大変になるのがわかっているので親には言えないままでいる。
そして柚葉はひとりっ子なので他に話せる家族はいない。
学校に対しても相談しにくい。
クラス担任は男性教諭で50歳前後くらいだと思う。
女子校ということもあっていろいろ気を使っている雰囲気がある。
問題を起こしたくないのだろうか、生徒との向き合い方は消極的だ。
柚葉としても年齢や性別などでとっつきにくさを感じている。
それもあってか学校側に相談するのは気が重くなってしまう。
異常だと思える毎日。
それでも柚葉は耐えて1ヶ月ほどがすぎた。