4-5
長田が穴から出てきた。
矢波が運んできた消臭剤をサッと1本奪い取った。
穴の中の英房の遺体に振りかけていく。
遅れて矢波も同じように消臭剤を散布していく。
4本目も矢波が使い切った。
「よし、終わった。
あとは土をかけるだけ」
2分もあれば終わってしまう。
消臭剤の量としてはなんとも心もとないとは思うがこれでいくしかない。
もう2、3本買っとけばよかったかと長田は思っていた。
計画性はあるんだが詰めの部分は中学生らしい。
長田と矢波はシャベルを手に取って穴の中に土を落としていく。
土は山積みになってたが怪しまれたりすることはなかったはず。
人が訪ねてくることもない家だ。
ザックザックと音がしてしまうのは仕方ない。
音を出さずにやれないこともないが時間がかかってしまう。
すでに炎天下の中では短時間で終わらせたかった。
そうしないと熱中症で倒れてしまう。
急いでの作業だったので5分ほどで終了した。
見た感じでは、まさか穴を埋めたといった様な違和感はない。
これでほっといてもさらに馴染んでくるだろう。
「汗がたまらんな。
シャワーを浴びてスッキリしようぜ」
やっと終わったかとハァっと息を吐く塚本。
その表情は大きな仕事を終わらせたと晴れ晴れとしている。
3人は居間から家の中に戻った。
「長田、先にシャワーに行けよ。
おまえ、泥だらけだぞ。
着てるものについてる土も洗い流せ」
土がついたままじゃ家に帰れない。
なんで土がついてると家族に怪しまれる。
怪しまれる要素はひとつひとつ消していかなければならない。
そして衣類ごと洗ってもこの暑さだとすぐに乾く。
あっ、それでも外に出ればまた汗びっしょりかと塚本は少しばかり嫌な顔になった。
塚本はこの頃からちょっと小太り気味で夏の暑さが苦手だった。