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塚本はそっと窓を開けた。
居間から外に出られるように180センチはある大型の窓だ。
出るとすぐ小さいながらも庭になる。
そこにブルーシートが敷かれている。
長田の家にあったものを持ってきている。
塚本が庭に降りた。
ブルーシートが風に飛ばされたりしないように自転車やら梯子を置いていた。
梯子はこの家にあった古い木製のものだ。
それらをどかしてブルーシートを取り払うと穴がある。
この1週間で少しずつ掘っていた穴になる。
この日この時のためにいろいろ調べていたのを参考にして3メートル近くは掘っている。
塚本は周囲に異変はないかと伺った。
ここは慎重にだ。
そして大胆さも必要になる。
右手をサッと上げて矢波たちに合図を送った。
それを認めた2人は静かに急いで英房を外に担ぎ出す。
飲んだくれていてまともな食事もとってないので思ったよりも軽い。
中学生2人でも足と頭部を持ち上げて運べるほどガリガリの体だ。
3人は無言。
塚本が見張り役で長田と矢波が迅速に動いている。
打ち合わせ通りに進んでいる。
英房の遺体は頭を下にして穴の中に落とした。
土の上なのでたいした音はしない。
それよりも不細工な姿に折れ曲がってしまった。
仕方なく長田が古い梯子を使って穴の中に入っていった。
なるべく膝を抱えて丸まるようにとコンパクトな態勢にしようとしていた。
塚本は気が気じゃなかった。
細かいことなんてどうでもいいから早く穴を埋めたかった。
早く作業を終わらせないと近所の住人にバレてしまうかもしれないじゃないかと矢波に小声で訴える。
「なにやってんだ、早く」と再び催促する。
長田は落ちついて作業している。
ここをちゃんとやっておかないと後で困ることになると思っている。
この3人の中では最も慎重派だ。
「矢波、消臭剤は?」
穴の中からなるべく小声で長田が呼びかける。
取ってくると返事をして矢波は家の中に駆け込んだ。
外に置いておくわけにもいかないので台所にそれとなく並べておいた。
350ミリリットルの無香料の強力な消臭剤が4本。
たったこれだけで本当に大丈夫なんだろうかと一抹の不安はある。
果たして腐敗臭に効くのかと大いに疑問でもある。
ないよりはマシといった程度か?
それにプラスして地中3メートル以上なら臭いの心配は限りなく低くなるということも信じるしかない。
だって初めてのことだらけなんだから。