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長田の1日は、この部活動が終わってから帰宅。
独り暮らしなので夕食は外食ですませてしまうことが多い。
住んでいるのはワンルームマンション。
東武伊勢崎線梅島駅から歩いて7分ほどだ。
住所も足立区になる。
帰宅するのは午後7時を大きくすぎてからになる。
帰ったらすぐ入浴。
その間に洗濯機も回している。
午後9時をすぎてからやっとひと息ということになる。
それから仕事が待っている。
学校に残っての残業はしないようにとのお達しがあった。
だから家に持ち帰るしかない。
やることは多岐に渡る。
受けもってるクラスの授業の予習から担任であるクラスの運営、部活の練習スケジュールに学校行事の準備、さらに試験問題作りなどを寝るまでにこなさなければならない。
なんのことはない、これまで学校で残業していたことを自宅に持ち帰ってサービス残業に変えただけだ。
これが毎日のように午前になるまで続く。
とにかく毎日が時間に追われている。
労働時間にすると毎日14時間ほどではないだろうか?
日曜日などの休日。
授業はないが部活があるので学校に行かなければならない。
つまり年中無休状態で毎日のように学校に行ってることになる。
ほぼプライベートな時間はなくなる。
教師になることには憧れがあった。
しかしいざ教師になってみるとあまりにもやらなければならないことが多すぎて追われる毎日だ。
自分の許容範囲をはるかに超えての日常に、こんなはずではなかったと思い悩むことになってしまった。
理想とする教師像と現実とのギャップがあまりにもかけ離れすぎていた。
長田は31歳であるが体力的に限界にきていた。
さらに精神的には常に追われてる感もあってギリギリの状態でもあった。
表面的にはわかりにくく学校や行政としてのメンタルケアなどの支援はまったく行われないのが実情だ。
日々そんな状態であっては自分が保たないと思って1年ほど前よりなるべく週に1日くらいは教師である業務から極力離れるように努めている。
1日まるごとというのは厳しいものがある。
そこで土曜日の午後から、午前中の授業が終わってからは学校に関することにはいっさい手をつけないようにと決めた。
だから土曜日には部活は行わない。
生徒には自主練をするようにと伝えてある。
半分ほどの生徒は自主練をしているようだ。
残りの半分はなにか違うことをしているのだろう。
日曜日には部活がある。
午後1時からだ。
立場の弱い卓球部では体育館を使用する時間を限定されている。
実績もあり人数も多いバレーボール部やバスケット部のほうが優先される。
卓球部の生徒たちはこれをどう思ってるのかはわからない。
長田はこの時間帯で満足している。
土曜の午後から日曜の午前中までは自分のプライベートな時間を確保できるのだから。