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四
「享年17歳ですか•••」
ここは中央区。
地下鉄日比谷線八丁堀駅から徒歩数分のオフィスビル。
勝利は石塚法律事務所を訪れている。
親と弟には相談した。
弟の大地がこの石塚法律事務所を探してコンタクトをとってくれた。
父親の重雄も弁護士費用はすべて出すと言って一緒にやって来た。
弟の大地はそれほど大きくはないが飲み屋を経営している。
その店の常連客に何気なく尋ねたところ、いじめ問題に強い弁護士を知っているというのでこの石塚法律事務所にコンタクトをとってもらった。
その常連客の話では刑事事件の弁護士費用なら40万から200万円くらいじゃないかということだ。
弁護士の実績などでもまちまちらしいので費用に関しても初めにしっかりと聞いておいたほうがよいとのアドバイスまでもらっている。
とにかく詳細を知りたいということなので父親とともに八丁堀まで足を運ぶことになった。
石塚省吾弁護士は48歳という年齢であるのだがいじめを含めた教育問題を多く扱っているので強い味方になってくれると期待している。
「ど、どうでしょうか?
事件として成立するもんですか?」
重雄が身を乗り出して石塚に訊いている。
法律事務所内の応接室だ。
応接室とはいっても周囲は本であふれている。
事件に関係するような専門書なんかの山だ。
「そうですね•••
まず刑事事件としてですが起訴ということはありません。
外部からの物理的、具体的に被害を受けたわけでもない。
自ら死を選んだ。
つまり自殺です。
法律の解釈としては事件性はありません」
淡々と語る石塚弁護士。
わかってはいるが、いるんだが納得のいかない親子。
「それは警察からも言われました。
できたとして脅迫罪だと•••」
今度は勝利がたまらず話し始める。
なんとかならないものかと。