3-2
次に学校側や教育委員会への訴えをしなければならない。
私立校なので新宿区への訴えはどうなるのか?
民間企業に勤める一介のサラリーマンではわからない。
わからないがなにもしないという選択肢はない。
大佐古家の住所は東中野。
管轄警察署は中野警察署になる。
前回、説明をしてくれた白石という刑事に連絡をとっていた。
会社には有給をとって休むことにした。
事情を知られているのでなにも言わずに許可された。
会議室で白石と対面する。
いろいろと訊いてみたいことがある。
「よくわかりました。
でもですね、実際に訴えるとなると非常に厳しいと思います」
「どういうことでしょう?
加害者である氏名がわかっていても無理なんでしょうか?」
勝利としては予想はしていた答えだ。
だがあえてさらに訊いてみた。
「警察としては直接的な暴力などで被害にあわれたということでもないと動きづらいのです。
確かに加害者と思われる名前がわかったとしても、その加害者が具体的に死亡するにいたらしめたということでもないと•••
つまり確証でもないと逮捕などということはできません。
いじめが原因であったとしても、死因としては自殺ともなれば対応は非常に難しくなります」
白石が言うには、できたとしても刑事事件というよりは民事事件に近い脅迫による罰金や損害賠償という形になるのではという個人的な見解だった。
いち警察官ではなにも言うことができない。
決めるのは検事なり裁判官だ。
まぁ、こんなところだろう。
勢いにまかせてやってきた。
ジッとしてられなくて来てしまった。
自分の力でやるしかない。
警察署をあとにして歩きながら考えを巡らせた。
次にやらなければならないことだ。
学校に対しての提訴、殴り込みだ。
そして、そのためにも味方を探さなければならない。
独りで行ったとしても太刀打ちできないおそれがあるからだ。
自分の両親、あるいは妻の親戚などの顔が浮かんだ。
こういった事件に対応できるのか?
高齢だしすでに社会の一線からは退いている。
期待できるのはその知り合いに、こんなことに対処できる人がいるのだろうかということになってしまう。
兄弟や従兄弟などは?
こんな事件に対処できるか?
会社の人間や友人なんかは?
ダメだ。
普通に暮らして普通に生きてる人たちだ。
やはり専門家の力が必要だ。
なら弁護士だ。
知り合いはいない。
誰でもいいというわけでもないだろう。
いじめ問題に詳しい弁護士を探す必要がある。
費用の面も含めて親や兄弟に相談してみようと駅までの足を早めた。