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君へ  作者: 堂本実和子
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普通になりたい私と、優しい君

いつもとは違う。抱き寄せて何も言わず力強かった。『心配なんだよ』と、包んでくれた。


私は何故か、その瞬間は涙が出ず、一呼吸後に涙流れた。

私は何も言葉を言わなかったけれど、彼は多分、私が悲しんでいると、気付いてくれたのだと思う。


本当の気持ちは、悲しかったのではなく、苦しかったから。でもそれを解いてくれたから、嬉しくて涙が出たのだ。



あれから日々は過ぎ行く。お互いの、と言うより私の気持ちは二転三転している。

彼を裏切っているのと同じくらい、の事を毎日のようにしている。

彼を苦しめているのだ。 そしてそれを我慢させている。


いっそのこと、私を捨ててくれればいいと思うのに。そんな事くらいで私は死なない。



それより自分が彼を苦しめてる方が、最低だと思うのだ。だったらそれを直せばいいのだが、直し方が今は分からない。何年も我慢してもらうのには、限界が来てしまう。将来には不安しかないだろう。



このままなら私は、多分、彼に甘えたまま、また傷付ける。自分を抑えられないからだ。私の都合のいいように、彼を利用しているとしか思えない。

私は彼に当たれるけれど、彼は当たれる人がいない。 それでは彼の心が死んでしまう。

そうなる前に、何とかしたい。


お別れした方がいいのかもしれない。


私はまた彼を傷付ける。 我慢はしないほうがいい。体に悪いから。







これは、1ヶ月前の出来事で、私が落ちている時に、いつもはそういう事をしない彼が、この時には何故か慰めてくれた。そのことを今、ふと思い返していた。






二年前に彼と出会った。

最初の印象は、どうだったか。私は思い出せない。 でも、とても自然だったような気がする。


一度、二人で食事をして、まだ付き合っていないのに、二度目にはお台場に行っていた。

この出来事は、他の人から見れば大した事ではないが、二人にとっては最大の、今までにないほどのドキドキ感と、恥ずかしさとでいっぱいになった。



その時の事を、今でも鮮明過ぎる程に覚えていて、でもとても、口に出すなんて出来ない。心で思うだけで恥ずかしくなるほど。



一緒に横を歩くのは、考えてみれば初めてだった。だから、カップルでもない二人が並んで歩くのは、なんて[もどかしいんだ]と思った。

そう思いながら、カップルばかりの中を私達は歩いた。私は白いダウンを着て、彼は黒のダウンを着ていた。




デックスからフジテレビに向かう事になり、横断歩道の信号待ちをしている。


私はずっと考えていた。 カップルじゃないのに、手を繋ぐのはおかしいかと。でも、とても手を繋ぎたかったのだ。だから今しかないと、何故だか少し焦っていた。


信号が青に変わった。今しかない!


そう、心の中で叫んでいたのに、言葉は喉にひっかかって、なかなか言い出せなかった。


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