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それからしばらくして、おれたちはジャガーの中にいた。
無線計器などは、すべてオフにしてある。eatを使って、成澤が知らないモニタ機器までオフにしておいた。
「さて、これからどうする?」おれが訊いた。
「不幸な爆発事故が起こったんでしょう」成澤が答える。「見たままをいっても、誰も信用しないでしょうし……」
「それもありかな? しかし計器類は憶えているぞ」
「さて、それもどうでしょう?」
そのとき、ズズーンと爆発音が聞こえた。ジャガーの進行方向とは逆からだった。
「防衛大学病院が建設中でよかったですよ。少数の職員は地下にいて、予算の関係で工事再開は来月だ」
「どうなっても、知らないよ」
「高久さんは、何も見ず、何も聞かなかった……」
「死んだ奴らが可哀想だな」
「その言葉もNGワードです」
静かに前を見つめながら、成澤がいった。しばらくして、
「さて、どこまで送りましょう?」
「他にいくところもない。塚田保険事務所までお願いしよう」
「わかりました」
おれは時計を見、時間を確認すると、携帯をかけ、高瀬累子に用事をいいつけた。
「ところで、あんたの知り合いに筋肉自慢の老人はいないか?」おれが問いかける。
「そういう知り合いは多いですね」
「鋭い目をして、髪も白い。W軽機械とも関係がある」
「ああ、それでしたら、福徳通販をライバル視している育英通販の……」
「いや、名前はいらない」おれは皆までいわせなかった。「いたことがわかりゃ、それでいいのさ」