3 時代って廻るよね
『ギルド』・・・各ジョブの総括を担う国際機関。
『ユニオン』・・・冒険者達によるPT連合・同盟の集団。
「今のところは傭兵方面はまだまだ現役ってカンジかなぁ
あんなブルジョワ装備持ってる奴なんて世界中かき集めてまだ片手位しか居ないんじゃない?」
"あんなブルジョワ装備"とは、件の『スキル:ハイドウォーク』が付与された装備の事だ
材料となる宝珠のドロップ対象が高レベルのMVP=BOSSで、極々稀にしか落とさないというから
『今もっとも高価で高騰している装備』・・・そう、『今はまだ』。
「ガチ勢の『ユニオン』連中がダンジョンに四六時中張り付いて
挙ってMVP=BOSSの取り合いだそうです。
戦闘中の横殴りに対抗への妨害工作と、アングラもドン引きの取り合い合戦。近づきたくない」
「高レベルのモンスターを定期的に排除してくれるってのは周辺住民的にはありがたいんだけどねぇ?
一番怖いのは殺気立った冒険者-ニンゲン-ってヤツだわぁ あ、特製チーズ盛り1皿追加お願い!」
「こっちは白雪鮎のアクアパッツァを、あとヤマト酒吟醸1つ」
ちょっと呑む程度のつもりだったが、いかんせん久しぶりの地元だ
気も抜ければお腹も減る。夕食はもうここでとってしまおう。
BARリットは、今僕たちがいる2階が社交の呑み場、1階は誰でも入れる大衆食堂であり
酒は勿論、美味しい食事も揃っている砂漠都市のオアシスだ。
・・・2階には"奥"もあるけど、今日は開いていない。
「今はまだ数が少ないから、『ユニオン』が独占して不出にするでしょうが・・・いずれ出回ります。
『スキル:テレポート』付与装備だってそうだったんじゃないですか?
僕が子供の頃は一生買えないような値段だったのに、今じゃ冒険者は一人1個は持つ時代だ』
『スキル:テレポート』は、環境が同じエリア内をランダムに移動するスキル
元々は僧侶系ジョブが修行で覚える必須スキルであり、
またテレポートを使えるモンスターを材料にした消費型アイテムも安価で流通している
付与装備で使うメリットは、MP[マジックポイント]に余裕があれば何度も使用できるという点かな
「あったあったそういう時代!あれは良い稼ぎになったなぁ~
宝珠落とすのが普通のモンスターだし。今回みたいにMVP=BOSSは流石に相手にしたくない!」
「普通にぽっくり逝きますね」
「アタシはまぁ~避けて逃げて討伐ユニオンに伝達が精一杯だわ」
師匠はMVP=BOSSもソロで討伐経験がある。
相性が良かっただけと言うけど普通にドン引k「なんか言った?」・・・とても尊敬する
僕は昔、ばったり出くわしたBOSSにこっぴどい目に合わされて以降近づかない様にしている
・・・今の僕なら どうなんだろうか?
はたと、気付いてしまった
同じルーティンワークの繰り返しで得た今の能力とジョブ
けして胡坐をかいたわけではない。ギルドでしっかりと勤め上げて来た。
けれど、
未体験も再挑戦も、まだまだこの世界に沢山あるのでは
「・・・どっか行こうかな」
そう呟いた僕の言葉に、師匠の目が爛爛としていた
気付けば 皿もグラスも空になっており
僕の所持金は最初のカルーアミルク2杯分しか減っていなかった
「門出祝いってことね♡」