2 居たんですか師匠
ラスタレスがアサシンギルドの扉を抜けて野外に出た瞬間だった
「もんだーーい! ジャジャン!
どうして『ハイドウォーク』中のラス君の位置がわかったでしょ~~か?!」
そう言いながら、姿を隠してギルドを出入りした僕の両目を
正確に手のひらで覆って目隠しをする、人懐っこい女性の声が直ぐ後ろから聞こえた。
ちなみに、アサシンギルドへの入出は基本的にスキルで姿を消すのが暗黙のルールである
「・・・まさかこれの為に"ずっと居た"んですか、師匠?」
「にゅフフフフフ♪MP管理大変だったんだぞぉ 私は『幸運型ステ振り』だからね」
「お待たせしたようで申し訳ございません。BARリットのカルーアミルクで許してください」
「乗った!!」
上機嫌に声をあげた彼女の姿が徐々に見えてくる
すらりとして均整のとれた肉体に
上品で甘い印象があるウェーブかかった長いブロンドヘアをなびかせて
ピコピコ猫耳を動かし、端だけ白色のゆらゆら揺れるしっぽが特徴的な『亜人種:化け猫族』
職業はアサシン系統メイン職である『アサシン』で、一見すると僕の方が上級に見えるが
自分の戦闘スタイルを貫くだけの実力と経験と年れi「今なんか言った?????」
・・・読唇術超えて読心術かという位のカンの鋭さ
この人、スノウラーザさんは僕の師匠であり、
アサシンギルドの戸をたたく、12年前より少し前からの長い付き合い。
ひよっ子だった僕、『亜人種:化け猫族』同族のよしみで面倒をみてくれた恩人だ。
-砂漠都市リット BARリット-
「ついにラス君も飼い猫から野良猫になっちゃったか~!ウェルカム自由!!」
「・・・師匠とは理由が正反対です。貴女はひとりでもやっていけるからで。
僕の方は現環境に能力が付いていかなくなった、リストラ前に希望退職しただけです」
「最上位職がなーーに言ってんの!イヨッ!"血染めの贄"ってさぁ!」
「ジョブの意匠が可愛くないって理由でランクアップしなかった師匠に言われても」
「カワイイは大事だぞぉ?」
ニカカっと笑う師匠の表情に、そうですね、と流しうなずいた
自分のモチベーションの為でもあるし、私生活でも"便利"であるのだろう。
師匠はずっと以前から、アサシンギルド直属では無かったようだった。
ギルドに未所属のジョブはフリーランス。自力で雇用主を見つけたり、討伐成果の売買を行う。
自分の気分で自由に好きな街へ、ダンジョンへ、観光地へ行ってはよくお土産(主に食べ物)を
渡してくれて、その一方で手持ちの装備の種類を一切妥協せず事細かに取りそろえる位の財力は
常に確保している様だった。
ギルドに所属しているジョブは雇われ。一定の給金と保証がギルドから支給される。
この保証が特に大きい。無名であっても"能力の品質保証"がギルドからされるから、
依頼を受注しやすいのだ。
・・・あとは、『行方不明』時の扱いかな
ギルドは登録者の生死を把握する義務があるが、未登録者の場合はそうではない。
「ラス君もすーっかりオトナになっちゃって!「二足歩行が上手くできません」って言ってた
あの日のオチビちゃんはもう居ない!うっ!オネーサン時代を感じるぞぉう」
・・・アサシン系はアルコール耐性があるから、酔わないはずなんだけどね。素でしたね。