叶わない恋
練習が終わり静かになった武道場で一人素振りをしながら、
今日の練習やバイト、授業の課題といった頭に浮かんでくる今の自分を取り巻くものを
ひとつひとつ考えては消していき頭をからっぽにする
そうして0になった状態で体を動かすことが最近の日課になっている。
ひとしきり汗をながし、武道場を閉めて部室に向かうとマネージャーの遠藤が部室に残っていた。
「光さんお疲れ様です、おそくまでよくやりますね」と笑ってはなしかけてきた。
「大学で始めたから他の人より練習しないとね、それに頭をからっぽにして体を動かすのは悪くないよ」
「つれづれ草みたいな発想ですね」
「やっぱり文学部はちがうね」
そんなやりとりをしながら、荷物をまとめて部室をでる。
部室をでて二人であるきながら、でてきた疑問をぶつける
「そういえば遠藤は部室でなにしてたの?」
「部室を整理しながら、光さんを待ってました!」
「私も高校生のころはよく一人で残って練習してたので、誰かが待ってくれてるって良いなと思って」
「ありがと、じゃあせっかくだしどこかご飯食べに行く?」
「はい!」
そのまま近くのファミレスに入り、二人で最近の部活や授業の話を
しながら食事をすませて解散した。
今思えばこの日が2人の関係を大きく変える一歩目だった。