魔女と王子は憂鬱である
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チリンチリン
「誰だ‼︎」
スープを食べるために持っていたスプーンをテーブルにおき、フードを深く被ると私は急いで小屋から飛び出す。だが、ぐるりと見回しても誰もいない。
外に設置しておいた仕掛けが鳴ったから誰か来たんだと思ったんだけどなぁ…。
「まぁ、野生動物か」
ホッと息を吐き、後ろを振り向くと…。
「やぁ、魔女さん」
「ひっ、貴様、なんでここに…」
私の問いには答えず、ズカズカとジェーンは部屋の中へ入っていく。
「ふーん、あなたはこんなところに住んでるんだね」
「き、貴様、なぜ私の家を知っている!」
「あ、スープだ。食べるね」
「私の質問に答えろ!」
私の声が聞こえているのか、いないのか…甘いマスクをこちらに向け見せつけるようにスープを食べる。
「…まっず‼︎魔女さん、よくこんなの食べられるね…というかまともな食事は?」
「いらん。そんなことより、貴様は城に戻らなくていいのか?」
「そんなことよりじゃない!ちゃんと食べなきゃダメだろ。食材は?」
「ない!」
はぁと呆れたように息を吐くとジェーンは私の手をグイッと引く。
「何をするんだ!」
思わずサッと体を引くが、手を掴まれているので離れられない。
「もちろん街に行って食材を買いに行くんだ。このまんまじゃ、魔女さん死んじゃうからね」
「街へは行かん!」
この姿を見られもし魔女だとバレたら魔女狩りの始まりである。魔女の禁止事項の件もあるし、人間の街に行くわけにはいかない。
街に行かせたいジェーンと睨み合う。先に折れたのはジェーンの方だった。
「…わーかったよ。なら、これからは俺が食材を持ってくる」
「お前になんの得があると言うのだ!」
「ないけど、出来るだけあなたに恩を売っておけば後で結婚にOKもらえる確率が上がるよね?」
「上がらん!」
キッと睨むがジェーンは肩をすくめるだけだ。
食材を持ってきてくれるのは正直ありがたい。だけど、それで相手に借りを作りたくない。
うーん…何かいい方法は…。
「まぁ、いいさ。お返しなんかいらない。あなたには健康でいて欲しいだけだし」
ゔっ…。
イケメンなうえ、性格までイケメンである。
はぁ…これだけしてもらって私は何もしないって言うのは私のモラルに反するし…しゃーない。
「貴様、何か悩み事などないのか?」
「あるさ、もちろん」
「私に教えろ!」
ジェーンは困惑した様子だったがすぐに私に甘えるように寄り添いながら答える。
「婚約者がほしい」
そう言って揶揄うように微笑んだ彼を私はじっと見つめる。
…。
「…いいだろう、私がいい候補を連れてきてやる」
「そーゆーことじゃなくて!あなたに婚約者になって欲しいんだ、結婚してくれないか?」
「断る!理由はこの前言っただろ」
チッと顔に似合わぬ舌打ちをするとジェーンは扉へ向かう。
「そろそろ帰る。じゃあ、また明日」
「明日も来るのか⁉︎」
私の叫びを無視してジェーンは去って行った。
はぁ、まるで嵐よ。あいつは嵐みたいだわ。
サッときて、私の心に莫大な被害をもたらし、サッと行ってしまった。
「師匠様、私、これからどうすればいいのでしょう?また、禁止事項を破りそうです…。」
写真に言っても返事は来ない…か…。
その頃…。
「第二王子、どこにいたんですか!大事な報告があるんです!」
「どうせ、大したことないんだろ〜」
どしんとソファに座るとエドワードが咎めるような視線を向けながらも話を続ける。
「国王陛下から、来月、城で行われるパーティーで、婚約者を連れて社交界デビューするよう、通達がありました!」
っ⁉︎…面倒なことになったな。
多分、俺に婚約者がいないことをわかっている上で父上は婚約者を連れてこいと言っている。
多分、来月までに正式に婚約者を決めろと言うことなのだろう。
「はぁ…どうしようか…」
魔女を来月までに婚約者にするか、それとも婚約者を作るか…。まぁ、婚約者問題はそのまでではないだろう。問題はこれだ。
俺はジッと左手を見る。真っ黒の手袋は、パーティーでは外さなければいけないだろう。変な争いは生みたくないしなぁ…。
憂鬱な気分の中、俺は眠りについた。
すみません、これからちょっと忙しくなるので投稿できないかもです…。