1:魔女と王子は一目惚れする
新しい連載小説となります!
なかなか投稿できないかもしれませんが、楽しんでくださると嬉しいです!
とある森の奥深くに1人の女性が住んでいた。漆黒の髪に、紫のミステリヤスな雰囲気の漂う瞳をもつ女性だ。名前は…いや、これは言ってはいけない禁止事項である。実はこの女、魔女なのである。そんな魔女の元にある日、1人の男性がやってきた。艶のある金髪にまるで宝石のように輝く青色の瞳。この男の名前はジェーン。実はこの国の第二王子なのである。世間では病弱と言われている王子なのだが、実際は健康そのもの。性格に難があることから表には出されない存在だった。
魔女と王子、出会うはずのない2人が出会った時、新たな物語が始まる。
私は魔女。魔女には禁止事項がある。
・名前を教えてはいけない
・人とあまり関わってはいけない
・人と恋をしてはいけない
三つとも魔女のことを守るために作られた禁止事項だ。一つ目の名前を教えてはいけないのは、魔女は名前を知られたものに服従する義務が生まれるからである。二つ目と三つ目は、昔人間に魔女狩りをされ沢山の魔女が亡くなっていったからだという。禁止事項を破っても罰則はないが、破るということは魔女の名を汚すことにつながる。
だから、先代の魔女様たちに謝っておきます。私、禁止事項を破ってます。
目の前には金髪青目のイケメン。背景が森なのを感じさせないほどの高貴な雰囲気が漂っている。目があった瞬間、ドクンドクンと大きな音を胸が立てている。
これは、なに?何かの魔法?
「あなたの名前を教えてもらってもいいかい?」
「私の、名前は…」
そこまで言いかけて私はハッと自我を取り戻した。
「貴様、なんの魔法を使った‼︎魔女である私の心をも奪い取る魔法など聞いたことがないぞ!」
キッと睨みつけると男は大きく目を見開いた。
「魔女…あなたは魔女なのか?」
ハッと私は急いで口を押さえる。
何をやってるの、私は!人間とは極力関わってはいけないのに!
「そう言う貴様は何という名前だ。」
「ジェーンだよ。先に名乗らず申し訳なかった」
や、やけに素直ね…。
探るようにジェーンを見つめるとジェーンはくらりとよろめいてしまいそうな、キラキラの笑みで告げる。
「俺と、結婚してくれないか?」
「俺と、結婚してくれないか?」
目の前には今までみた誰よりも美しい女性がいる。この女性、魔女らしい。しかし、そんなの関係ない。俺が結婚したいものと結婚するだけだ。
魔女は冷たい目で俺を見下ろすと「誰が貴様と結婚するものか‼︎」と言い放つ。
「あぁ、言ってなかったが、俺はこの国の第二王子なんだ」
魔女はそれがどうしたと言わんばかりにこちらを睨みつける。
「だから、本当は俺からのお誘いを断るのは禁止事項なんだよなぁ〜」
もちろん、嘘だ。別に断ってもいいし、そんな禁止事項なんてない。
だが魔女は少し慌てたように視線をウロチョロさせた後、目を伏せた。
「魔女は、人間と関わってはいけないのだ。」
「べつにいいさ、そんなの自分の好きにすればいいじゃないか。」
実際俺はそうやって生きてきたんだから。まぁ、周りからはよく思われてないけど。
「俺だって本当は王族としか結婚は許されてない。だけど、あなたに一目惚れしたんだ」
「っ‼︎ふ、フードを深く被ってるから顔なんて見えるわけがあるまい!」
慌てる魔女がかわいくて俺は思わず微笑む。
「俺にはわかるよ。あなたが俺が出会った誰よりも美しいってことくらい」
王族には周りには秘密の力、ロイヤリワーがある。俺の能力は三つ。
・どれだけ顔を隠してもフードやヴェールの奥の顔が見える
・相手の心の美しさがわかる
・相手が嘘をついているかどうかがわかる
だから、目の前にいる魔女の心はとても美しく、可愛らしく、顔だって美しいことがわかる。
ニコッと微笑むと魔女はビクッと震える。
この顔の良さは自分でもよくわかっている。だからこそこの顔を使って俺は今までも色々なことを有利に働かせてきた。この顔に、落ちない女性はいない。
そうわかっている上で俺は微笑む。
「俺と、結婚してくれないか?」
「断る‼︎」
っ⁉︎
なん…で…。
手応えはある。彼女は確実に俺に惚れているはずだ。
「迷惑だ。早く帰ってくれ」
嘘かどうか、ロイヤリワーを使って調べるが…いや、嘘をついている訳ではないらしい。
「…まぁ、いいさ。今日は一旦、帰るよ」
「や、やけに素直だな…。は、早く帰れ!」
はいはい、帰りますよ。
「あの人、結局なんだったの?」
小屋に戻り、私は一息つく。王子と言っていたあいつは本当に王子なのだろうか?
ただ、薬草を取りに行っただけのはずだったのに、面倒なことに巻き込まれてしまった。
「これからはあんまり外出しないようにしようかなぁ…」
ガタッ
「誰だ‼︎」
急いでフードを被り後ろを振り向く。バッチリ戦闘態勢を決める…が、
「なーんだ、シカかぁ…」
フッと力を抜き、その場にゆるゆるとしゃがむ。
はぁ…。
「魔女って面倒ね…」
・人とあまり関わってはいけない
魔女の禁止事項の一つだ。
だけど、もうすでに私はそれを破ってしまっている。
だからこそ、せめてそれ以外の禁止事項を守りたい。私は、例え生まれた時から欠陥品でも魔女なのだから。
「だから、絶対に私はあいつに恋をしない」
「第二王子、今までどこにいたんですか⁉︎」
「あー、はいはい」
城に戻ると早速執事に問い詰められる。
「はいはいではございません。あなたは第二王子として勉強する義務があるのです。そんなんだから病弱とされて、表舞台に立てないのですよ?あなたはもっと…」
執事のエドワードが苦情を右耳から左耳へと流す。
エドワードが気にしているのは第二王子であって、ジェーンではない。
フッと鼻で笑うと俺はソファにどしんと座った。
「王子らしくゆったりと座ってください!」
「王子らしく?俺は病弱でまだ社交界には出ていない。王子らしくも何もあったもんじゃないさ」
エドワードははぁと息を吐くと部屋から出て行った。
「ため息をつきたいのはこっちだよ…」
シーンと静まり返った部屋で思い出すのは今日あった女性のこと。
「まさか、本当に魔女がいるなんてねぇ」
勉強から逃げ出した先の森でまさか魔女に会うだなんて夢にも思っていなかった。
「それにしても、綺麗だった…」
サラリと揺れる黒髪に煌めく菫色の瞳。心も今まで見たことがないほど美しく、キラキラと輝いていた。城の中ではそんな人と出会ったことがない。そもそも病弱ということにされているため、多くの人とあったことすらない。
「まぁ、病弱ではないけど…確かに人前には出れないかなぁ」
自嘲しながら自分の手袋のされた左手をみる。
「誰でも、人に話せない秘密の一つや二つあるよな」
俺はこの秘密を一生暴かれてはいけない。
これでも一応、平和を願う王子なのだから。
「でもやっぱり、欲しいものは手に入れたいさ。だから絶対に魔女と結婚する。」
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