表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/78

まさかのお家騒動?

「敵か?」


 うしろで、だれかが叫ぶ。


 いや、それはねぇ。


 連中は、洋式。

 たった一人として、鎧兜に身をかためてるやつぁいねぇ。

 

 だとしたら、あれは味方ってことになる。


 幕府軍おれたちの敗因の一つ、それが鎧兜、刀槍、ってわけだ。


 それから、情報不足、油断、心構え・・・。

 数え上げたらきりがねぇ。



 先頭の野郎おとこが、おれたちに気がつきやがる。


「ひいいっ!まてっ、まてっ、余の頸などとったところで、なんの価値もないぞ」


 野郎おとこが叫ぶ。


 ひかえめにいっても、ぶよぶよで、いかにもどんくさそうな野郎おとこじゃねぇか。


「おいっ上様よ、ありゃだれだ?あんたの家臣じゃねぇのか?」


 豚一に掌を伸ばし、体勢を整えてやる。


 二人して、あらわれた死に装束の野郎おとこらをみる。


「いや・・・。みたことがない。それに、いまここで切腹する馬鹿などいるはずもない」


 豚一は、そういってからくくくっと笑いやがる。


 たしかに、いまこの機に、切腹など無意味。


「秀頼様っ、これ以上、恥をさらすようなことはおやめくだされ。お父上の偉業が、地におちまする」


 鎧兜の先頭のおとこが叫ぶ。

 そして、やっとおれたちに気づく。


「徳川の者かっ?」


 元結がばらけ、いまにも化けてでてきそうな形相じゃねぇか。


「そうだ」、と答えるよりもはやく、死に装束のばばあが金切り声をあげる。


「ひかえよ、修理しゅりっ!そもそも、そちが交渉に失敗したのではないか?それを・・・。秀頼に、切腹させるとは・・・。それとも、そちが助かるために、秀頼の頸を差しだす交渉でもされたのか?」


 思わず、豚一とをあわせちまう。


 これは、なんの芝居だ?

 それとも、なに者かがふざけてやがるのか?


「秀頼様っ」


 そのとき、鎧武者たちのあいだから、小柄な武者が飛びだしてきた。


 まだ餓鬼だ。うちの餓鬼どもと、そうかわらぬ年齢としごろのようにみえる。


 真っ赤な鎧兜。兜には、六文銭があしらわれてる。


「大助っ、おお、大助。たのむ、余を助けてくれ。死にとうない」

「秀頼様っ!その者どもから、はなれてください。いずれの家中の者だっ!」


 ぶよぶよの野郎おとことの間に立ち、こっちを睨み付けてくる。


 うちの餓鬼どもより、よほどしっかりしてやがる。


 すばやく、この状況をまとめてみる。


 これが誠のことなのなら、かようなときに、のんびりお家騒動やってるってことになる。

 もしかすると、どっかの藩主がこの戦で戦死し、その跡目を継ぐのに争い、この連中が負けたのやもしれぬ。


 なら、おれたちはどうすればいい?

 お家騒動や跡目争いに、頸を突っ込んでる暇などねぇ。


 それ以上に、そんな体力も気力もねぇ。


「いずこの家中の者か?われらは、和議を結びたい。そちらの大将に、とりついではもらえぬか?」


 年増の女が、しゃしゃりでてきやがる。


 まうしろに迫ってきてる炎の明かるさのなか、女を観察する。


 わるくねぇ・・・。

 経験が豊富そうだ。こういう女は、床で荒れ狂ってくれる。


「錯乱されたか、淀殿っ!敵はすでに、和議など結ぶつもりはなし。それを・・・。致し方なし。われらが介錯いたしまする」


 修理と呼ばれた武者が、左右に合図を送る。


 問答無用で、修理とその手下てからしき三人が刀を振りかざし、こっちに向かってきやがる。


 慌てたのは、おれたちじゃねぇ。女と秀頼って野郎おとこ、それから、大助という餓鬼だ。




ご訪問いただきまして誠にありがとうございます。


ゆるゆると進行してまいります。


気長にお付き合いいただけましたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ