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助けた人は龍で、騎士で、美形貴族  作者: たかむら
第四章 戻ってきました、龍の国
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純粋な気持ちと紙一重な行動



 城下町に入った途端、鬼人族の二人は姿を消した。しかしルイーゼは視線を屋根に向け、私に小声で話しかける。



「付いてきております。必要な物を購入し終えましたらすぐに旅館へ戻りましょう」

「分かった」



 その言葉通り私達は海苔や味噌を買い終えると旅館へ向かった。

 私とリュカさんが宿泊する部屋に入るとリュカさんが居り、椅子に座って優雅に足を組み、美しい笑みを湛えていた。

 嫌な予感がする。



「おかえりコハル」

「ただいまかえりました」

「おいで」



 笑みを崩さないまま椅子に座るよう促される。

 座ったら説教が始まるんだろうな。座りたくない。でも座らなきゃ座らないでもっと面倒くさいことになる気がする。

 なんの足しにもならないが、私はへらりと笑ってから着席した。


 部屋の中にはリュカさん、ルイーゼ、文二、大福が居る。いつもなら誰かしらが喋るのに、私が着席するまで誰も喋らなかった。こういう時は大抵私が何かをやらかしてる時だ。でも自分が何をやらかしたのか一切皆目検討もつかない。


 私が着席したのを確認するとルイーゼがお茶を出し、いの一番に文二が手を付けた。リュカさんは私の髪に触れ、それを私の耳にかける。



 

「私が渡した耳飾りはどうした」

「あ。鞄の中のです」

「何故そんな場所に?」

「失くさないようにです。ノーアの背の上は強風なので」

「では何故到着後すぐに付けなかった」

「それは〜そのー……忘れてました。すみません」

「今回は許すけど、次はない。仕置では済ませない」

「それは怖いです」

「反省しなさいコハル」

「すみませんでした」




 リュカさんにピアスを再度付けられ、私はもう一度謝罪の言葉を伝える。

 いつもなら謝ったあと直ぐにいつものリュカさんに戻ってくれるのだけど、今日は何故かまだピリピリしている。

 やっぱり私が贈り物をぞんざいに扱ったからかな。本当に大切だからこそ失くさない様に鞄に入れたんだけど、やっぱりお貴族様からの贈り物を鞄の中に適当にぽいって入れたのが良くなかったのかもしれない。

 だって旅を一緒にしていた時は数えきれないほど失礼な事をやらかしてきた。リュカさんがトイレに入ってるって知らずに開けそうになったり、遊び心で空を飛んでいる鳥の鳴き真似をしたらリュカさんが求婚され鳥人国に攫われそうになったり、他にも沢山ある。でも謝ったらすぐに許してくれた。たまに仕返しされる事もあったけど、今みたいにピリピリした雰囲気はすぐに治めてくれた。

 

 良し。もう一度謝ろう。

 反省している気持ちを伝えようと口を開くと、その前にリュカさんが先に問いかけてきた。





「それで?どうして厄除縁部隊の者達がコハルを追い回している。ルイーゼッケンドルフから全てを聞いているが、俺はコハルの口からも聞きたい」

「え?」





 私はリュカさんからの思ってもみない質問に素っ頓狂な声を上げる。

 というかルイーゼはいつの間にリュカさんに報告していたんだろう。


 彼の要望通り順を追って説明していくと、文二や大福も補足を入れ始めた。特に魔獣を倒したところや私を守ったところは二匹が短い腕で一所懸命にジェスチャーでリュカさんに伝えていた。可愛い。

 リュカさんは私達の話を聞き終えると二匹の頭を撫で、私に魅了耐性があった事に「良かった」と一言呟いた。そして冷めた声色で次の言葉を放つ。



 

「姿を現せ」




 部屋の中には私達しか居なかったはずなのに、壁の隙間から濃霧が発生し二つの影が現れる。

 リュカさんが懐から取り出した扇子で霧を拂うと、動物の面をつけた二人が姿を現した。

 

 扇子を優雅に扱う姿も美しい。

 でも今そんな事言ったら流石に怒られるだろうな。

 

 私はその場の雰囲気を怖さないよう、黙って事の成り行きを見守る事にした。

 二人はどういうつもりか動物のお面を外し、リュカさんに自己紹介を始める。



 

「どうも初めましてデルヴァンクール卿。僕は胡蝶花(しゃが)一族のナツメフジ」

「俺は温羅(うら)一族ヨツバヒメ」

「何で僕らが此処にって顔してるねコハルちゃん」

「コハルの名を気安く呼ぶな。付き纏っている理由は魅了が通じないからか?」

「如何にも。純粋に興味がある。危害を加えるつもりはありませんよ」

「その言葉を信じると思うか?」




 ナツメフジさんは「それもそうだね」と苦笑し、二人は抵抗せずにリュカさんの氷魔法を受け入れ拘束された。

 でもけろっとしている。それどころか私に此処に現れた方法を話し始めた。




「胡蝶花一族は過去に一反木綿と交わった者がいてね。僕は先祖返りで妖の姿にもなれるから隙間さえあれば何処へでも侵入できるんだ」

「俺は烏天狗だ」




 二人は話を続け、途中途中でリュカさんが補足説明を入れてくれる。

 妖は人を魅了するのが得意だ。だから先祖返りの二人は普通の鬼人族よりも顔が整っている。それに魅了する力も強い。

 烏天狗は剣術や戦略を教えてくれる人を守る妖で、一反木綿は人を乗せる事が好きな妖らしい。でもナツメフジさんは人に巻き付いて縛り上げる方が好きだと言っていた。迷惑すぎる。

 



「勿論乗せるのも好きだよ。ただ締め付けたり縛り上げる方がもっと好きなんだ」

「笑顔で言う事じゃないと思いますよ」

「ウメユキから聞いていたが、やはり烏天狗も一反木綿もストーカー気質のある妖だな」

「ウメユキ?あぁ、忍冬一族か。あいつら玉藻前(たまものまえ)の方が粘着質だろう」

「たまものまえ?」

「尻尾が九つもある狐の妖だ。先祖返りはいないと聞いている。もし玉藻前に会いたいのなら百鬼夜行の季節に来ると良い」





 玉藻前は絶世の美女の妖らしい。

 会ってみたいような会ってみたくないような。とりあえずリュカさんが以前出会ったのが化け狸で良かったなと思った。




ブクマやイイネありがとうございます!!

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