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助けた人は龍で、騎士で、美形貴族  作者: たかむら
第四章 戻ってきました、龍の国
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今日は何曜日?



 貴族街から帰ってきたその日の夕方、夕食の席で使用人の皆さんに買ってきたお土産を渡した。

 ユリウスさんは自分が出した宿題の“ショッピング”で自身を着飾るものではなく、従者である自分達にお土産を買ってくるとは思っていなかったらしく、彼を筆頭に沢山の人から感謝とお礼を言われた。しかし文二と大福には何も買って帰っていなかったため、二匹からは大ブーイングを食らった。




「ブンジとダイフクには私からこれを」

「んにゃ?」

「キュ?」




 そう言ってリュカさんが懐から取り出したのはスノードームで、その中には私と文二と大福が楽しそうに踊っていた。

 このスノードームには専用の魔法陣が施されてある。

 魔法陣に想いを込めながら魔力を流すと、中に願った人物が現れる。

 手のひらサイズなので文鎮にもなるし、インテリアにも丁度良い大きさだ。


 二匹はリュカさんからのプレゼントに大喜びし、そのスノードームを私とリュカさんの寝室に飾った。





「何でスノードームの中にリュカさんが居ないんですか?」

「コハルの傍はいつも俺自身でありたい」






 だったらスノードームの中にリュカさん自身も作ればいいのにと頭の上に「?」を飛ばしていると、話を聞いていたユリウスさんが「例え魔法で生み出した自分だとしても、コハル様の傍がオリジナルの自分でないというのがお嫌なのでしょう」と教えてくれた。

 なるほど。

 分かったような分からないような・・・。

 

 

 


 夕食後は今日もルイーゼに背中を流してもらい、お風呂上りに文二と彼女からマッサージを受ける。

 ルイーゼは太ももやふくらはぎを念入りにマッサージしてくれて、文二は私の背中に乗って腰を踏み踏みしてくれている。大福は私の火照った頬を翼で冷ましてくれている。

 天国かと思う程に極楽だ。


 あまりの気持ち良さにうとうとしていると、コンコンとドアがノックされた。

 リュカさんが私を浴室まで迎えに来たらしい。

 そんなに長湯したつもりはないが、待たせてしまっていたのだろうか。

  

 私は就寝用の服に着替えてマッサージを受けていた為、ルイーゼが戸を開けてリュカさんを中へ通す。

 横になっていたのでマッサージ用のベッドから起き上がろうとすると、リュカさんが手で制してきた。

 





「そのままで良いよ。ルイーゼッケンドルフはもう下がりなさい。コハルは私が運ぶ」

「承知いたしました。おやすみなさいませリュシアン様、コハル様」

「おやすみなさいルイーゼ」




 私がルイーゼに就寝の挨拶を終えると、リュカさんが私を横抱きにしてきた。




「歩けますよリュカさん?降ろしてください」

「駄目だ」

「何でですか?」

「私は明日から仕事で今日みたいにコハルと一緒にいられない。だから少しでもコハルに触れていたい。エネルギーチャージというやつだ」

「そんな言葉どこで覚えて来たんですか」






 結局リュカさんに降ろされる事無く私は寝室へと運ばれた。

 お姫様抱っこは何度されても恥ずかしい。

 それにすれ違う使用人の人達が微笑ましそうな顔でこちらを見てくるからソワソワしてしまう。

 前に一度赤面しているのを見られたくなくて両手で顔を隠した事があるが、体調が悪いのかと皆に心配されて大事になった事がある。

 だからそれ以降手で顔を隠す事はしていない。

 大福で顔を隠している。

 



 明日からはまた勉強漬けの一週間が始まる。

 自分でこの世界の事や常識、色んなことを学びたいとは言ったものの、私は元来ぐうたら体質である。

 そろそろ1日中寝たきりとか、お昼までゴロゴロしてお菓子だけ食べてぼーっとしていたい。

 でも此処では身の回りをお世話してくれるルイーゼや、勉強やマナー教えてくれるユリウスさんにユリアーナさん、隙あらば破廉恥行為をしてくるリュカさんが居るから出来ない。

 それにかまってちゃんな世話師猫の文二まで居る。

 私のだらだらに付き合ってくれるのは大福くらいだ。あの子は昔の私以上によく寝ている気がする。



 明日の授業が憂鬱だ。

 朝食すらすっぽかして寝ていたい。


 

 でも授業内容自体はタメになる事が多いし、中には楽しいモノもある。

 だけど予定がギチギチに詰まっているのが如何せん私のペースに合っていない。

 1日だけでも良いので午後からの授業にして欲しい。

 というか週に1日だけで良いから一人でゆっくり寝たい。寝る前も起きた瞬間もリュカさんの綺麗なご尊顔が一番最初に目に飛び込んでくるというのは心臓に良くない。

 本当に良くない。



 明日は闇曜日だ。

 週の始まりだというのに闇から始まるのか、という感想を最初に抱いたのは記憶に新しい。

 この世界では月火水木金土日と同じように曜日があり、違うのは月と日だけで月曜日が闇曜日になり日曜日が聖曜日となる。また、曜日ごとに適した属性魔法を普段よりも容易に扱ったり強く放出することが出来る。


 私のスケジュールはユリウスさんとリュカさんが週の終わりに二人で決め、それを日曜日にあたる聖曜日の夜に渡される。

 授業が無い日は決まってリュカさんが休みの日だ。

 彼の休みは変動制で、大体2~3日働いたら1日休んでいる事が多い。たまに1週間近く居ない時があるが、そう言う時は仕事の休憩時間に転移魔法で邸に帰ってくる。そして私をぎゅっと抱きしめるとまた転移魔法で仕事に戻る。

 嬉しいけど、心臓に悪いからこれも止めて欲しい。

 


 今週のリュカさんの休みは土曜日と聖曜日だ。

 だからそれ以外の曜日は全部勉強の時間に宛てられている。



 勉強内容は主に世界史、魔法学、貴族社会学で変わりないが、世界史は途方に暮れるくらい長いし、その中にルシェールの歴史もある。魔法学は楽しい実技の時間もあるけど、圧倒的に座学の方が長い。貴族社会学に至っては学ぶ内容の範囲が広すぎてもうマナーという言葉を聞きたくない。

 唯一時間を忘れて楽しめるのは世界史の授業でやる、各国の伝統料理を料理長と作る時間だけだ。

 伝統料理は材料集めから始まるので体力的にも疲れるが、面白い料理が食べられるので楽しい。でも全てが美味しい料理という訳ではない。それに料理中に出される指示がほとんど理解できないのも難点だ。

 “ハードボイルドベアが銃に弾を装填する勢いで炒めよ”というのが未だに分からない。



 太陽が昇り、リュカさんを見送った後にルイーゼに案内されいつもの大きすぎる勉強部屋へと行く。

 今日の授業は世界史だ。

 講師は午前がユリウスさんで、午後がルイーゼと文二。

 ルシェールという国の成り立ちや、それぞれの土地の特徴を魔導書に書いていくと、たまにリュカさんの綺麗な文字で訂正が入る。きっと職場で開いてるのだろう。

 小休憩の時間になると文二が世話師猫らしくルイーゼと共にお茶や御菓子の準備をしてくれた。

 カーバンクルの大福はお菓子をつまみ食いしたり、寝ていたりと自由に過ごしている。

 本当に自由で羨ましい。




「コハル様、休憩が終わりましたら小テストをしましょう」

「ユリウスさん作ですか?それともリュカさん作ですか?」

「若様です」

「キャンセルでお願いします」

「ふふっ駄目です」




 ユリウスさんが作る小テストは5問程度の「はい」か「いいえ」の簡単な二択問題だが、リュカさんが作る小テストは面倒な引っ掛け問題が多い。

 こういうのって性格でますよねと言ったらまた頬を抓られるんだろうな。

 


  



イイネやブクマよろしくお願いします!

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