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助けた人は龍で、騎士で、美形貴族  作者: たかむら
第三章 再出発します、龍の国
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世話師猫の活動源



 三田尻さんが元の世界へ戻ったのを見届けた後、私達はその場に倒れている人たちを起こしていった。

 リュカさんはいつの間にかローブを深く被りなおしており、今はあの美しいお顔が見えない。


 起き上がった人々は皆口々に幸せな夢を見たと言い、何事も無かったかのように買い物に戻って行った。そして、三田尻さんに妹と弟を人質に取られていた元護衛の二人は私達に深く礼をし、その場から去って行った。



「ねぇ、文二は三田尻さんのような人をお世話した方が良かったんじゃないのかな」

「嫌にゃ」

「どうして?」

「だらしない者は面倒事を後回しにするだけで、やらねばという意識はある。ゆえに世話を焼いてくれた者に対して感謝する心を持っておる。我々世話師猫は感謝の心をエネルギーとして活動しておるのにゃ」

「そうなんだ」

「三田尻のようなタイプはそうではない。己の心を満たすために言葉を使う。美しくないにゃ」




 私の感謝の心が文二の役に立っていたとは知らなかった。

 これは以前提出した調査報告書に追記しないといけないかもしれない。


 顎に手を当てて考え事をしていると、米と味付け海苔を売ってくれた店主が私に話しかけてきた。



「この大量の米と海苔はどうするかねお嬢ちゃん。何か入れ物を持っておるかい?」

「こんなに大量に購入したのか」

「はい。お米はどんな食材にも合いますし、何より毎食食べても飽きない最高の食材なんです!」

「…そうか」

「それでですねリュカさん、相談があるんですけど」

「私のポーチに入れて欲しいのだろう?」

「はい」

「はぁ、良いよ。でも次からは購入する前に私に相談するように」

「分かりました!ありがとうございます!」




 代金もリュカさんが払おうとしたので、そこは丁重に断り自分の財布から支払った。

 私は祖国の食材に出会えた喜びと購入できた嬉しさで気分はるんるんだ。それがいけなかった。またもや米が取れる国の名前を聞きそびれてしまった。だから売ってくれたお店に戻ろうと踵を返す。

 しかしリュカさんに手を掴まれ、店とは逆方向に引っ張られた。




「待ってくださいっ。さっきのおじさんに国の名前をっ」

「聞かずとも私の邸に戻り畑に居るバロメッツに米を渡せば良いだろう」

「あ、それもそうですね。いやでもそれじゃお米を栽培している国の売り上げがっ」

「今はそれよりもコハルとゆっくり話せる場所に移動したい」

「何でですか??」

「これからの事についてだよ。婚姻の儀の事もあるしね」




 今日泊まる宿に着くまでの間、リュカさんが婚姻の儀の事について教えてくれた。

 簡単に言うと私の寿命を延ばすための儀式だ。リュカさんの血に彼の魔力を込め、口移しで私がそれを飲む。そうするとリュカさんと同じ寿命を得る事が出来るらしい。但し、リュカさんが死んでしまうと私も同時に死んでしまうそうだ。




「龍族の寿命って基本どれくらいなんですか?」

「平均して8000年くらいだね」

「8000!?800じゃなくて!?」

「それだとほんの子供だ」

「リュカさんいったい何歳なんですか」

「…まだ言いたくない」

「えぇぇ。なんだか長生きする自信がなくなってきました」

「確かに急に長寿になるというのは戸惑うだろうね。安心して、そこもしっかりサポートするから」

「某もにゃ!」

『僕も!』




 珍しく姿を消していない文二が私のローブの中で声をあげる。続いて肩で休んでいた大福もだ。


 宿を数件回ったあと、リュカさんは足を止めて天を仰いだ。

 数分間一言も発さず空を見続け、私の方を見て一言呟く。




「帰ろうか、ルシェールに」

 



 その発言に私は当然「残りの仕事は良いんですか?」と問うた。





ブクマ増えてました!ありがとうございます!励みになります!

今話もよろしくお願いします。

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