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助けた人は龍で、騎士で、美形貴族  作者: たかむら
第三章 再出発します、龍の国
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見て欲しくて



 リュシアンと小春の想いが通じ合った後、世話師猫の文二が小春のローブの中に現れた。

 ようやく異世界の神との裁判が終わったようだ。

 世話師猫の文二は小春のスカートを引っ張り、三田尻の方へと促す。小春は世話師猫の言う通り三田尻の側まで移動し、ローブの中から文二が前足をだして彼女に触れた。すると三田尻の全身が光だし、徐々に光の粒となって消え始めた。


 周りの人々はリュシアンの微笑みを直視してしまったため倒れたままだ。

 今ここで倒れていない者はリュシアン、小春、大福、文二、それに三田尻のお気に入りの護衛二人だ。彼らは龍の威圧を食らったが辛うじて膝を着いている程度で済んでいる。

 リュシアンの美しい笑みを見ていなかったようだ。


 ちなみに龍族の微笑みに人を倒れさすような効果はない。

 それほど彼の美貌と、もともと持つ龍族の気高く美しい容姿が彼らの心に刺さったのだろう。



「三田尻さんが消えていってる…大丈夫なの?」

「ただいまにゃ。勝手にコハルを違法な手段で呼んだ代わりに此奴を元の世界に戻すのじゃ。此奴はヒト族を救っておるようで苦しめておる。その護衛二人も妹弟を人質に取られておるから仕方なく心を殺して護衛しておったのにゃ。にゃにゃにゃ、にゃー。んなぁ~んにゃ、なぁ~ん。にゃ」

「おかえり。最後全然何言ってるか分かんなかったごめん」




 世話師猫が伝えたかった内容をカーバンクルの大福が通訳し、リュシアンと小春に伝える。

 

 世話師猫が勝ち確と言っていたのは、この世界の神が頭を悩ませているある一つの大きな問題を解決する策を世話師猫が持っていたからだ。

 それは三田尻亜加を元の世界に帰す事。

 世話師猫は各世界の神々に東郷小春を違法な手段で連れてきた事を詫び、この世界の問題を代わりに解決してやろうと提案したのだ。


 現在ボラギン国は三田尻の我儘が原因で王派と宰相派に分かれ、財政も徐々に傾いている。世話師猫は内政悪化の原因の三田尻亜を帰す事で、幾つかの悲しい戦争を未然に食い止める事ができると訴えた。

 暗黒時代に起きた大戦争で酷く心を痛めていたこの世界の神は、これ以上悲しい戦争が起こる事を嫌い、世話師猫の案を受け入れた。通常なら神はヒト一人くらい簡単に異世界へと送る事ができる。だがこの世界の神は暗黒時代にほとんどの力を使ってしまったのでそれができない。また他世界の神が他世界の者を移動させる事もできないので、他の神々も世話師猫の提案を受け入れた。



 三田尻 亜加は小春と違い日本では勤勉だった。

 だらしない生活とは無縁の生活を送っていた。両親は厳しく、いつも完璧であれと育てられてきた。小、中、高、大学と常に成績トップで、就職先も一流企業。周りが恋や遊びだのと浮かれている時も常に彼女は両親の期待に応えられるよう勉学に励んでいた。

 彼女は天才ではない。

 努力に努力を重ね頑張って常に上に立っていたのだ。しかし両親はそれが当たり前だと言い、三田尻亜加を褒める事はなかった。叱られる事はあれど、頭を撫でられる事も、優しく温かい言葉を掛けられる事もなかった。

 彼女は両親からの愛に飢えていた。

 だから必死に勉強を頑張った。自分を見て欲しくて、必要として欲しくて。しかしそれが叶う事なく彼女はこの世界に召喚されてしまった。

 

 だからこそ、その反動で三田尻亜加は暴走してしまったのだ。

 聖魔法が使えるというだけで誰もが自分を必要とし、褒めてくれる。その心地良い環境、言葉、気持ちを誰にも奪われたくない、さらにはもっともっと心の隙間を埋めようと本当はしてみたかった恋愛にまで手を伸ばした。

 人への甘え方が分からない三田尻亜加は、どうやったら人が自分から離れていかないだろうかと考え、最終的に自分の機嫌を損ねると助けてやらないぞという最悪な結論に至った。彼女の側で最後まで護衛に着いていた二人は誓約魔法で妹と弟を人質に取られていたので、彼らはユメヒバナとは違い従うしかなかったのだ。

 

 三田尻亜加は天才ではないが、努力して培ってきた物がある。

 それは物事を理解し、覚えるスピードの速さだ。

 彼女は自分が必要とされ続ける為に、常に多くの魔法学に励んでいた。そこで誓約魔法や基本の風、土、火、水、木の五大魔法を覚えた。教えられずとも図書にある魔導書を読めば勉強慣れしている彼女の頭の中にはスラスラと入っていく。


 三田尻亜加は、誰かに必要とされたい、自分を見てもらいたい、認めてもらいたいと努力していた。だが、その方向性を間違えてしまったのだ。

 

 世話師猫の文二は三田尻亜加がこの世界に居ても満たされる事はないと断言する。

 彼女が求めているのは両親からの愛だ。この世界に居ても幸せにはなれない。

 

 最後の光の粒が消えていく姿を、その場に居る全員で静かに見送った。





「通訳ありがとう大福。にゃーの中にこんな大量に情報があったんだね」

『うん。コーの力になれて嬉しい』


感想ありがとうございますぅぅうう!!!

イイネやブクマもありがとうございます!!


おまけ~勝訴~


「46億も生きておる儂が異世界の小童に負ける訳あるめぇよ」

「おお~格好良いね文二。敗訴した異世界の神様には何かくだるの?」

「何もじゃ。どうにもならぬ」

「売られた喧嘩を買っただけという事か」

「うむ。早くコハルの世話を焼きたかったゆえ早々に帰って来た」

『そうなんだ。ちょっと遅かったね』

「にゃ?」

『数分前にリューシーとコーは結ばれたんだよ』

「にゃにゃ!?」

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