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助けた人は龍で、騎士で、美形貴族  作者: たかむら
第一章 いざ行かん、龍の国
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異世界はいつも危険がいっぱい



 運ばれてきた料理は鉄板の上にのったお肉と、深い皿から溢れんばかりに盛られたパスタ。それにエールと乳白色をした飲み物だ。エールはリュカさんので、乳白色の飲み物は私だ。

 乾杯はジョッキを持ち上げるだけで、音は鳴らさない。飲んでみると、甘くてヨーグルトに似た味がした。これはヤウールといって牛から出たミルクを甘く煮詰めたものらしい。


 お肉はワイルドベアーのステーキで、臭みも無く食べやすかった。これはどの宿屋にもあるメニューで、大抵の人が頼む料理らしい。そしてパスタは国や領によって味付けが違うだけで、調理方法は茹でて塩を振るだけ。塩辛すぎて私の口には合わなかったので、ほとんどをリュカさんに食べてもらった。



「ワイルドベアーってどんな生き物なんですか?」

「…どんな生き物だと思う?」

「ベアーって言うくらいだから生き様がワイルドな熊ですか?」

「ふふっそうかもしれないな。ワイルドベアーは主に単体で生息している。体長は凡そ2メートルで、全てを余すことなく使える。討伐時に出会えた時は皆、率先して倒しにいってるな」

「へぇーすごいですね」

「コハルもCランクになれば倒せるだろう」

「当分先ですね」

 


 食事の後は、明日の朝早くから移動するらしいので、早めの就寝をとることにした。お風呂は宿屋の一階に簡易風呂があるのでそこを借りる。男女別になっており、中にはシャワーが3つあって薄い板で仕切られている。シャンプーやリンス、ボディーソープ用の固い石鹸。あるだけマシと思い、使わせてもらった。

 久々の温かいシャワーに生き返るーと思いながら汚れを落としていく。髪も乾かし終えて廊下に出ると、濡れた髪のままのリュカさんが腕を組み、壁に寄りかかるようにして私を待っていた。


 い、色気の暴力!

 普段のリュカさんも美しいし綺麗だけど、今のリュカさんは妖艶さMAXで目の保養どころか、むしろ毒だ。歩く18禁。これは言ったら絶対ほっぺ抓られるだろうな。お口にチャックしよう。 



「早かったな」

「お、お待たせしました」

「こちらが勝手に待っていただけだ、気にするな」

「リュカさんは髪乾かさないんですか?」

「面倒だ」

「その内ハゲちゃいま、はッ!?すみません!」

「遅い」



 物凄い速さでリュカさんの手が私の頬に迫る。そしてぐいーっと引っ張られた。

 今回は私の失言のせいなので、甘んじて罰を受ける所存です。でも両頬は流石に痛いです。ジンジン通りこしてヒリヒリしてきました。


 リュカさんの気が済んだところで手を離してもらい、私達が借りた部屋へと階段を上がる。その際に、私の失言を気にしてなのか、リュカさんは指パッチンをして髪を一瞬で乾かしていた。良いなー魔法。

 

 龍で紳士で握力ゴリラなリュカさんは、私が部屋に入るまでエスコートしてくれた。おやすみなさい、と声を掛け、ちゃんと施錠をする。

 もしかして私の部屋まで来てくれたのは、私がちゃんと施錠するかどうかの確認だったのかな。もし施錠し忘れていたら、また頬っぺたを引っ張られていたかもしれない。流石に一日に何度も引っ張られるのは嫌だ。ちゃんと自衛に務めよう。





 少し硬めのベッドに背中からダイブする。久しぶりのこの感触にほっと、安堵の息が出た。

 この世界に来てからまだ2日。色々なことがありすぎて眩暈がしそうだ。願わくば、龍の国ルシェールに着くまでに日本へ帰れたら良いな。でもきっと、望みは薄いんだろう。沢山思う事はあるけど今は疲れすぎて上手く頭の中の整理がつかない。


 でも一つだけ、この世界に来て良かった事がある。 

 それはリュカさんを助けられた事だ。彼はちょっとよく何考えているか分からないし、握力ゴリラだけど、紳士的だ。身長は高く、足もモデル並みに長い。髪はサラサラで綺麗な銀色をしており、毛先にいくにつれ青みがかっている。瞳はガラス細工みたいに綺麗な紺碧色。しかも龍。

 

 まさか自分が龍と話す日が来るとは思ってもみなかった。 

 そういえばリュカさんのフルネームなんだったっけ?リュなんたら…ヴァ…なんとか、ヴァなんとか。ぐるぐると思考を巡らしていると、私はいつの間にか眠ってしまっていた。




――――――――――――――――




 声がする。

 リュカさんじゃない。聞いたことがない人の声。2人、いや3人?



「おい、本当にこのガキが大金持ってたのか?」

「ギルドで見たんだ。間違いねぇ」

「ガキ攫って金奪った後は売るか」

「その前にヤることヤっとこうぜ」

「それもそうだな」



 昨日死にかけたのに、もう死亡フラグが立ったよ。私の人生がハードモードすぎる。

 とりあえず逃げなきゃ。

 寝たふりをしながら無い知恵を振り絞り、逃げる算段を立てていたら、一人の男に私が起きているのがバレてしまった。私は抵抗する間もなく口に布を噛ませられ、体はロープでグルグルに巻かれる。そして二人の男が先導し、もう一人の男が私を俵担ぎにして窓から屋根へと移動した。 


 自分のこれからに絶望していると、男達の動きが止まった。


 

「チッもう連れの男に見つかったか」

「お前はその女連れて先に行け」

「オーケー、また後でな」

「先にその女食うなよ」

「ならさっさと終わらせて来いよっんじゃな!」

「俺ら二人が相手なんだ、瞬殺っしょ」

「つーかこの男の方が顔キレーじゃねぇか」

「本当だな、こいつぁ高く売れるぜ!」

「この女ももう少し可愛けりゃな」

「連れの男の方が上玉つーことはこの女に買われたのか?」



 確かにリュカさんは美しくて綺麗ですけども!何もこんな時にまで私をけちょんけちょんに貶さなくても良いんじゃないですかね!リュカさんの美貌は暗闇の中でも解るほど美しかった。



「雑魚はよく吠える」



 一瞬だった。

 私を担いでる男も吃驚して、足を止めてしまうほどに一瞬だった。リュカさんが【龍の霧氷(ドラゴンズジーヴル)】と呟き、掌に息を吹きかけると、キラキラした粒子が男2人を包み込み、一瞬にして頭の天辺まで氷漬けにした。

 

 私を担いでいる男は正気を取り戻し、宿屋の裏手にある大木に飛び移る。逃げる途中で私が邪魔になったのか、枝に乱雑に捨て置かれ、下方から鋭利な氷の柱が男に突き刺さり、彼は地面に落ちて行った。



「コハル、無事か?」



 下からリュカさんの声が聞こえる。



「はい、無事です!」

「降りて来い」

「え、何言ってるんですか。死んじゃいますよ私!」

「?先ほど落ちてきたヒト族の男は生きているぞ」

「それ本当に人ですか!?たぶん私こっちの人よりも脆いんで無理です」

「怖いのか?」

「怖いとか怖くないの問題以前に、人は2メートル以上の高さから落ちると普通は衝撃で中身が死んじゃうんですよ!」

「そうなのか!?」

「そうです!」




 リュカさんは私の所までジャンプすると、華麗に着地した。「助けるのが遅くなってすまない」と一声私に掛け、するすると縄を解いていく。そして、枝を飛び移りながら宿屋まで運んでくれた。

 

 助けに来てくれたのは嬉しいけど、宿屋に着くまでは私を横抱きにするとかではなく、腰に手を軽く添える程度だったので死ぬかと思った。浮遊感半端ないとかよりも安全バー!安全バーは何処ですか!?と叫びまくった。

 ジェットコースターとか絶叫マシーンは大好きだけど、セーフティーバーなしのフリーフォールは二度と御免だ。



「安全バーとは何だ?」

「急降下する鉄の塊に乗る時に必要な生命防護器具です」

「鉄の塊に乗って何をするんだ?」

「叫んだり笑ったり?」

「異世界は不思議だな」



ブクマや評価ありがとうございます。色々初心者なので、今日初めてブクマ、評価がされている事に気づきました。本当にありがとうございます。色々機能を探りながら書いていきます。完結までお付き合いいただけたら嬉しいです。

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