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助けた人は龍で、騎士で、美形貴族  作者: たかむら
第三章 再出発します、龍の国
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進化の時



 シキィロ横丁で宿を取り、明日は次の国へ向けて出発する。

 移動方法はまさかのダイビングだ。ダイビングと言っても私が知っているスカイダイビングとは違い、生命保護器具なんてものはない。根性と気合で着地するそうだ。

 この世界はそういうの多い気がする。

 



「そもそも翼を持たない種族が来る事を想定していないからね」

「なるほど」



 

 今回泊まる宿はいつもの様な簡素な宿でランクも中だ。

 でも国の特性なのかベッドや床がふわふわしている。椅子もふわふわしているので座ると身体のサイズに合わせて沈む。だから座り心地は良いけど、立つ時に床もふわふわしているので踏ん張りがきかない。

 体感が鍛えられそうだ。あと筋肉痛にもなりそう。

 


 早めに宿を取った私達は夕食を済ませ、珍しく私が先にお風呂をいただいた。だから今ベッドの淵に座って大福を撫でながら寛いでいる。

 文二が姿を現さないので不思議に思っていると、目のやり場に困るくらい色気ムンムンなリュカさんがお風呂から上がってきた。バスローブ姿で出てくるのは珍しい。というか本当に目のやり場に困るので早く服を着て欲しい。




「あ、そういえばリュカさんの尻尾っていつ触らせてくれるんですか?」

「いつでも良いが」




 そう言うとリュカさんは冷気を漂わせ、キラキラと光る粒子と共にドラゴンの尻尾を出現させた。

 そして私が座っているベッドの横に座り、私の膝の上に尻尾を乗せる。

 尻尾は龍体した時のサイズよりもかなり小さく、今のヒト姿に合わせて細長い。でも鱗の美しさは変わらずで光の加減によって銀や蒼色に輝いている。

 



「触っても良いですか?」

「いくらでも」

「うわースベスベ。ひんやりしてて気持ち良いですね」




 遠慮なく尻尾を撫でているとリュカさんが尾を動かし、私の頬を撫でる。しかも尾の先っちょを私の髪に巻き付けて遊んでいる。

 尻尾を自由自在に操るイケメン…か。

 一瞬何か違う扉を開きかけそうになった。危ない危ない。 




「尻尾にも感覚ってあるんですか?」

「ある」

「じゃあ踏まれると痛いですか?」

「まぁ、痛いだろうね。でも龍族やドラゴンの尾を踏もうとする輩はいないだろうな」

「踏んでみてもいいですか?」

「止めろ」




 冗談なのにまぁまぁ怒られた。

 リュカさんは怒っているアピールなのか尻尾を私から離し、ベッドにべしべしと叩きつけ始めた。その衝撃で鱗が一枚はがれてしまい、私は慌てて謝罪する。

 剥がれ落ちた鱗を拾おうと手を伸ばすと先に大福が鱗を拾いに走り、口に加えた。そしてリュカさんの膝の上に座り、クルルと鳴きながら自分の額にある石を前足で指した。

 何かをリュカさんに訴えているように見える。





「どうしたいんでしょうか?」

「もしかしたら進化をしたいのかもしれない」

「進化?」

「全てではないが、ある一定の条件を満たすと進化する動物や魔獣が存在する」

「この前害獣駆除したキモイガナとかですか?」

「あれは成長だな。進化は新しい生物に変化する事を言う。進化の条件は生物によって違い、魔石や土地であったりと様々だ」

「へぇー。カーバンクルは進化すると何になるんですか?」

「さぁ、なんだろうね。私も初めての事だから分からない。そもそもカーバンクルは臆病で人前に姿を滅多に現わさない動物だ。生態を詳しく知っている者はいないだろうね」






 大福の望み通り、リュカさんが自分の鱗をカーバンクルの額の石に近づける。

 すると大福が「キュッ」と鳴き、自分の体にビリビリっと電気を纏わせた。リュカさんも呼吸を合わせる様にして指先からキラキラと光る魔力を鱗と石に流していく。

 徐々に鱗が石の中に入って行く不思議な光景に、私は幼い頃にテレビで見たマジックショーを思い出していた。リュカさんならシルクハットを被ってハトを出してきても何の違和感もないな。あとファンが大勢いそう。


 完全に鱗が石の中に入ると大福の全身が球状の吹雪に包まれ、一瞬だけ強い光を放ってから私の膝の上に着地した。


 今の大福の姿はいつもと違い、ふわふわな羽が生えている。

 まるで天の使いのような愛らしさだ。

 しかも耳の先と尻尾の先が淡い黄色から水色に変化している。額の石自体は変わらず金色に輝いていて、その中にはリュカさんの鱗が入っている。

 




「かっ可愛い!もっふもふのふっわふわですよリュカさん!」

「これがカーバンクルの進化か。本当にコハルと一緒に居ると驚きが絶えないね。旅をしていた時以上だ」

『やっと喋られる。コー、リューシー』





 進化した大福を撫で繰り回していると、頭に直接幼い子供の声が響いた。

 もしかして、いや、もしかしなくても大福の声?





「この声って大福ですかね?」

『そうだよ、僕はダイフク。コー、僕を助けてくれてありがとう。ずっと伝えたかったんだ』

「進化すると念話ができるのか」

『それは違うよリューシー。リューシーの鱗だから出来たんだよ。リューシーはドラゴンになった時でも話せるようにコーに鱗の耳飾りを渡したでしょ?僕も二人と話したかった。だからリューシーの鱗を取り込む必要があったんだ。それにコーの古の御業で生まれ変わっている僕は天使族が住む国でしか進化できなかったから、この国でリューシーの鱗を貰って進化しないとずっと二人と喋れないままだったんだ。コーがリューシーを怒らせてくれて本当に良かったよ』





 最後の一言だけ複雑だ。

 やっぱりリュカさん怒ってたんですね。すみません。




 進化したカーバンクルの大福は翼をはためかせながら私とリュカさんの肩を行き来し、嬉しそうにお喋りを始める。

 リュカさんの鱗を額の石に取り込んだ事により使える魔法が増えたそうだ。 

 大福が使える魔法は雷と雪。

 リュカさんの鱗を取り込んだのに氷の属性じゃないんだと私は驚いた。

 




「私もリュカさんの鱗を食べると強化できますかね?」

「ニンゲンは進化する生き物なのか?」

「いや、しませんよ?成長だけです」

「では止めておけ」






 話が終わるとリュカさんが私の腰に尻尾をくるっと巻き付け、彼自身も私に寄りかかる様にして体重を預けてきた。

 不意に来たその重みに私は耐え切れずベッドに倒れ込む。しかしベッドがふわふわな為、何の衝撃も無かった。それにリュカさんが私の腰に尻尾を巻き付けたままなので、倒れ込む際にぎゅっと尻尾で支えてくれていた。

 



 現在、私はリュカさんに押し倒されている。



 

 私がベッドに倒れ込んだのと同時に、彼もそのまま私に覆いかぶさってきたのだ。

 大福は翼をはためかせながら『これがシャッターチャンスなんだねブンジ!』と言ってはしゃいでいる。色々と言いたいことはあるが、今はそれどころじゃない。リュカさんのはだけたバスローブから見える逞しい肉体美に頬の紅潮が止まらない。

 目を、目を逸らさねば!





「ふふっこのまま深く交わってしまいたくなる距離だな」

「リュカさんアウトォォオオオオ!!!」






 流石に比喩表現が苦手な私でもそれは分かります。




イイネやブクマありがとうございます!!(*´ω`)


おまけ~文二の行方~


「文二どこに行ったんだろうね」

『裁判中だよ』

「え!?どういう事!?」

『なんか勝手に異世界を行き来した事がバレたとかで争ってるって言ってた』

「裁判相手とは異世界の神か?」

『どうだろう。僕はブンジから「勝ち確だから安心して待っておれ」としか聞いてないんだ』


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