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助けた人は龍で、騎士で、美形貴族  作者: たかむら
第三章 再出発します、龍の国
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リュシアンの説教



 私達はキモイガナという害獣を倒した後、宿に戻った。

 害獣が暴れまわったりウメユキさんが放った毒魔法のせいで森は激甚なダメージを受けている。だから私はリュカさんに見つからない様に古の御業を使った。いつもならすぐに木々や草花がニョキニョキと生えてくるけど、今回は祈りの際に「大地を傷つけてごめんなさい。どうかまた芽吹いてください。あ、でも10分後くらいに生えてきてほしいです。よろしくお願いします」というなんちゃって祝詞で大地に祈りを捧げた。

 だからあの後、荒れ果てた森がどうなったかは見ていない。

 

 報告はウメユキさん一人が行き、ブルリモン国の宰相メッシ・イケメンデスさんと一緒に現場確認も終えている。森には害獣と闘った痕跡が一つもなく、むしろ以前よりも生き生きと木々や草花、新たな精霊までもが宿っていたそうだ。精霊が木々に宿る事はそう簡単な事ではなく、ウメユキさんは国王と宰相にいたく感謝され、報酬を5倍以上も頂いたらしい。


 私は現在リュカさんに絶対零度の笑みでお説教を食らっている。

 もちろん勝手に古の御業を使った事がバレたからだ。

 部屋には私とリュカさん、大福と文二だけだ。ウメユキさんは荒れた大地が今まで以上に緑が生い茂る元気な大地へと変わった理由を知りたそうにしていたが、雰囲気を察して任務が無事に終了した事だけをリュカさんに伝えて退出していった。フィーさんとユメヒバナさんは今、昼食の買出しに出かけている。





「古の御業を使うなとは言わない。だが使用する前に一言私に声をかけて欲しかった」

「はい」

「今回はこの国の宰相が王に相談し報酬が増えただけで済んだが、普通なら精霊をどう呼んだのか、そしてどう宿らせたのか、そもそも広範囲にも渡る木々や草花の生成は誰がどんな魔法でやったのかを聞いてくるはずだ。最悪の場合、私達を国から出さないだろう」

「?そうなんですか?」

「ああ、そうだよ。それくらい古の御業は特殊なものなんだ。失われた魔法として研究していた者もいたが文献が少なすぎて誰も全貌を掴めずに止まっている。だからこそコハルが使用できるとバレてはいけない」

「へぇー」

「あの森はこの国の観光名所の一つになるだろう」

「じゃあ私は良い事をしたって事ですね!」

「…反省の色が無いようだなコハル」





 思いっきりぐいーと頬っぺたを伸ばされ、私はヒリヒリする両頬を手で押さえた。

 儚いとか弱いとか脆いとか言うくせに、頬っぺたを伸ばすのは止めないんですねリュカさん。

 今の説明で古の御業が失われた魔法として研究されるくらい凄いものだとは理解できたけど、何で木々や草花が生えたくらいで驚くのかが疑問だ。この世界は魔法が使えるから、誰でも普通に生やす事が出来るんじゃないかと思う。




「リュカさん質問です」

「どうぞ」

「木属性魔法が得意な人なら誰でも木々や草花を簡単に生やす事ができるんじゃないですか?」

「木々や草花を増やす事はできても範囲はせいぜい1mにも満たない。コハルの場合は広範囲だっただろう?あの範囲を木属性でやるとなると賢者クラスだ」

「えええ!?賢者!?」

「しかもその木々や草花に精霊まで宿っているようだから大賢者以上、いや神の御業の域になる。そもそも精霊はそう簡単には宿らないし、大地にも中々根付かないものだよ」

「へぇー、精霊が宿るのってそんなに凄い事なんですね」

「うん。普通は精霊に出会う事すら難しい。だから祝福されるなんて事は滅多にないし、その精霊を草木に宿すなんて事は古の御業でしかできない」

「あれ?じゃあリュカさんは色んな精霊に祝福されてるから超珍しいって事ですか?」

「コハルもね」





 そもそも命を吹き込む魔法は簡単にできる事ではないそうだ。命を奪う事は容易くできるからこそ、『古の御業』が実際に存在すると知られたら争いの元になると再度強く説明された。

 リュカさんも命を吹き込む魔法は使えない。

 だが生命を吸い取る事は息をするように簡単にできる。実際にリュカさんが部屋に飾ってある植物に触れると、触れた場所から枯れ始めた。




「『絶望よりも深い死を与えよう』とか言わないんですね」

「コハルは私を何だと思っているんだ。そんな事は言わない。それに絶望より深いものは永遠の命だろう。時は移ろいで行くのに一人だけ取り残されて生きていくのは絶望といった言葉では表し切れないほどの恐怖だと私は思う。出会いはあれど、見送ってばかりいればいずれ孤独に耐えかねて心を壊す日が来るはずだ」

「リュカさんと話してるといつも内容が壮大になる…」

「コハルがあまりにも考えなさすぎるのではないか?…いや、短命がゆえに人生について深く考える暇など無かったのか」

「えぇぇー、失礼な。ちょっとは考えてましたよ」

「コハルのちょっとはちょっとじゃない」

「むしろリュカさんのちょっとが分からないです」

「…」

「秘密ですか?」

「ああ。年数を言うとまたコハルに爺扱いをされるからな」

「しませんよ」

 



 何故か頬っぺたをぐいーっと引っ張られた。何故。

 皮膚がたるみそうなんで止めて欲しい。

 リュカさんの気が済んだ所で私は枯れた植物に触れ、祈りを捧げる。今度は精霊が宿らない様に気を付けて言葉を選んだため、植物は元の姿に戻っただけで済んだ。




ブクマとイイネ増えてましたぁぁああ!ありがとうございます!感謝!!!!


おまけ~ウメユキと宰相~


「こっこれは素晴らしい!!!!見た事もない花まである!」

「(ほんまやわ。こんな芸当できるんは、コハルはん…やろうな。でもリュカ君に聞いたかて話反らされて終いになりそうやわ。コハルはんに聞いても無意識の可能性もあるしなぁ~)」

「せせせせ精霊まで!?」

「!?…キモイガナ居ったて知られたら観光客減りますやろ?せやから色付けときました」

「ぁぁああありがとうございます!ありがとうございます!!すぐに王に知らせます!最上のおもてなしを!」

「おおきに」


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