表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
助けた人は龍で、騎士で、美形貴族  作者: たかむら
第三章 再出発します、龍の国
60/125

リュシアンの秘密



 リュシアンは次の国『ブルリモン』に着くまでの道中、小春の自分に対する感情の変化に喜んでいた。

今まで以上に言葉や態度で愛していると伝える事によって、小春はリュシアンの気持ちを真摯に受け止め、恥らいながらも最初の頃よりはリュシアンの行動や言葉を受け入れ始めている。しかし彼女はまだ『お手付き』や『愛し子』の意味を理解しきれていない。その意味を知った時、どういう反応をするのだろうかとリュシアンは彼女の頭を一撫でした。




「どうしたんですか?」

「いや」




リュシアンが触れると小春は必ずいつも何かあったのかと問いかける。

用がある場合はそのまま会話を始めるが、ここ最近は微笑み返すだけで終わっている。

そしてそのリュシアンの綺麗な笑みに小春は赤面する。

彼女はドストレートな表現や男性からのスキンシップに慣れていない。

だからこそ頭を一撫でされただけで熟れた林檎の様に頬が赤く染まり、彼が抱きしめれば彼女の鼓動は急激に早まる。『お手付き』という言葉も『お手付きをされている』という事実も知っている小春が、毎夜自分が深く口付けをしていると知ったら怒るだろうか、照れるだろうか、とリュシアンは小春のその赤く染まった頬を一撫でしながら考えた。



『お手付き』と『婚姻の儀』とは、口付けを交わすが似て非なるものだ。

『婚姻の儀』は龍族が魔力を込めた血を口移しで相手に飲ませると、その相手が己の種族を越えた寿命を手に入れ、婚姻の儀を交わした龍族と同じ寿命を得るが出来る。但し、婚姻の儀を交わした龍族が死んでしまうと自分も一緒に死んでしまう。つまり運命共同体になるという事だ。


対して『お手付き』とは、守護魔法である。本来は番になる相手の承諾を得て体液を送り込むものだ。

主に口付けが多く、力の弱い方の身体に相手の家の刻印が現れる。そして刻印を刻まれた者が襲われた時、刻印にかけられてある術が発動し相手を呪い殺すという龍族最強の守護魔法だ。しかし、相手の承諾を得ていない場合の『お手付き』は時間が経つにつれ守護魔法の力が弱まる。また、その効力を持続させるためには定期的に体液を送り込む必要がある。


リュシアンの場合は小春の身体が消えかかっており、グリフォンからこの世に適応できずに消えかかっているので何かこの世界の物を食べさせろと知恵を授かったため、咄嗟に口付けて自身の唾液を小春に飲み込ませた。その事により『お手付き』となっている。しかし、相手の承諾を得ていない『お手付き』は前述のとおり効力の持続時間が短いため、リュシアンは彼女を守るために小春を魔法で眠らせたあと毎夜口付けをしている。

これがハイエルフとエルフの子、エディツェミハエル・イエルバが言っていた「体が消えかかっているがリュシアン様のお陰で無理矢理この世に縛りつけられてる」という状態に繋がるという訳だ。

ウメユキが前に発言した「絶対重ね付けしとるやろ」とは、刻印の濃さと口付けの時間が比例するためである。

リュシアンは最初こそ触れるだけのキスで終わっていたが、旅をしていくうちに本気で小春に恋焦がれ、旅が長くなるにつれ毎夜深くねっとりとした口付けを重ねていくようになった。なのでウメユキが小春の身体に魔力を流した際、刻印が濃く深くはっきり表れたのである。

本能的なものもあるが、この世界において儚く脆い小春を守るためにリュシアンはお手付き(口付け)をし、幾重にも防御魔法を掛けるようになった。



ここでズレが生じてくるのが『番』だ。

リュシアンは「龍族に番はない」と言っていたが、正式にはある。いや、昔はあったのだ。

今はウメユキが生まれているように、龍族が多種族と交わる事が増えている。といっても極稀なケースではある。

暗黒時代が明け、より深く森の民エルフや、ドワーフ、魔族と交流を持つようになった龍族は知識を得、徐々に本能で番を探すのではなく己の知的好奇心や力で相手を見初めるようになっていった。そもそも番という言葉に明確な定義などない。理性では抑えられない運命の相手という者もいれば、媚薬のような危険な香りと称する者もいる。

ロマンチストの龍族であれば「君は運命の番だ」と告白する者も未だにいるが、最近では少ない。リュシアンは『番』という不確かな言葉ではなく、自分自身が小春を好きなのだと伝える為にその言葉は使わなかった。また、獣人である兎族は年中発情期であり『番』の数も多い。故に国全体が色街と化しており、兎族が主に暮らしている国は一夫一妻制ではない事が多い。

小春が暮らしていた国は世話師猫の文二により一夫一妻制と聞いていたリュシアンは、小春は自分の番だと伝えた場合、兎族のように龍族も何人も番がいるのかもしれないと誤解される事を防ぐ為、何としても『番』という言葉だけは避けて「自分の意思でコハルを愛している」と伝えている事に拘っている。

だが、小春はあまり頭が良くないのでリュシアンの気持ちの半分も伝わっていない。







「リュカさんはブルリモンに行った事ありますか?」

「何度か」

「楽しかったです?」

「楽しかったかどうかは記憶していない。刺激的な国だったとは思う」

「リュカさんが刺激的というくらいだから私にとっては凄い衝撃が待ってそうな国ですね。ところで何年前にブルリモンに行かれたんですか?」

「にひゃく…忘れた」

「えええ!?嘘だー!絶対年数言いたくないだけですよね!?でも200年前には訪れた事があるって事は…リュカさん200歳以上なんですね」

「…」

「あれ?でもリュカさんの邸で会ったエド君は153歳って言ってたから、もっと上のはずですよね?300歳くらいですか?」

「黙秘する」

「駄目です」

「…そんなに私の年齢が気になるか?」

「はい」

「もしや、年齢を理由に私の告白を断るつもりではないだろうな。それでは納得しないからな」

「そんな理由で断ったりしませんよ!それに、私が住んでいた国でも年の差婚とかありましたし」

「年の差婚?」

「年齢が離れている人の結婚の事です」

「そうか。コハルが暮らしていた世界では平均寿命が80と言っていたから、年の差婚とは50歳差くらいか?」

「あぁ~流石にそれはちょっと無いですね」

「では一般的には何歳差くらいが多い」

「ん~5から10歳差くらいですかね?」

「そんな短い年数で差を刻むのか…」

「で、リュカさんは何歳なんですか?」

「それは永遠の秘密だ」

「えぇぇ~」

「ちなみに文二は?」

「46」

「46歳かぁ、上司くらいの年齢だね」

「違うにゃ」

「あ、4歳と6か月?」

「46億歳である」

「え?おく?億ゥゥウ!?え!?地球と一緒の年齢じゃん!え!?凄ッ!!」





小春はこの時初めてグリフォンのテオが千年以上生きているがまだ子どもだと言っていた意味を理解できた。








キャー評価とブクマ、イイネがまた増えてました!ありがとうございます!!

久々に1話から読み返してみたのですが、自分でもよく分からん不思議な世界が出来上がってしまったなと思ってます( ᐛ)パァ。ここまで読んでくださってありがとうございます!次話でやっと久々にユメヒバナとフィーの登場です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ