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助けた人は龍で、騎士で、美形貴族  作者: たかむら
第三章 再出発します、龍の国
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氷の国アッシヒューレ



 アッシヒューレに到着する前に、文二がさげている鞄から二着の服を取り出した。

それはまさかの私とリュカさん用の手編みコートと帽子で、初めて世話師猫らしい事をしてくれたと思った。




「ありがとう文二」

「にゃっ!」

「いつの間に編んでたんだろう」

「コハルが眠っていた時だ」

「えっそうなんですか!?文二が編み物してる姿見たかったなー」

「私も練習をすればマフラーくらい編める」

「張り合わないでくださいリュカさん」




文二が編んでくれたコートを着てからローブを羽織り、リュカさんが私の頭に帽子を被せる。

リュカさんも同様に手編みコートと帽子を着用し、最後に特務隊のローブを羽織った。

もこもこしているリュカさんも格好良い。

やっぱりイケメンは何を着ても似合うんですね。羨ましい。


文二もお手製の手編みコートを着て、大福には手編みのベストを着させている。

もこもこ姿の二匹も可愛いけど、なんてったって一番可愛らしいのは文二が短い手足で大福のお世話をしている姿だ。

最高に推せる。




「この毛糸チクチクしなくて良いですね。何の糸ですかね?」

「にゃっにゃーんにゃっ!」

「キュキュー?」

「にゃあー!」




文二がジェスチャーをして大福が相槌を打つ。

全くなんの動物のジェスチャーをしているのか分からないけど、とにかく二匹が可愛い。あと真剣にその様子を見ているリュカさんのイケメンレベルがカンストしている。

私はやっぱりこのメンバーの中でだいぶ浮いてる気が・・・いや、深く考えるのは止めよう。

心に大ダメージを負いそうだ。




「つり目で歯が剥き出しか…」

「??文二が威嚇してる時の話ですか?」

「いや、違うよ。この手編みコートに使われている動物の事だ。それに世話師猫が威嚇する時はまず毛を逆立てている」

「ほぉ~」

「こんなに大量の毛を採取できるつり目で歯が剥き出しの生物となると、うどんマンモスか毛長(けなが)幼虫だな」

「うど、え?うどん?マンモス??とりあえず毛長幼虫じゃありませんようにと祈るばかりです」

「毛長幼虫は見た目はグロテスクで酷いが妖精だよ。出会うとダメ出しをしてくれるんだ」

「また出ましたね不思議生物。毛長幼虫が見た目グロテスクな妖精というのも気になりますが、うどんマンモスも気になります。どんな生物ですか?マンモスなら私が居た世界にも大昔でしたら生きていたので似ているかもしれません」

「マンモスがか?それは凄いな。うどんマンモスは残念ながら私もまだ会った事はない。文献によると白く美しい毛並みの巨大生物らしい。歯が剥き出しになっているので歯茎が乾燥して困るから目がつり上がるほどうどんを食しているそうだ」

「うどんが体から生えている訳じゃないんですね」

「ふふっコハルは面白い発想をしているね」

「えええ!?だってこの世界の動物がおかしすぎるから、えーっと」

「別に責めている訳ではないのだから、コハルの好きなように話してくれ」

「なんか私がオカシイ奴みたいな前提で話すの止めてください」





アッシヒューレという国は吹雪の中にある国で、主に氷が主食だそうだ。

氷が主食というくらいだからヒト族ではないのだろう。

どんな種族が住んでいるのかワクワクする。攻撃的な種族だったら嫌だなぁ。


そんな事を考えながら歩いていると、徐々に吹雪いてきた。

アッシヒューレが近いという証拠だ。

そして歩く事数分、今私達は猛吹雪の中にいる。

普通だったら吹き飛ばされそうで怖いけど、リュカさんが防壁魔法で守ってくれているので安心して進めている。

最後にひときわ強い風と雪が襲い掛かってきた後は、急に風と雪が同時に止んだ。




「此処がアッシヒューレだ」




眼前には白梅に囲まれた氷の王国があり、その美しさに息を吞む。

ただ一言、美しいという言葉に尽きる。

寒さは意外と肌寒いくらいで、入国する前の寒さは全くと言っていいほど無い。





「綺麗…」

「そうだな。でも長居はしないからね」

「はい。あれ?そう言えばいつの間に入国したんですか?」

「最後に一際強い風が吹雪いただろう?あれがこの国の結界だ。この国は我々の国と同様で入れるものなら入って見ろというスタンスだ。だからカードは見せなくて良いよ。見せる場所もないしね」

「勝気な国が多いんですね」

「それだけ自国で成り立っていけるという証だ。ルシェールもアッシヒューレも自力で入国できた者にはそれなりに歓迎している」

「それなりに…。因みにこの国にはどんな種族の方が住んでいるんですか?」

「ピスキーという小人族だよ。ヒト族では妖精の一種として言い伝えられている」

「言い伝えられている??」

「ピスキーも他国に行く事はあれど、その国には長居しない種族だからね。特にヒト族が住む国には姿を現さない」

「どうしてですか?」

「見つかれば小瓶に入れられ照明として扱かわれるからだ」

「え゛」

「ピスキーは魔法でなく、自分自身を発光させる体のつくりをしているからヒト族からしたら珍しいのだろう」

「えぇぇー」





この世界のヒト族は私の知っている“ヒト”とは違うのかもしれない。

魔族のヴェルゴナさんもヒト族には気を付けて旅をするんだよと言っていたし…。

もしリュカさんの任務の中にヒト族の国があったら、ちょっと憂鬱だな。



前話読んでくださってありがとうございます!今話もよろしくお願いします!

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