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助けた人は龍で、騎士で、美形貴族  作者: たかむら
第三章 再出発します、龍の国
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鉱石の国ゴーラントバーデンとアトリエ

沢山誤字脱字のご連絡ありがとうございますぅぅぅぅううううううう!めちゃめちゃ助かりました!本当にありがとうございます(`・ω・́)ゝ




  話もひと段落したところで小料理屋を出た私たちは、ヴェルゴナさんの案内でアトリエへと向かう。

 小料理屋からアトリエまでは歩いて30分程度で周りには特に何もなく、風で木の葉が揺れる音がする程度だ。誰にもすれ違わなかったし此処には住んでいる人が居ないのかリュカさんに聞くと、今はドワーフ達の仕事時間だから誰とも出会わないんだよと教えてくれた。ドワーフは真面目で勤勉らしい。


 このゴーラントバーデンという国はとても落ち着いた雰囲気がある。日本の田舎みたいに長閑で、唯一はっきり違う所といえば虫やカエルの鳴き声がしないところだ。その代わり木琴のような音がする。音楽が流れている訳ではなく、子供が適当に木琴用のバチで叩いてるような音だ。





「たまに聞こえるこのポーンとか、ポロロンって優しい音は何ですか?」

「鉱石が折れる音だ。成長しすぎた鉱石や寿命を迎えた鉱石が大地に向かって音を奏でている」

「へぇ~」






 リュカさんからザ・異世界という感じの返答を頂いた。

 石にも寿命があるのか。


 ところで、このゴーラントバーデンという国はとても歩きやすい地面をしている。

 入国する前にリュカさんが良質な鉱石が沢山採れる国だと言っていたので、私はてっきり地面が岩肌のようにゴツゴツしていて、さぞ歩きにくい地面なんだろうなと想像していた。だが実際には柔らかい土と星形のふわふわとしたコケが生えているだけだ。

 中でも一番びっくりしたのは空。鉱石を生やした木が空を覆うように生えているので陽の光が全く入ってこない。だけど鉱石から漏れるオーブみたいな光が辺りを照らしているから全然暗くない。むしろ幻想的で目に優しい。困ると事と言えば時間帯が分からない事くらいだ。



 アトリエに着くまでの道中、ふわふわのコケの上で眠っている動物を見つけてはリュカさんに質問しまくった。だいたいの動物が額や背から鉱石を生やしており、すやすやと眠っている。

 特に目にした回数が多かったのは頭に鉱石を生やしたペカリスというリスみたいな動物で、この国独自の進化を遂げたリスらしい。パステルカラーの毛色がなんとも可愛らしく撫でてみたい。



 ウッドハウスのようなアトリエへ着くと、ヴェルゴナさんがこれから一ヶ月間私たちが滞在する部屋まで案内してくれた。アトリエは2階木造建てで出来ており、1階が作業場で2階が居住スペースとなっている。客人も招けるよう部屋は5室もあり私達はその内の一室を借りる。

 何故こんなにも部屋があるのに私とリュカさんは同室なんだろう。凄く気になる。







「リュカさん、男女で同室は良くないんですよね?」

「一般的にはな。だがヴェルゴナには事情を説明してある」

「寒がりだから同室にしてほしいって言ったんですか?」

「違う。私はそこまで寒がりではない」

「じゃあ何て説明したんですか?」 

「…秘密だ」

「その微妙な間が気になります」







 リュカさんは本当に教えてくれる気がないようで、ヴェルゴナさんにキッチンやバスルームの場所は何処かと聞きに行ってしまった。

 私達が泊まる部屋は他の部屋よりも一際広く、大きなベッド、机、椅子、水洗トイレ等がある。アトリエの外観と同様に部屋の内装もウッド調で落ち着いた雰囲気があり、まるで大金持ちの別荘に居るかのようだ。そして何といっても嬉しいのがバルコニーにあるハンキングチェアだ。ゆらゆらと揺れる籠の中には白いクッションまである。

 昨日まで巨大な軟体動物が襲ってくる危険な船旅や、湿気が多くてゾウが踊りながら暴れまくる国を旅していた私へのご褒美なのかと勘違いしそうになるくらい豪華な部屋だ。


 そんな素敵でおとぎ話に出てきそうなくらい可愛らしい部屋にテンションが上がってしまった私は、肩に乗せている大福と一緒にハンキングチェアを初体験しようと戸に手をかける。すると私が側に居ない事に気づいたリュカさんが慌てて戻ってきて私と大福は森林浴する事無く1階のアトリエへと連行された。


 アトリエの壁は何故かウッド調ではなくステンドグラスで出来ており、製作途中と思われる作品がいくつも置いてある。

 エキセントリックワニを彷彿させるようなアグレッシブなワニの作品を見ていると、ヴェルゴナさんから声を掛けられた。





「気になる?」

「えっと」

「ふふ、作りが荒いでしょ?僕はまだ90年目の駆け出しなんだ」

「90年目で駆け出しなんですか?」

「そうだよ。コハルちゃんの種族だと90年目は修行中になるのかな」

「うーん、もはや生きてるだけで凄い域です」

「どういう事?」

「言っただろう。コハルは短命で儚いと」

「ま、まさか寿命が100年だなんて言わないよね」

「100歳だと長寿な方ですね」

「そ、そんな…。リュシアン君!悠長に仕事している場合じゃないよ!」

「それは分かっている。だからコハルと旅をしているんだ」

「余計意味が分からない!」








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