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助けた人は龍で、騎士で、美形貴族  作者: たかむら
第三章 再出発します、龍の国
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初めての船旅



 船着き場に行くと、リュカさんが言った通り船が三隻停泊していた。

 一つは貨物船、もう二つは旅客船だ。旅客船の内一つは煌びやかに装飾されており、いかにも御貴族様が乗るような船だ。もう一つは冒険者や商人、一般の人が乗る普通の船に見える。


 子供たちからお礼に貰ったチケットを使い、私たちは普通の船に乗る事にした。

 客室はまあまあランクの良い部屋をリュカさんがとってくれて、簡易シャワーとトイレが部屋の中に付いている。ベッドはダブルベッドで1台しかない。そのベッドに大福が私の肩からぴょこんと降り、丸まって寝始めた。

 世話師猫の文二はいつの間にか姿を消している。きっとまた次の国かどこかでしれっと姿を現すだろう。


 船旅が初めての私はとりあえず椅子に腰をおろし、何をしたら良いのか分からなかったので窓から外を眺める。





「結構揺れますね」

「気分が悪くなったらすぐ言うように」

「はい。分かりました」

「そういえば、小春は乗船経験はあるのか?」

「ないですね。船を間近で見るのも今回が初めてです」

「そうか。では注意事項も含め船内を案内しよう」

「救命胴衣の場所とかですか?」

「?。そんなものは無い。しいて言うなら海から襲ってくる生物に捉えられないようデッキの端に寄らない事くらいだ」

「船旅も命がけなんですね」







 はぐれない様にという理由で手を繋がれ、リュカさんが先導して歩く。

 彼は部屋を出る前にローブのフードを深く被り、私にもフードを被るようにと指示してきた。いつもならそんなに強く私にフードを被れと言ってこないのになと思っていると、海風で髪がギシギシになるのを防ぐ為だと教えてくれた。美容にも気を使ってるなんて流石です。どこまで美しくなるつもりなんですか。



 船のデッキに出ると海面からタコの足みたいな触手がにょろにょろと暴れており、何人かの冒険者がその足に巻きつかれている。

 現在戦っている真っ最中だ。私はその光景に驚き足を止めてしまった。

 だけどリュカさんは平然と指をさしながら『ほらね』と言ってきた。

 え、ほらねのレベルじゃないですよ。髪がギシギシになるとか心配してる場合じゃない。





「助けないんですか?」

「あれくらい自分たちで何とか出来るだろう。彼らは冒険者だ」






 本当にリュカさんは手を出すつもりがないようでスルーして歩く。

 私は彼に手を繋がれているので当然この異常な光景を見ながら歩かなければならない。なのでこれは映画の撮影だと自分の頭を洗脳させて何とか耐えようとした。だが、時たま冒険者たちによって切り落とされた触手がデッキに飛んでくる。流石に怖すぎて泣きそう。


 船の全体図や周辺一帯の地図が張ってある部屋まで着くと、リュカさんがそれらを指さしながら説明を始める。

 まず、今回の私たちの船旅は次の寄港地までで、順調に行けば3日で着くらしい。ただ、現在冒険者の人達が戦っているように海にもやっかいな生物がいるのでそう簡単にはいかないそうだ。





「やっかいな生物って今戦っているような魔獣ですか?」

「あれは普通の動物でテヤンデイレッグという名前の生き物だよ。ハードボイルドベアみたいな普通の動物だ」

「あれが普通の動物の枠内に入るんですね」






 この世界の普通がよく分からなくなってきた。

 テヤンデイレッグとはどこの海にでも生息しているタコみたいな生物で、足がなんと100本もあるらしい。ヒト族が好んで食べる食材だとリュカさんから説明を受けた。



 そして次に船内の話にうつる。

 この船には1,2,3階に客室があり、4階には大きな食堂がある。デッキにはベンチ等、寛げるような物が置いてあり、基本的には冒険者と思われる人たちが体を休めているらしい。

 何故冒険者の人たちがわざわざデッキで体を休めているのかというと、航海中に倒した動物を4階にある鑑定所に持っていくと買い取ってくれるからだ。移動中も収入が得られるので冒険者の人達は部屋を取って休むという事はまずないらしい。場合によっては捉えた動物が調理され、食堂に出される事もあるそうだ。


 船が動き出しでからもう3時間が経つ。

 私は初めての船旅だが全く船酔いにはなる兆しはなく、とっても元気だ。冒険者の人達は船旅にも慣れているのかなと思ったけど、何処からかたまに『おぇー』という呻き声が聞こえてくる。頑張れ。






「リュカさんは船酔い大丈夫ですか?」

「問題ない。コハルはどうだ」

「私も大丈夫です」

「意外だな」






 リュカさんが少し目を見開いて驚く。

 私の事を儚く脆い存在だと思っているリュカさんは、私がどこまで儚い存在なのか測りかねていると言う。





「そう簡単には死なないですよ」

「海に落ちてもか?」

「うーん。ただ海に落ちるだけでしたら大丈夫かもしれません」

「?」

「打ち所が悪いと死ぬ可能性があるという事です。運が良ければ怪我程度で済みますよ」

「運が良くて怪我程度…か」

「こちらのヒト族の方もそうじゃないんですか?」

「運が無くても無傷で済む。やはりコハルは冒険者に向かないな。ルシェールに帰りたくなったらいつでも言ってほしい」






 リュカさんは本当に心配なようで私の目線に合わせて自身を屈め、ルシェールや自分の邸の安全性について熱く語ってきた。だがそんなリュカさんを他所に、やっぱり私は外の異常な光景についていけず一言も耳に入ってこなかった。夜もこの戦いって続くのかな。









2年ぶりくらいの投稿です。部署異動やら何やらで仕事覚えるのに必死でした( ;∀;)

まだ読んでくださる方がいらっしゃったら嬉しいなぁ~。

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