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助けた人は龍で、騎士で、美形貴族  作者: たかむら
第四章 戻ってきました、龍の国
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入国チャレンジ!



 天空にあるヴァンパイアの国(ベガスドキュール帝国)へはリュシアンが風魔法で全員を運んだ。小春は大きくそびえ立つ幾つものスロットマシーンを見て驚愕する。



「でっかーー!!!ビル何階建てぶんですか!?」

「びる?とやらはよく分からんが小春がどれくらいの大きさを想像していたのか気になるな」

「80cmくらいです」

「それは…随分と小さい」

「これが大きすぎるんですよ」



 小春が目にしているスロットマシーンは全長333mあり、ヴァンパイアの国(ベガスドキュール帝国)を囲うようにして何百台と設置してある。この国に入国したければスロットマシーンにある3つのリールにコウモリ図柄を揃えなければならい。揃える事ができた者には【ベガスドキュール帝国へようこそ】と書かれてあるパネルが開き入国出来るようになっている。


 リュシアン一行は一つのスロットマシーンの前に立ち、音声認証システムを起動させた。



『挑戦者ヲ確認。Are you ready guyz?』

「望む所だ」

「自分も準備はできています」

「もうやるんですか!?うわ~ドキドキしてきました!」



 小春一人だけが浮かれ、リュシアンとシルヴィは真剣な眼差しでスロットマシーンを見る。

 彼らの両隣には既に冒険者の(なり)をした者達が挑戦を始めており、多彩な攻撃魔法を繰り出し図柄を停止させている。だが高速で回転するリールにコウモリ図柄を止めるのは難しく、体力も魔力も付きかけているようだ。


 小春が他所のスロット台を見ている間にリュシアンとシルヴィは宙に浮き、リュシアンが左端のリールボタンに氷魔法を放つ。しかし停止した図柄がコウモリではなかったため真ん中と右を適当に打ち流し、再度左から順番に狙いを定め攻撃魔法を放った。

 小春はというとまだ地面に突っ立て居り、そわそわと辺りを見回している。それもそのはずだ。彼女は宙に浮けるほどの風魔法を習得できていない。そのため他の台を見たり、たまにリュシアンとシルヴィの応援をして時間を潰している。彼女なりに頑張って蔦を生やしリールボタンを狙ってみたりはしていたのだが、周りの五月蠅さに集中できず制御できなかったため諦めた。

 目押しが得意と豪語していた世話師猫はというと、挑戦者登録時に姿を暗ましていたため音声認証システムに登録されておらず、得意げに魔法で攻撃し図柄を止めたにも関わらず除外扱いされたため拗ねている。



「上ばっかり見てると首が疲れるね文二」

「にゃ」

「あ!そうだ!文二が攻撃できなくてもリュカさんとシルヴィさんに合図を送るのはセーフなんじゃない?」

「面倒にゃ」

「えー機嫌直してよ。あとやる気出して」

「コハルが魔法を使うなら教えるにゃ」

「私の魔法の威力でリール止まるかな」

「ぅにゃ~。可能性は限りなく低いにゃ」

「やっぱり」



 珍しく会話に参加してこないカーバンクルはコハルの服の中に隠れている。ここ、ヴァンパイアの国(ベガスドキュール帝国)は観光地でもあるため観光客が多く、大福は人酔いしてしまったのだ。彼が小春の服の中に隠れる際、リュシアンは『狡くないか?』と呟き、それが聞こえていた小春は『リュカさんの基準が分からん』と心の中で呟いた。


 時間は刻々と過ぎていき、ゲーム開始から3時間が経としている。地上でお喋りをしている小春と世話師猫、そして上空で攻撃魔法を連続で撃っているリュシアンとシルヴィに疲れは見えない。小春はむしろ始めて見る天使族の攻撃魔法を楽しそうに眺めている。

 天使族(彼ら)が得意とする魔法は翼から放たれるハートの形をした愛の鞭(ラブリーアタック)と、頭上に浮かんでいる光輪を投げ打撃を与える聖なる錠(ホーリーリング)がある。名前は可愛らしいが威力は絶大だ。


 数時間後、世話師猫の助けもないままリュシアンが左と真ん中のリールにコウモリ図柄を停止させ、シルヴィが右リールにコウモリ図柄を停止させる事に成功した。



『Congratulations!楽シンデ行キナ!』

「ふぅ、目が疲れた」

「2つも図柄を止めて頂きありがとうございます」

「お疲れ様です。リュカさん、シルヴィさん」

「ただいま。あとで私の目を癒しておくれコハル」

「はい、分かりました!」



 小春は元気よく返事をしているがリュシアンの意図は分かっていない。そのため彼が眠る時に暖かいタオルでも瞼の上に置いてあげようかな等と考えている。


 パネルが開き、いよいよリュシアン一行がヴァンパイアの国(ベガスドキュール帝国)へと入国する。一歩踏み入れると地面が金でできており、カジノ店や土産屋が所狭しと並んでいる。観光客も多く活気に満ち溢れ、リュシアン一行は此処でシルヴィと別れた。

 別れの挨拶をした後、小春がミルクティー卿をどうやって探すかリュシアンに尋ねる。



「その前に土産を買おうと思う」

「ミルクティー卿にですか?」

「いや、ウメユキにだ」

「何か頼まれてましたっけ」

「ああ。マツシマロンをな」

「まつしまろん?」



 マツシマロンとはヴァンパイアの国(ベガスドキュール帝国)を代表する土産だ。ラッキーラビットという動物を甘辛く煮詰めたパイ菓子の事である。この食べ物が有名になったきっかけはダイサンゲン・マツシマ・ロンという冒険者がそれを食べ、一晩で大金持ちになった事から始まる。


 彼はある日負けが続き、これ以上負けると帝国で無賃労働させられる所まできていた。それをどうにか回避しようとラッキーラビットを捕まえパイにして食べた所、一日中勝ちが続き借金も返し終え一晩で億万長者になった。それにあやかろうと人々はパイを買い求め、帝国は利益を求めて飲食店や土産物として売り始めた。その際に商品名として”マツシマロン”と名付けた。

 実際にラッキーな事が起こるかといえばそんな事はない。ダイサンゲン・マツシマ・ロンがその日勝ち続けられたのは妖精の気まぐれによるものだ。


 リュシアンからマツシマロンの話を聞き終えた小春はそれに興味を持ち、邸の皆に買って帰ろうと提案した。しかしそれをリュシアンが却下する。



「もしかして皆食べ飽きてるとかですか?」

「そうではないよ。土産にするならこの国にしか居ない希少種のサドンデスベアの酢漬けの方が龍族(私達)にとっては嬉しい。あれは中々手に入らないからね」

「へぇ。お菓子ですか?」

「お菓子というよりかはつまみかな」

「私も食べてみたいです」

「コハルはヒト族の体の作りに近いから止めておいた方が良い」

「いつかのお刺身みたいにサドンデスなんちゃらにも毒が!?」

「毒は無いよ。だが刺激が強すぎてヒト族でも吐血する」

「止めときます」

「賢明な判断だ」




毎月最低でも1話は更新するとか言っておきながら7月になってしまった(;´Д`)

また読んでくださると嬉しいです。

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