表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
助けた人は龍で、騎士で、美形貴族  作者: たかむら
第四章 戻ってきました、龍の国
106/125

貴方はだあれ



 朝食を摂り終えた私達は再び地底遺跡の中を探索している。

 歩いても歩いても何にも出会わない。それに朽ちたオートマタはあれど人骨はない。それほど、この国のオートマタ化が進んでいたのだろう。


 

「宝箱すら見つかりませんね」


「宝箱?この国は滅ぶ前、財政難だった。だから財宝といった類の物は無いよ」


「そうじゃなくてダンジョンといえばの宝箱ですよ」


「コハルちゃん此処はダンジョンじゃないよ?地底遺跡だよ?」


「もしかして、ダンジョンと遺跡って違うんですか?」


「そうだ。ダンジョンには魔獣や魔物が住み着いている。だが遺跡はそうではない」


「でもサンドスコーピオンとキングスライムいましたよね?」


「あれはこの国を守護する契約を結んでいた動物だ」


「ん~。私には見分けが難しいです」




 話をしながらも足は止めず、何か手掛かりはないかと部屋という部屋、全ての中を探す。

 今は『王の間』と書かれてある大きな部屋でヴェルゴナさんとリュカさんが本棚を調べている。私は文二と大福と一緒に壁に書かれてある文字を見つけた。

 これは古代文字でも貴族文字でも平民が使う文字でもない。文二も解読できないようで頭を(かし)げている。



「オートマタさん、これ読めますか?」


「コレハ、文字デハ有リマセン」


「文字じゃない?」


「ハイ。起動回路デス」


「起動回路?」


「分かったにゃ!この記号自体が魔動機を動かすプログラムになっておる!ここをこうすれば~。にゃんニャにゃん」



 文二が鼻歌交じりに壁に書かれてある記号を肉球でちょいちょいっと消す。すると部屋の壁がゴゴゴゴッと音を立てて動き始めた。



「うわぁああ!?」

「何事だ!?」

「壁が動いてる!?」



 本を読んでいたリュカさんとヴェルゴナさんも驚き、二人とも一瞬にして私の目の前に現れた。

 きっと私を守ろうとして背に隠してくれたんだろうけど、如何せん二人の背が高すぎて前が見えない。見えなさすぎて怖い。あと、この向こうに何があるのか気になる。

 という事で私は二人の背から横にずれた。中には岩でできた隠し部屋があり、沢山の魔動機と一つの扉がある。扉は何処かに通じている訳ではなく、ただただ閉まった状態でポツンと建っている。


 


 きたか…


 まっていた…


 さぁ、おいで…




 声が聞こえる。

 何処からだろう。


 声を頼りに中へ入ろうと一歩踏み出すと、リュカさんにグイッと腕を引っ張られた。



「待てコハル。何処へ行く」

「声が聞こえます。きっとこの近くに誰かいますよ」

「この近くに?んー?誰も探知できないけど?」

「ヴェルゴナもか。私の探知魔法にも引っかからない」

「んにゃ?」

『僕も聞こえないよ?』

「え?」



 リュカさんにも、ヴェルゴナさんにも、文二にも、大福にも、この場に居る私以外の誰にもこの声が聞こえていない。

 そんな馬鹿な。私にだけ聞こえる声?

 それってもしかして、幽霊…?

 無理無理無理無理。そういう怖いのだけは本当に無理。勘弁してください。



 まっていた…


 このときを…


 さぁ、はやく…


 こちらへ…


 おわりにしよう…


 


 ほら、まただ。

 何だか苦しそうな、悲しそうな、そんな声。

 誰かに助けを求めてるいような、そんな声が聞こえる。




 はやく…


 じかんがない…




 しかもなんか急かしてきている。




「ほらまたっ」

「その声は何と言っている?」

「早く来いって言ってます」

「罠かな」

「否定できないな。だが魔力は感じられない」

「どうするリュシアン君。行ってみる?」

「…」




 リュカさんは隠し部屋の中を軽く見渡し、私に再度その声が聞こえてくるか尋ねた。




「はい。まだ聞こえます」

「そうか、仕方ない。入ろう」

「そう来なくっちゃね!声がどの辺りから聞こえてくるか分かるかい?コハルちゃん」

「あの扉の奥からです」




 私が扉を指さすとヴェルゴナさんは目を細め、リュカさんは扉の上を見て「面倒事になりそうだな」と呟いた。




***



 隠し部屋の中に入り、扉の近くまで行く。

 それは意外と大きく、扉と言うよりも門に近い形状をしている。しかも上壁には三つの彫り物がある。これは魔法学で習ったゴーレムという自分の意思で動く泥人形だ。

 泥人形といっても泥だけで出来ている訳ではなく、物によって金属だったり岩だったりする。本物のゴーレムは初めて見る。なので近くに行ってもっとよく見ようとしたら、リュカさんにまた腕を捕まえられた。



「待て」

「どうしたんですか?」

「これ以上近づくとゴーレムが目覚める」

「まさかこんな所に転移門があったとはね」



 そう言ってヴェルゴナさんが(くう)を切る様に左から右へと手を動かす。すると魔力の残糸が私にも見えるようになった。

 その残糸は転移門付近で不自然に途切れている。




「ほら、微かにだけど魔力痕が残ってる。それにしても雑な消し方だね。この消し方は魔族や森の民ではないね」

「この位置からでも調べられそうか?」

「いや、流石にもう少し近づかないと無理だね」

「そうか。ではこの三体のゴーレムと一戦やり合う必要があるな」

「そうみたいだね。道理で絶妙な所に配置されている訳だよ」




 二人は壁に埋め込まれているゴーレムを見て戦闘態勢に入る。

 ヴェルゴナさんは何処からともなく魔法の杖を出し、リュカさんは珍しく指先から腕までを龍体化させた。


 ヴェルゴナさんの杖が、杖が!

 すっごくカッコイイ。すっごく異世界を感じる。


 魔法の杖とえいば木で出来た30cmくらいの棒をイメージしていたけど、実際に魔族のヴェルゴナさんが持っているのはそんな小さな物じゃなく、金属で出来た重厚感のある杖だ。しかも先端には魔石が埋め込まれてある。月が象られた装飾の多い豪華絢爛な杖だ。


 


「私も戦います!」

「駄目だ」

「即答ですか!?」

「リュシアン君の言う通りだよコハルちゃん。このゴーレムは普通のゴーレムとは違う嫌な気配を感じる。何だろうね、この気配」

「ヒト族が稀に使用する科学技術ではないか?」

「ああ、あれか。厄介だね」

「魔法の無効化か、若しくは種族別固有術の無効化か」

「うーん、魔族()の苦手なタイプだ」

「相変らず謙虚な物言いだな。此処から見る限りアレは旧式のゴーレムだ。いつも通りの闘い方をすれば問題ないだろう」

「ふふっ、そうだね」




 見ただけで此処まで分かるの凄い。

 自分の語彙力が空の彼方へ吹っ飛んでしまうほどリュカさんとヴェルゴナさんの状況判断力というか、相手を見極める力というか、なんかもう色々と凄い。


 私は二人の会話を口をポカンと開きながら『そうなんだー。へぇ~』と心の中で相槌を打った。

 せっかく魔法を扱えるようになったのにとか、たまには魔法使ってみたいなとか思ったけど、二人が危ないと言うんだから大人しく引き下がった方が良い。うん。そうに決まってる。

 だから私と文二、大福、オートマタは出来るだけ二人から離れて自分達に防御魔法を張った。


 私達が離れたのを確認した後、リュカさんが一歩前に足を踏み出す。すると一気に空気が張り詰め、壁に埋め込まれてある三体のゴーレムが目覚めた。

 ゴーレム達は重力に従って垂直にドシン!ドシン!ドシン!と落ちて来る。そのせいで天井からパラパラと砂利が落ちて来た。



『侵入者ヲ確認』

『戦闘モード起動』

『排除スル』



 巨大なゴーレムが私達を敵認定し、幾つもの魔法陣を展開する。



「リュシアン君との共闘は久しぶりだね。ワクワクするよ」

「腕は鈍っていないだろうな」

「安心して良いよ。むしろ今の方が精度は上がってるから」

「それは良かった」




 二人とも(くう)に浮かび上がり、一気に激しい戦いが始まった。

 遺跡内は激しく揺れ、ゴーレム達が放つ攻撃をヴェルゴナさんが軽くいなす。そしてリュカさんが隙を突いて氷結魔法を撃つ。



「凄い」

「魔族の子も龍の子もやりおる。二人とも弾かれた魔法を相殺しつつ被害が最小限に納まるようにしておるにゃ」

「そうなの?」

「うむ。(おの)が放った魔法の衝撃で遺跡が潰れてしまっては困るからにゃ」

「なるほど」



 二人は三体のゴーレム達に攻撃魔法を食らわせながらも壁一面を補強しながら戦っている。しかも当たり損ねた魔法は途中で形態を変え、壁が崩れそうになっている場所を氷や土魔法で覆っている。

 なんてレベルの高い戦い方なんだろう。横で文二が解説してくれなきゃ気が付く事もできなかった。


 三体のゴーレムも連携して火、水、土属性魔法を放ってくる。

 一所懸命にその様子を見ていると、一体のゴーレムがリュカさんのアイスブレスに捕まり足が凍った。しかしゴーレムは即座に自分の足を砕き、自己再生を始める。



「させるかッ!」



 他のゴーレムと闘っていたヴェルゴナさんがそれに気づき、既に放っていたファイヤーボールの軌道を変えゴーレムの足に命中させる。そしてドゴォオオン!と激しい音を立ててゴーレムの足は砕け散った。



「凄い!やった!」

「まだにゃ」




 目を凝らしてみると文二の言う通り、粉々に砕け散ったはずのゴーレムが空中でまた再生し始めていた。

 



「チッ。自己再生プログラムが施されたゴーレムか」

「ヴェルゴナ、核は見えたか?」

「いや。でもこのゴーレムは三体同時に倒さなくても良さそうだよ。それぞれに核があるみたいだ」

「そうか。では一人一体がノルマだな」

「そうだね。最後の一体は早い者勝ちって事で」

「ああ、分かった」




 ヴェルゴナさんは宙で体勢を変え、幾つも魔法を展開しながら勢いよくゴーレムの背中目掛けて杖を振り下ろす。ゴーレムはいくつかの魔法を無効化しつつも間に合わなかった物は食らっている。

 ゴーレムから感じる嫌な気配とは、科学技術で施された魔法の無効化の事らしい。文二が途中途中で『あれにゃ、これにゃ』と前足で指して教えてくれる。



「今のもである」

「え?どれ?見えなかった」

「ほらアレにゃ」

「わあ、本当だ!」



 リュカさんが放った魔法がゴーレムに当たる前に消えてた。

 でも全部を無効化出来る訳じゃないみたい。それは二人が魔法を構築するスピードと放つスピードが速いからだ。


 凄い。凄すぎる。二人とも物理攻撃と魔法攻撃の多重攻撃を難なく繰り出している。リュカさんは強いって知ってたけど、ヴェルゴナさんも相当強い。流石魔族だ。魔法の発動スピードが速すぎて全然目で追えない。それに五大元素魔法すべてを同時に発動している。魔族は魔法に長けている種族だよって教えてもらったけど、実際目にしてみると凄すぎて言葉にできない。


 ヴェルゴナさんは接近戦も得意なようで、ゴーレムの間合いに入り拳や杖で物理攻撃もしている。しかもその際に追撃でかなり濃度の高い攻撃魔法も撃っている。流石、元近衛騎士零番隊隊長だ。意外と荒々しい豪快な闘い方にもビックリだ。

 対してリュカさんは相変わらず美しくアイスブレスといった氷属性魔法でゴーレムを凍らせたり、龍体化させた手や尻尾を使って戦っている。尻尾はゴーレムを地面に叩き落としたり、飛んでくる瓦礫を払いのけている。何でいつもの派手な攻撃魔法を使はないんだろう。あ、遺跡を潰しかねないからか。


 二人の攻撃はゴーレムにほぼ正確に命中しており無駄がない。だけど相手も再生スピード上げ、最初よりも手強くなっている。わずかに逸れた攻撃は防壁として作った氷の壁を貫き、亀裂が入ったその裂け目から遺跡が徐々に崩れ始めている。




「リュシアン君!僕たちの魔法じゃ威力が大きすぎる!このままでは遺跡(ここ)を壊しかねない!」

「ゴーレムの破壊は止めだ。動きを封じ込む!」

「オーケー!全く面倒な奴らだね、ヒト相手なら精神魔法で一発なのに」

「同感だ」




 ゴーレムも攻撃魔法をバンバン撃っているのに二人は会話をしながら余裕で躱している。

 昔もこんな感じで一緒に任務にあたっていたのかな。私の方にたまに飛んでくる岩や攻撃魔法は文二が撃ち落としてくれている。ありがとうございます。大福は本調子じゃないので体力温存中だ。


 リュカさんとヴェルゴナさんは攻撃魔法を撃つのを止め、三体のゴーレムに魔法で出来た鎖を巻き付け縛り上げた。しかし相手も怪力なようで鎖を力技で千切ってきた。

 あの強い二人の魔法を解くくらいだからゴーレムは相当な馬鹿力なんだろう。



 私も何か役に立ちたい。

 破壊しなくても良いのなら、何か役に立てるはず。出来る事はあるはず。未だに『はやくこい』と声も聞こえてくるし、どうしよう、どうしたら良いんだろう。私に何か出来る事、何か、何か私にでも出来そうな事。

 想像するんだ。ゴーレムの動きを止めれそうな、何か、何か…。私が見て来た世界、何でも良い。相手の動きを制御できそうな物。


 魔法はイメージ。

 イマジネーションの世界。

 心を持たない無機物のゴーレムを大人しくさせるイメージ。イメ~ジ~。んん~。ん~ん~。


 


 あ!!!


  


「私、できるかも!」

「にゃ?」

「キュ?」



 私の声は戦っている二人には届かず、文二と大福が答える。オートマタは我関せずとしている。

 今から使う魔法は船旅の時に初めて使った魔法だ。

 手のひらに文二から貰った木の実を置き、魔力を集中させる。そしてある生物を強くイメージする。

 私が得意なのは土魔法と古の御業。他に使えるのはそよ風を吹かせるくらいの風魔法。そんな私でも此処を突破できるくらいの魔法は生み出せる。



「出でよ!つたぁああ!」



 魔法構築を無視したイメージだけの蔦で、テヤンデイレッグを手のひらから生成する。それは土魔法と私に祝福してくれた若草色の精霊の力を掛け合わせたものだ。あとちょっぴり古の御業で生成を加速させている。

 蔦で出来たテヤンデイレッグは地面に根を下ろし、にょきにょきと手足を増やしていく。そしてゴーレムに絡み付きギチギチと締め上げた。



「コハル!?」

「ワォオ!これってテヤンデイレッグかい!?久々に見るよ」



 テヤンデイレッグはリュカさんと船旅をした時に遭遇した動物だ。

 この生物はヌルヌルしていて捕まりにくく相手を絞め殺すのが得意。船旅中はよく冒険者の人達が捕まってデッキから放り投げられていた。

 それを思い出しながら蔦で動きを再現する。魔法はイメージ!イマジネーションの世界!


 私にとってテヤンデイレッグは見慣れない生物。だけど強烈にインパクトに残っている生物でもある。実際に戦ったりもしたから再現もしやすい。別にゴーレムを倒さなくても良いんなら、相手を倒すイメージが全く出来ない私にでも役に立てる。


 動きを封じるだけ、それだけに集中する。

 動きを封じ込めるならもっと細かく縛り上げた方が良いはず。根を、根を張るんだ。ゴーレムの体全体に、アスファルトをぶち破って成長する草花のように、もっともっと。体の接合部分、手指の間に!

 イメージをより濃く深く想像すると蔦の周りに蔓も生え始め、その蔓がゴーレムの隙間に入り動きを鈍らせた。


 もっと、もっとだ。

 イメージをより細かく、繊細に。あの不味くてヌルヌルしたテヤンデイレッグを思い出してもっと締め上げるんだ。


 私の額からは汗が流れ、息が荒くなる。

 たった三体のゴーレムの動きを封じるだけなのに、こんなにも疲れる。さっきまでバンバン魔法を撃っていたリュカさんとヴェルゴナさんは汗の一つも掻いていない。本当に凄い。凄すぎで最早よく分からない存在だ。


 古の御業を使い、蔦から、蔓から、続々と新しい命を芽吹かせる。

 終いにはゴーレムの体中から華が咲き誇り、三体のゴーレムが遂に動かなくなった。



「やった!やったー!!」

「凄い魔法だね。土魔法だけで此処まで出来るとは。本来なら火と水属性魔法の併用をしなきゃならないのに、此処まで急成長させれたのはそれほど特訓を積んできたからかな?それとも教えてくれたのがリュシアン君だったからとか?」

「え、えっと」



 ヴェルゴナさんは私が古の御業を使える事を知らない。

 古の御業は命を与える事ができ、傷を癒せる聖魔法の上位魔法と考えられている。神獣のテオからは魔法ではなく神が与えた<祝福(ギフト)>だと言われたけど…。


 ヴェルゴナさんからの質問に困り、返答にまごついていると蔦が暴れ出した。

 あ、これは良くない。

 そう思った時には遅く、三体のゴーレムは私の魔法を撃ち破りまた戦闘態勢に戻っていた。

 


「やっぱり…」

「コハルの悪い癖だよ。最後まで気を抜くな」

「すみません」

「でも突破口を導きだせたのは凄いね」



 結局ヴェルゴナさんが先ほどの魔法を再現し、リュカさんが上から氷魔法で凍らせた。

 私が活躍できる日は来るのだろうか。


 ゴーレムの動きを封じた後はヴェルゴナさんが転移門の使用履歴を鑑定魔法で調べ、ヒト族の国と判明した。国名までは流石に分からないそうだ。でもおおよそ場所は特定できたと言っている。


 そして、いよいよ声の主に会いに行く。

 転移門の奥には大きな魔動機が有り、私は声が指示する通り幾つかのボタンを押した。するとホログラムで出来た人が何もない空間に現れた。

 んんん?会った事もないはずなのに何処かで見た事のあるような顔だ。何処だろう。つい最近会ったような、そんな気がする。




「貴方は、誰ですか?」


『余はこの国の王。カタクリ王国の最期の王である』


「貴様が対龍族用兵器を作らせたのか」


『如何にも』


「何故」


『リザードマンに脅されたのだ』


「でも転移門を最後に使用したのはヒト族だったよ。リザードマンの魔力痕は無かった」


『リザードマンは余と同様、コマの一部だ。黒幕は他に居る。それがヒト族だ』


「何故そう言い切れる」


『リザードマンらが会話しているの盗み聞きしたからだ。余の自慢のオートマタでな』


「じゃあ、私にしか貴方の声が聞こえなかったのは何故ですか?」


『おお、それはだな、余の声は心の清らかな者にしか聞こえぬよう、この施設全体にプログラムを施しておいたからだ。本来はこのプログラムを使って国を良くしたかったのだ。だが私は愚かにも国民をオートマタ化し、己の手で制御しようとした。あの頃の余は、もう誰も信じられなくなっておったのだ」



 この国の歴史は探索中にリュカさんから教えてもらっている。

 カタクリ王国は暗黒時代の終わりに滅んだヒト族の小国で、脱国して生き延びたヒト達がアングルナージュを建国した。その国には以前立ち寄った事がある。


 この世界には魔物がいて、それが国王の心の隙に入り込み取り憑いた。これがカタクリ王国の崩壊の始まり。でも、魔物が大きな原因だとしても、人助けで錬金術を使って義足や義手を国民に施していたのに、徐々に感謝される事も無くなり不平不満ばかりを耳にしていたら、誰だって心が病んでしまうと思う。

  

 


『余が犯してしまった過ち、罪、それを認識した時にはもう後戻りできない所まできておった。そんな時にリザードマンらが来たのだ。あ奴らは余に取り憑いておった魔物を聖魔法で祓った後、この国を滅ぼされたくなくば龍族の力を削ぐ武器を作れと脅して来た』


「リザードマンに聖魔法は使えないはずだよ。その場には他にも誰か別種族の者が居たんじゃないかな」


『覚えておらぬ』


「そうか。話の続きを」


『余は脱国者がおる事は知っておった。魔物が取り除かれ目が覚めた余は、せめてその者達だけでも守ろうとリザードマンの要求を受けたのだ』


「どうして要求を受ける事が脱国したヒト達を助ける事に繋がるんですか?」


『ヒト族の中で対龍族用兵器を作る技術を持っておるのは余の国だけであると自負しておる。余が拒めばあ奴らは逃げた民にそれを作れと脅すだろう。そんな事、容易に想像できる。ああ、なんと悍ましい』




 リザードマンたちがこの国に対龍族用兵器を依頼したのは、この国のヒト族が魔法ではない高度な技術を持っていると知っていたからだそうだ。

 他にもいくつか質問をしたけど、今喋っている王様はホログラムなので前もって準備していないものには答えようがなく、『さぁ、分からぬな。未来に幸あれ』というのみだった。





うぉおお!仕様が新しくなってる!下書きが残ってて良かったです。

いつもイイネとブクマありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ