2ー2 Fランク冒険者、勇者に苛立ちを覚える
「――『弱体化』の魔法をかけられていて、今はまともな魔法を使えないの」
リンネさんは困ったような顔をして言った。
(……何で、困ったような顔をするんですか! リンネさんは仲間に裏切られたんですよ……)
俺はどうにかなりそうだった。
リンネさんが仲間を危険に晒したり、何かへまをやらかしたわけではない。ただ、『補助魔法』しか取り柄のないリンネさんは役立たずで、必要ない。
その理由だけで、リンネさんを追放したのが、勇者率いる勇者パーティーだという話を聞いたばかりだ。
それだけでも、腹が立つのに。
(『弱体魔法』だって? 仲間にすることじゃ、ないだろうが!)
俺は強く手を握りしめた。
「アーク、怒ってるの?」
「怒ってますよ。リンネさんのことも、勇者が仲間に酷い仕打ちをするクソ野郎だと知らずに、目標としていた自分にも、腹が立ってます……」
「でもね、アーク。勇者――アランが言ってることも正しかったのよ。私は『補助魔法』しか、まともに使えないから……」
リンネさんは、寂しそうな顔を浮かべる。
そんな顔をするぐらいなら、
「何で認めてしまうんですか! 違うって、言えばいいじゃないですか! あなたは俺の目標なんです! こんなところで、諦めていいわけがないんです! あなたがここで諦めてしまうのなら――」
俺は冒険者を辞めてやる。その覚悟がある。
(だが、どうせ辞めるなら、勇者に一撃入れてからだ)
「あ、アーク? あなた、何をするつもりなの?」
「リンネさん、勇者はどこですか?」
「アランなら、まだ【冒険者の街】にいると思うけど……」
駆け出し冒険者が多い【冒険者の街】に勇者パーティーが来ている? Sランク集団が来るような場所ではないが、未発見のダンジョンでも見つけたか?
少し気になるが、『迷いの森』から一番近い街だ。
すぐに会うことができるだろう。
「行きましょう、リンネさん。【冒険者の街】に」
「あまり気は乗らないけど……わかったわ」
「大丈夫ですよ。少し、ほんの少〜し、勇者に胸を借りるだけですから」
心配そうな視線を向けてくるリンネさんに、何の問題もないことを伝えた。
「あ、その前にその服何とかしないとですね」
「……最低。アークって、デリカシーがないのね」
(やめて! そんな軽蔑みたいな目を向けないで! 新しい扉が開いちゃう!)
「また、変なこと考えてるわ」
そんなことない……よ?
別にその薄い服の下に、主張が控えめな胸があるなんて、別に? 考えてないし? あわよくば、拝めるかなとも、思ってないよ?
「何も考えてない証拠に、俺が服を買ってあげます!」
「……そ、ありがとう。身ぐるみ剥がされちゃって、無一文だったのよ」
あはは、俺も無一文になるから、仲良しだね?
俺たちは『迷いの森』を抜け、【冒険者の街】に向かった。
お読みいただきありがとうございます!
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!
していただけたら、作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません!
ぜひよろしくお願いします!