1ー1 Fランク冒険者、追放されたSランク冒険者と出会う
記念すべき、一作目はヒロインがパーティーから追放されるという少し新しい追放モノです。
よろしくお願いします。
「はぁ……冒険者、辞めようかな」
――冒険者。危険を顧みず、冒険を成す者。
彼らの仕事は魔物の討伐、魔物が蔓延るダンジョンの攻略。その他に、護衛任務といったものもある。
俺――アーク・ガードナーは、一年間冒険者をやってきたというのに、未だに魔物を倒したことがない。
ダンジョンはもってのほかだ。入った瞬間に、魔物に喰い殺されるのがオチとして見えている。
……俺には、才能が無かった。残念ながらな。
「でも、辞めたら、どうやって食べていこう……」
今の俺は、薬草採取や角ウサギなどの動物を狩って、その日暮らしの生活を送っている。
生活の基盤など整っているはずもなく、冒険者を辞めると、生きることもままならない。
今日も、『迷いの森』に日銭稼ぎに来ていた。
そんな俺が、今になって定職につけるわけがない。
人生詰みの一歩手前である。
「せめて、強力な仲間さえいればなぁ……」
俺の無力をカバーしてくれる仲間がほしい。
だが、一年も冒険者をやって、ずっとFランク止まりの俺を、パーティーに誘ってくれる人はいない。
なりたての頃は、同期の冒険者とパーティーを組んでいたが、弱過ぎてパーティーから追い出された。
その同期の冒険者は、今、Dランクらしい。
俺と違って、出世したものだ。
「もう、帰ろうか……」
気分が落ち込み過ぎて、何もする気が起きない。
今日は早めに切り上げて、森の中をとぼとぼ歩く。
だが、周りの警戒は怠らない。
弱い俺が生き残るには、魔物に見つからないようにするしかない。
「……? この反応、人間か?」
スキル『魔力感知』に反応があった。
使い手が未熟だから範囲は狭いが、半径五メートル以内に、多分……人間がいる。
俺は『隠密』スキルを使って、近づく。
本当に人間であればいいが、魔物である可能性も捨てきれなかった。多少の魔力の違いはわかるが、正確ではないのだ。
姿を確認できるところまで近づいた。
(あ……人間だ。奴隷の少女かな?)
安全を確認し、スキルを解除する。
少女は顔を上げて、俺の方を見てきた。
白髪に紅眼の少女か。可愛いな。
着ているのが薄汚れた麻の服だから、奴隷かと思ったが、どうやら違うようだ。
奴隷にしては、小綺麗すぎるのだ。
「……誰?」
声をかける前に、話しかけられてしまった。
俺は警戒されないように、気さくな人を演じる。
「こんにちは、俺の名前はアーク。君は?」
「……リンネ」
「リンネか。リンネはここで何をしてるの?」
「わからない。ただ、気づいたらここにいた」
何か嫌なことでもあったのだろう。
俺は暗い顔をしているリンネの目線に合わせる。
他人である俺がとやかく言う資格は無いが、せっかく出会えたのだ。
話を聞いてみるだけはしてみよう。
「何があったの?」
「信じてた人に裏切られた。私は必要無いって……」
「うんうん、それで?」
リンネは自分の身に起きた出来事を話してくれた。
その中で、無視できない衝撃事実が発覚した。
彼女――リンネ・クレールは、勇者パーティーのSランク冒険者、『白の大賢者』だった。
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